「どんぶり勘定」は経営のセンサーだった 〜現場の感覚と数字が手を組むとき、経営はしなやかになる(家族経営の経理コーチング⑭)

平岡誠司

平岡誠司

テーマ:経営のモヤモヤをワクワクに(おかね編)

「どんぶり勘定」は本当にダメなのか?

「どんぶり勘定」と聞いて、眉をひそめる人は少なくないです。数字に弱い、管理が甘い、そんな印象がつきまとう。でも、現場で経営者と向き合ってきた私の実感は少し違うものです。

どんぶり勘定とは、実は“感覚の知恵”です。売上の手触り、仕入れの重み、現金の減り方——それらを肌で感じているからこそ、帳簿がなくても経営が回っていたんですね。数字に頼らずとも、現場の空気を読む力があったのです。

感覚だけでは乗り切れない時代へ


ただし、それは「感覚だけで走れる時代」の話です。取引が複雑になり、資金繰りがシビアになると、感覚だけでは限界がきます。売上の波が読めない、支出のタイミングがずれる、キャッシュが足りない——そんなとき、感覚は頼りにならなくなるのです。

そこで登場するのが、freeeのようなクラウド会計です。数字を“見える化”することで、感覚を補強し、経営のセンサーとして再起動させます。感覚と数字が手を組めば、経営はもっとしなやかになるものです。

「数字は苦手」でも、見える化で判断力が戻る


たとえば、ある家族経営の飲食店。ご主人は「数字は苦手」と言いながらも、毎日の売上と仕入れを頭の中で把握していました。ところが、コロナ禍で売上が激減し、感覚が狂い始めた。仕入れのタイミングがズレ、現金が足りなくなる日が増えてきたのです。

そこで導入したのがfreeeの残高推移と日繰り表。毎日の現金の動きを見える化することで、「あ、今月は仕入れを抑えないと危ない」と判断できるようになりました。数字が“もうひとつの目”となり、感覚が再び機能し始めたのです。

感覚と数字は対立しない——むしろ補い合う


数字は冷たいものではないのです。むしろ、感覚を裏付ける“もうひとつの目”。どんぶり勘定を否定するのではなく、それを数字で補強する。そうすれば、経営はもっとしなやかになります。

感覚は現場の声を拾い、数字はその声を整理する。両者が補い合えば、経営判断はより確かになる。freeeのようなツールは、感覚を否定するためのものではなく、感覚を活かすための“翻訳機”なのです。

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平岡誠司
専門家

平岡誠司(小規模事業者向け経営支援家)

株式会社平岡商店

経営者の実践経験を活かし、経理の見える化・日繰り・在庫管理を軸に、家族経営の経営管理の仕組みづくりを実行支援します。現場の気づきを経営判断につなげ、“らしさ”をいかした経営を一緒に育てていきます。

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