「どんぶり勘定」は経営のセンサーだった 〜現場の感覚と数字が手を組むとき、経営はしなやかになる(家族経営の経理コーチング⑭)
会社を売りたい
ある小さな福祉事業の女性経営者から「会社を売りたい」との相談が届きました。創業者であり、母でもある彼女は、初回のオンライン面談で涙を流しました。「もう限界です。辞めたい。でも、辞めたら家族のお金が無駄になる。どうしていいか分からない」と。
創業から数年。銀行借入はなく、自己資金を多く投じてきたものの、資金繰りは綱渡り。毎月赤字が続き、家族への影響も深刻でした。子どもは不登校気味になり、経営者自身も眠れない日々を送っていたのです。
会計freeeで発見した再生の道
会計freeeのデータをもとに、まずは事業の状態を静かに見つめ直すところから始めました。記帳ミスやデータのズレは確かに多く、経理の仕組みも未整備でしたが、それでも「これは立て直せるかもしれない」と感じたのは、いくつかの希望の光が見えたからです。
ひとつは、資金面において、まだ少しだけ時間の余裕があること。現預金は底をつきかけていましたが、日々の資金の流れを丁寧に整えれば、持ち直す可能性がありました。
もうひとつは、取引先の安定性。売上の多くを占める契約先は、信頼できる企業で、入金の遅れも少なく、月々の回収がきちんと行われていました。これは小さな事業にとって、何よりの安心材料です。
さらに、事業の規模が適度であったことも大きな要因でした。人員配置やサービス提供の仕組みが複雑すぎず、原価のコントロールが可能な範囲に収まっていたため、改善の余地が十分にありました。
本当は売りたくない
そして何より、経営者の心の奥に「本当は売りたくない」「なんとか続けたい」という強い思いがあったこと。涙の中ににじんでいたのは、諦めではなく、迷いと葛藤でした。その気持ちがある限り、再生の可能性は消えていないと感じたのです。様々な人生経験の中で選んだ起業に対する思いは一途であり、その熱意は技術や知識不足を凌駕するものです。自身の事業再生の経験を重ねながら伴走支援する覚悟を決めました。
本気の伴走
そこから始まったのは、まさに“伴走”と呼ぶにふさわしい支援でした。会計、現場、シフト、請求、勤怠、日報、連絡帳——すべての情報を共有し、すべての一挙手一投足を綿密にすり合わせながら、次の一手を打つ。その繰り返しです。
「この数字の意味は何か」「この動きはどこに影響するか」「この声はどこから来ているか」——そんな問いを、何度も交わしました。時には深夜、時には早朝。経営者として一歩ずつ階段をあがり、前に進めるよう、手を添え続けました。何度でも立ち止まり、何度でもやり直しました。数字だけでなく、現場の空気、従業員の声、経営者の迷い——すべてを受け止めながら、少しずつ、確かな変化を積み重ねていったのです。
「もう無理」を「まだやれる」に
そして2年後の夏、支援は終了。再生の成果は、数字以上に意味のある変化をもたらしました。
- 資金繰りは安定し、現預金残高は大幅に増加
- 財務負担は軽減され、経営の見通しが明るくなった
- 売上は着実に伸び、赤字から黒字へと転換
- 経営改善のスピードは加速し、将来への不安が希望へと変わった
- 原価率は大きく改善し、利益率が向上
数字の裏には、葛藤と対話、そして汗があります。小さな教育事業の再生は、経営者自身の再生でもありました。誰かの「もう無理」を「まだやれる」に変える。その瞬間に立ち会えることが、私たちの仕事の意味だと、改めて感じさせられたのです。
諦める前に、、1人で悩まなくても大丈夫です
あなたの事業にも、見えづらい「希望の光」が潜んでいるかもしれません。
今、目の前の資金繰りや数字に追われていませんか?
「本当は続けたい」と思っているのに、誰にも言えずにいませんか?
経営のモヤモヤを、少しずつワクワクに変えていく——そんな一歩を、踏み出してみませんか。
「数字が苦手」「経理が不安」
——そんな方こそ、まずはお話ししませんか。
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