家具の見直しで安全な暮らし
人口減少、核家族化、まもなく迎える超高齢化社会、このような状況を乗り越えるには、
地域で支え合う互助共助の仕組みが必要です。
けれど、ひとり歩き(徘徊)の問題は、個人情報の問題が壁となり、
地域レベルでの解決が難しく、社会問題化しています。
「2025年 MCI(軽度認知障害)を含む認知症予測数=1300万人」
「2018年 認知症ひとり歩き(徘徊)行方不明届出数=1.7万件」といったデータが示すように、
認知症による徘徊は今後も増え続ける予測です。
今から約30年前、夫の両親が既に他界していたこともあって、
義理の祖父母との同居から私の結婚生活はスタートしました。
そして、4年を過ぎた頃、義理の祖父が
アルツハイマー型認知症を患い介護をすることになりました。
その頃は、世間一般の認知症に対する偏見や、
「認知症になったら終わり」といったような誤ったイメージから、
周囲に偏見を持たれると思い、
家族が認知症を患っていることを隠す傾向にありました。
辞書で「痴呆」を調べてみると言葉の意味として
「愚かなこと。愚かな人。」と書かれています。
その事から認知症を患った方が世の中から
偏見の目で見られていたことが想像できます。
偏見を払拭しようとする世間の動きのひとつとして、
2004年に「痴呆」から「認知症」に呼称が変わりました。
私の家族も例外ではなく、
義理の祖父の自尊心を傷つけないということもありましたが、
周囲の人に義理の祖父が認知症を患っていることを知られることは嫌だと、
周囲に気がつかれないよう、義理の祖父の行動も制限し、
なるべく家族以外の人と会わせないなどして隠そうとしました。
ある程度の身の回りの世話は、義理の祖母がしてくれてはいましたが、
当時は、今の様に地域包括支援センターなどという相談機関もなく、
ネットも普及しておらず、情報を得ることも難しい状況だったので、
3歳と生後6カ月の子育てをしながらの「頼れない介護」は、
心身共に負担の大きなものでした。
認知症の症状が進んで徘徊をするようになった義理の祖父を病院に連れて行き、
子供がぐずってあやしていると、横に座っていたはずの義理の祖父の姿がなく、
広い病院内や病院の周辺を2人の子供を連れて探しまわるということはよくある事でした。
それに加え、夜中の3時ごろになると、
義理の祖父が一番輝いていたであろう頃の制服を着て、
家から出てどこかに向かって無心に歩くということもよくあったので、
物音にも敏感になり、ぐっすり眠れないこともしばしばでした。
そんな自分がおかれている状況に苛立ち、感情をコントロールしにくくなり
義理の祖父や家族に冷たくあたったり、
時折、義理の祖父が「わしは、あかんようになった。」と
呟き肩を落として溜息をつく姿を目にして、
「おじいちゃんも、これまでの自分と今の自分との間で葛藤してるんやな。辛いんやな。」と
冷たい態度をとった自分を反省したりを繰り返す日々を過ごしました。
私が医師から義理の祖父が認知症であると告げられ、
それを家族に話すと、近い家族ほど、義理の祖父はなんともないのに
私が『認知症にしたがっている』と攻めたてられ家族関係が崩れてしまいました。
認知症に対する偏見は少なくなってきてはいますが、
この頃の私のように、認知症と向き合って介護をしようとしている人や
ご本人は辛い思いをするといったような事が、今もまだあるのも現状です。
また、技術が進歩して、携帯電話をほとんどの人が持つようになり、
一般の人でもGPS(グローバル・ポジショニング・システムの略で・全地球測位システム)というシステムで
位置情報取得することが出来るようになりました。
この機能のある携帯を持たせていれば、
認知症を患った方が徘徊したとしても、直ぐに探せるのではないか
と思われている方も多いです。私も最近までそう思っていました。
しかし、ある認知症を患っていらっしゃる方のご家族が、
散歩に行くと言って出たまま夜になっても帰ってこないので、
GPS機能のある携帯を頼りに居場所を探すも分からない、
携帯会社に電話をして探してもらうように頼んでも、
契約上のことで出来ないと言われたことがあったそうです。
その後、警察に捜索依頼を出しましたが、
時間の経過とともに心配は大きくなり、
個人情報を公開しSNSを使って捜索を依頼されました。
その時に、SNSで捜索に協力する人達が
そこに書かれたメッセージなどを読んで、
私は、どんなに技術が進んでも、やはり人の力は大きいと感じました。
このような経験から、たとえ認知症を患ったとしても、
どこかのCMであったように「それがどうした。」と周囲が理解を示し、
ご本人も、その家族も、その人らしい暮らしがおくれるよう、
地域で支え合う互助共助の仕組みが必要だと思ったのです。
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