帰省でチェック
『だんだんと動く事が億劫になってきて、
片付けるという気力もなくなってきたので、
あれもこれも、要らないモノは、
ドンドン捨てて、家の中をスッキリさせたい。』
という90代のご夫婦からのご依頼。
この年代の方にしたら、
『モノに対する執着がないのだなぁ。』
と、お話をうかがって、正直、驚きました。
『20年ほど前に一度住まいを小さくされたから?』
と思ってましたが、
作業当日になって仕分け作業が始まると、
『やっぱり、これは…。』
と処分することをやめるモノも。
特に衣装持ちの奥様の洋服は、
四帖半くらいのスペースにビッシリあったのですが、
処分したのは、ゴミ袋2つ分くらい。
背の低い奥様が、これまでの生活の中で、
あまり視野に入らなかった
高い位置に置いてあったモノは、
買って一度も袖を通してないものが多く、
仕分けした事で、その服の存在を思い出し、
勿体ないという事で、今回は処分しなかったのです。
実の親子で、この様な事をしていたら…
多くの子は親に
『捨てるって言ったじゃない!』
『たった、これだけ?』
『もっと捨てないとダメよ!』
『こんなじゃ、ちっとも、片付かない!』
と、強い口調で言いたくなるのでは?
時間ばかりが経過して、思うように片付かないと、
気持ちに余裕がなくなって、
ついついイライラしてして腹を立ててしまいがちですが、
でも、ちょっと、待って下さい。
あわてないあわてない。一休み一休み。
そもそも、生きてきた時代が違うのです。
豊かになった日本しか知らない自分の常識が、
戦争中や戦後の貧しい時代も知っている高齢者にとっては、
非常識であったりもするのです。
モノに対する価値観も違っているのです。
なので、親の為にと思って家の片付けをして、
高齢の親の思いを聞き入れず、
無理やりのようにモノを処分してしまうと、
高齢の親は、自分の意思でなく
処分されてしまったモノに対して、
これまでより執着してしまう事もあります。
それでは、住環境を整えたところで、
その後の暮らしの中で、
高齢者が、前向きな気持ちにはなれません。
高齢者にとって、『安心・安全』で、
『前向きな気持ち』になれる住環境に整えるには、
『段階を踏む』と言う事も大切です。
今回のご夫婦の場合、
今から夏までの春夏物の洋服は、
奥様の視野に入り、出し入れがし易い場所に
普段着、お出かけ着と分けて見える収納し、
夏の終わりごろに再点検。
また、それらの洋服を仕分けて減らす事にしました。
仕分ける作業の中で、
その服を買った頃の思い出話なども、
楽しくお喋りしながらしたことで
気持ちも幾分スッキリされたようです。
また、沢山あった洋服を綺麗に収納をしたら、
見た目も良く、動き易くなり、
もともと綺麗好きな奥様のスイッチが少し入ったようで、
『よく見えるようになったので、
友達が来て、欲しいって言ったら、
あげて、洋服を減らしていく。』とか、
『また、自分で見直してみて、
20着くらい要らないと思う服がでたら、電話します。
10着くらいじゃ来てもらうの悪いからね。』
と、帰り際におっしゃってました。
処分したモノの量的には多いとは言えませんが、
『これからの暮らしに必要なモノを
奥様自らが選び取っていって、家の中を整え直そう』
という気持ちになって下さった点が、今回の作業をした成果です。
親御さんが自立して暮らしてらっしゃるのなら、
時間はかかりますが、お気持ちに寄り添って、
『段階』を踏みながら片付け作業をなさって下さいね。
『あわてないあわてない。一休み一休み。』ですよ!