美容鍼はホントに効果あるの?ー改善ポイント教えますー
「重くつらい慢性腰痛…30代男性の“椎間板性腰痛”に鍼灸でできること」
――デスクワーク時代の腰痛に、東洋医学の視点から寄り添う――
30代〜50代の患者さんから増えているご相談のひとつに、「MRIでは大きな異常がないのに続く腰痛」があります。
椎間板ヘルニアのように神経を強く圧迫している所見がなくても、椎間板そのものが痛みの発生源になる“椎間板性腰痛”という状態があります。
今回は、当院に通院されている40代男性のケースを踏まえ、椎間板性腰痛とは何か、そして鍼灸治療がどのように役立つのかを分かりやすくお伝えします。
椎間板性腰痛とは?
椎間板性腰痛とは、椎間板そのものが痛みの発生源になる状態のことを指します。
「椎間板ヘルニアの一歩手前の状態」と表現されることもありますが、ヘルニアのように突出がなくても、椎間板に小さな損傷(裂け目)や水分量の低下が起きると痛みを感じることがあります。
椎間板が痛みを出す理由
椎間板は「髄核(ずいかく)」というゼリー状の部分を「線維輪(せんいりん)」という硬い繊維が包む構造をしています。
加齢や負担の蓄積により、
- 線維輪の小さな亀裂
- 髄核の水分が減少して弾力がなくなる
- 炎症物質が出る
こうした変化が起こると、椎間板内部の神経が刺激されて痛みが出ることがあります。
これが「椎間板性腰痛」と呼ばれる状態です。
特徴的な症状
椎間板性腰痛の患者さんに共通して見られるのは次のような症状です。
- 前屈みになると痛い
- 長時間の座位がつらい
- 朝起きた直後が一番痛い
- 腰の奥の重たさ・鈍い痛み
- 咳・くしゃみで腰に響く
特に「デスクワークで悪化する」という点が特徴で、椎間板に持続的な圧力が加わることが原因です。
レントゲンには写らない“見逃されやすい腰痛”
椎間板の変性そのものはレントゲンでは確認できません。MRIでわかることもありますが、軽度の場合は異常と判断されにくいため、
「異常なしと言われたのに痛い」
「湿布や痛み止めではよくならない」
という方が多く来院されます。
(40歳・男性 営業職)のケース
主訴:腰痛
病歴:これまでなんどもぎっくり腰を起こしています。仕事で重いものを持つたびに再発を繰り返しています。1か月前に軽いぎっくり腰を起こしなかなか楽にならないため整形外科を受診。MRI検査で椎間板(L4/5)にふくらみがあるものの、ヘルニアではないと診断されました。
現在は、
朝起きたときや立ち上がる時に腰が伸びにくい
仕事終わりの痛みが強い
右腰~背中のあたりに違和感がある
といった症状があります。
姿勢をみると、腰がやや左に傾く「代償性の側弯」がみられ、腰の筋肉が強くこわばっています
東洋医学ではどう考える?
東洋医学的には、
- 長時間の座り姿勢
- 運動不足
- ストレスによる気血の巡りの低下
- 腰部の冷え
これらが重なり、「腰椎まわりの深部の気血の滞り」をつくると考えます。
特に椎間板性腰痛では、腰の奥の筋・靭帯・椎間板の周囲に微細な炎症や緊張が起こりやすく、鍼灸でアプローチすべきポイントが明確です。
鍼灸治療でできること
最新の研究でも、鍼灸は椎間板性腰痛に対して
- 血流改善による痛み物質の除去
- 深部筋の緊張緩和
- 炎症反応の軽減
- 脳の“痛みの感じ方”を調整
といった効果があることが報告されています。
実際に使用した主なツボ
腎兪(じんゆ):腰の深部の冷え・巡り改善
大腸兪:腰背部の緊張をゆるめる
委中(いちゅう):腰痛全般に効果の高いツボ
殿部のトリガーポイント:深部筋の過緊張を改善
必要に応じて、深部へ届く刺鍼技法(長鍼)を用い、椎間板まわりの緊張を緩めるアプローチを行いました。
治療の経過
【初回〜3回目】
朝のこわばりが軽くなってきた
前屈したときの痛みが減少
椎間板周囲の深部筋の緊張が少しずつ緩和。
【4〜6回目】
長時間座っても痛みにくくなる
腰の重さが減り「仕事がしやすい」と実感
姿勢のクセや骨盤のバランスも整ってきたタイミングです。
セルフケアの重要性
椎間板性腰痛は「癖(くせ)」として再発しやすいため、
次のセルフケアもセットで行っていただきました。
- 毎朝の股関節ストレッチ
- 1時間に1回の立ち上がり習慣
- 腰を温める(特に入浴時)
- 深呼吸&腹式呼吸で腹圧をやわらかく保つ
筋トレよりもまず、柔軟性・血流を戻すことが優先です。
椎間板性腰痛は「適切にケアすれば良くなる」痛み
椎間板性腰痛は、
- 椎間板の変性
- 姿勢の負担
- 深部の筋緊張
- 冷え・血行不良
- ストレス
など複数の要因が絡み合って起こります。
しかし、早めの治療と日々のセルフケアを組み合わせることで、症状が大きく改善するケースは珍しくありません。
再発しないためのセルフケア
椎間板性腰痛は「良くなる」ことができる一方、再発しやすいタイプの腰痛でもあります。
原因の多くが
姿勢・筋力不足・柔軟性低下・血流不良
などの日常習慣にあるため、セルフケアが非常に重要です。
以下は、臨床で効果の高かったものを絞ってご紹介します。
1.“股関節まわり”の柔らかさを保つ
椎間板に負担がかかる人のほぼ全員に、
股関節の前側・後側の硬さが見られます。
オススメのストレッチ
①腸腰筋ストレッチ(腰の反りすぎ対策)
片膝立ちになり、前に体重を移動して股関節前側を伸ばす。
30秒 × 3回。
②ハムストリングス伸ばし(前屈痛の改善)
膝を伸ばし、脚の裏側を気持ちよく伸ばす。
20〜30秒 × 3回。
2.1時間に1回の「立ち上がり」習慣
椎間板は座っていると 立っている時の約1.5倍の圧力 がかかると言われています。
対策はシンプルで、
「60分座ったら、1分だけ立つ」
これを繰り返すだけで椎間板への負担が激減します。
仕事中の腰痛が軽くなるだけでなく、再発予防に非常に有効です。
3.腹式呼吸で腹圧を整える
腹圧が弱いと椎間板に負担が集中します。
腹筋運動よりも先に、腹式呼吸で“深層の支え”をつくることが大切です。
1日1分の腹式呼吸
鼻からゆっくり吸う
お腹をふくらませる
長く細く吐く
“お腹まわりの筋肉がふわっと広がる”感覚が出てくればOK。
4.朝の「前屈み動作」を避ける
椎間板は朝いちばんに水分を吸って膨らんでおり、
もっとも負担に弱い状態になっています。
起床後すぐに避けるべき動作
- 靴下を座って前屈で履く
- 落とした物を前かがみで拾う
- 洗面台で深く前屈みになる
起きて10〜15分ほど経つと負荷は安定します。
その間は膝を曲げて動くことを意識しましょう。
5.冷え対策(特に腰とお腹)
椎間板周囲の筋群は冷えると緊張しやすくなり、椎間板にかかる圧が強まります。
- 入浴は40℃で10分
- 腰の保温
- エアコンの冷気を避ける
これだけで痛みの出方が大きく変わります。
まとめ
椎間板性腰痛は「画像には写りにくい」タイプの腰痛
鍼灸は深部の血流改善・筋緊張の緩和に特に有効
日常習慣の見直しで再発予防が可能
長引く腰痛は、放置せず早めのケアが大切
同じ症状でお悩みの方へ
「レントゲンでは異常なし」と言われたのに
腰痛が良くならない方は多くいらっしゃいます。
もし、あなたが
- 前屈みで痛い
- 朝のこわばりがつらい
- 長時間座れない
- 腰の重だるさが続く
という症状があれば、椎間板性腰痛の可能性があります。
鍼灸は、こうした「奥の痛み」への適切なアプローチができる治療法です。
お気軽にご相談ください。



