更年期の不調を乗り越える!自律神経を整える鍼灸の力-更年期をもっと穏やかに過ごすために-

夜になると足がムズムズ…それ、「むずむず脚症候群」かもしれません
「夜になると足がムズムズして眠れない」「じっとしていると、どうしても足を動かしたくなる」。そんなお悩みをお持ちの方は、もしかしたら「むずむず脚症候群(レストレッグ症候群)」かもしれません。
この症状は、特に中高年の女性に多く見られ、軽症でも睡眠障害や生活の質を大きく損なうことがあります。今回は、むずむず脚症候群の医学的な解説と病院での治療法、さらに鍼灸治療の可能性について詳しくご紹介いたします。
目次
医学的な解説と病院での治療について

むずむず脚症候群(Restless Legs Syndrome:RLS)は、以下の4つの特徴的な症状で診断されます:
脚に不快な感覚(むずむず、虫が這うような感覚、かゆみ、しびれ)がある
その感覚は、安静時に強くなる
足を動かすことで症状が軽くなる
夕方から夜間にかけて症状が悪化する
このほかにも足が熱い、だるい、はれぼったいなどの症状を訴える方がいます。
原因は、はっきりとは分かっていませんが、ドパミンという神経伝達物質の機能異常や、鉄不足が関係していると考えられています。実際に、鉄分の補充やドパミン受容体作動薬の服用で症状が改善するケースもあります。
病院で行われる治療法
鉄剤の内服(フェリチン値が低い場合)
ドパミン作動薬(プラミペキソール、ロチゴチンなど)
抗けいれん薬(ガバペンチン、プレガバリンなど)
睡眠薬、抗不安薬(一時的に使用されることがあります)
ただし、すべての方に効果があるわけではなく、副作用や長期使用による「オーグメンテーション(症状の悪化)」に悩む方もいらっしゃいます。
鍼灸治療に関する研究報告の要約
近年では、むずむず脚症候群に対する鍼灸治療の効果を検証した研究も増えています。たとえば、中国や韓国で行われた複数の臨床試験では、ドパミン作動薬と同程度、もしくはそれ以上の症状軽減効果が報告されています。
代表的な研究例
2021年の韓国のRCT(ランダム化比較試験)では、8週間にわたって週2回の鍼灸治療を行い、RLS症状の重症度スコア(IRLS)が有意に改善。
2018年の中国の研究では、足の経穴(ツボ)を中心に治療した群が、薬物治療群よりも睡眠の質が向上。
これらの研究から、鍼灸は薬物治療の代替あるいは補完療法としての可能性があると期待されています。
鍼灸治療がむずむず脚症候群に及ぼす影響と改善までの期間
当院での臨床経験から申し上げますと、軽症〜中等症のRLSの方であれば、2〜3週間で睡眠の質が改善し、1〜2ヶ月で症状の頻度や強さが軽減されるケースが多く見られます。
鍼灸は全身の血流を改善し、自律神経を整える作用があります。また、脚の緊張を緩め、脳内のドパミンバランスを穏やかに調整する作用が期待できます。
初回は週に2回程度の治療を行い、状態が安定してくるにつれて週1回、月2回と間隔をあけていきます。
むずむず脚症候群に対し有効なツボ(経穴)
以下は、実際の鍼灸治療でよく使うツボです。
足三里(あしさんり)
膝の下、脛の外側、胃腸を整え、全身の気血の巡りをよくする
三陰交(さんいんこう)
内くるぶしの上4横指、自律神経を整え、冷えや血流を改善
陰陵泉(いんりょうせん)
脛の内側、膝のすぐ下水分代謝を整え、脚のだるさを解消
太谿(たいけい)
内くるぶしとアキレス腱の間、腎機能を整え、足の感覚異常に対応
太衝(たいしょう)
足の甲、親指と人差し指の骨の間ストレス緩和と自律神経調整に効果的


自宅でできるツボ押しセルフケア
ご自宅でも気軽にできる、簡単なツボ押しをご紹介します。お灸をした方が効果があります。
ツボの押し方
親指や指の腹で、心地よい強さで5〜10秒押します。
深呼吸をしながら、1カ所につき3回ほど繰り返します。
就寝前や、脚がムズムズする前兆があるときに行いましょう。
おすすめは「三陰交」「太衝」「足三里」の3つです。これらは自律神経を整え、脚の緊張や血行不良を和らげる働きがあります。
自宅でできるむずむず脚症候群の軽減に効果的なセルフケア
ツボ押しと合わせて、以下のような生活習慣の見直しも効果的です。
就寝前の軽いストレッチ(足首回し、ふくらはぎのマッサージ)
温かい足湯(足の血行を促進)
鉄分を意識した食事(レバー、小松菜、納豆、赤身肉など)
カフェインの摂取を控える(特に午後以降)
定期的な運動(散歩や軽い体操など)
これらを継続することで、症状の予防や緩和が期待できます。
病院でのお薬の治療がマストで、鍼灸治療を組み合わせていきます。
症例紹介(改善がみられたケース)
【症例】60歳女性、主婦
【主訴】
数ヶ月前から、夜になると足がムズムズして眠れず、睡眠の質が低下。病院でのMRI等の検査では異常なし。レストレッグ症候群と診断され、プラミペキソールを処方されたが、副作用の眠気が強く続かず、鍼灸治療を希望して来院。
【治療方針】
使用ツボ:足三里、三陰交、太衝、陰陵泉、太谿
刺激法:置鍼15分、低周波パルス併用(陰陵泉〜足三里)
頻度:最初の2週間は週2回、その後週1回に減らす
【経過】
2週目:睡眠途中の中途覚醒がやや減少
4週目:ムズムズ感が夜1回程度に減少し、眠れる日が増える
2ヶ月後:薬なしでも眠れるようになり、症状がほぼ消失
3ヶ月後:メンテナンス治療に移行
鍼灸治療は「希望の一歩」
むずむず脚症候群でお悩みの方にとって、眠れない夜は本当につらいものです。薬が効かない、あるいは副作用が心配という方にとって、鍼灸治療は副作用が少なく、体質改善をしながら根本的な改善を目指せる選択肢です。
病院での内服治療に加えてセルフケアや食事、鍼灸治療を併用するのが最も良い方法です。
しかしながらすべての患者さんが改善するというわけではありません。現在この病気に鍼灸治療を行った論文がいくつか出ていますが、効果を支持するには不十分であると結論付けられています。それは論文の質が低いことや数が少ないことが原因です。
「もう治らないのでは…」とあきらめる前に、どうぞ一度、鍼灸のやさしい力を体験してみてください。



