ヘルペス後神経痛の痛み、あきらめないで!鍼灸治療でできること
はじめに
変形性股関節症(へんけいせいこかんせつしょう)は、主に股関節の軟骨が摩耗し、痛みや動作制限を引き起こす疾患です。今回は軽症から中等症の患者様を対象に、変形性股関節症の症状やその鍼灸治療による効果、そして自宅でできるセルフケア方法についてご紹介します。
このコラムで対象とする変形性股関節症は軽症か中等症です。重症の場合は手術の適応となりますので鍼灸治療やセルフケアは該当しない場合があります。
変形性股関節症で立ち座りがしづらい、痛みがあって鍼灸院を訪れる患者さんの多くはすでに病院でMRIなどの検査を受けていらっしゃいます。
もし症状が長く続いている場合は一度整形外科などの専門医で検査を受けていただければ、鍼灸院での対応がスムーズになります。
変形性股関節症とは
股関節は骨盤を作っている寛骨の受け皿に大腿骨のアタマ(骨頭)がはまってできる関節です。
変形性股関節症は、この関節の軟骨がすり減り、骨同士が直接接触してしまうことで炎症が起き、痛みや腫れが生じる疾患です。
特に高齢者や股関節に負担のかかる職業を持つ方に多く見られます。初期段階では関節のこわばりや違和感から始まり、次第に痛みが強くなり、最終的には日常生活に支障をきたすことがあります。股関節が正しく動かないことで、周辺の筋肉が固まり、さらに症状を悪化させることもあります。
股関節の変形が進むと、歩行や立ち座り、階段の昇り降りといった動作が困難になりますが、早期の段階で適切な治療を行うことで、症状の進行を抑えることができます。
鍼灸治療が変形性股関節症に及ぼす影響
鍼灸治療は、変形性股関節症の症状緩和に有効です。特に、日常生活動作(ADL)の改善に役立ちます。股関節周囲の血流を改善し、炎症を鎮める効果があるため、痛みの緩和や筋肉のこわばりをほぐすことができます。また、関節の可動域が制限されている場合、鍼灸治療によって筋肉の柔軟性を向上させ、動作がスムーズになることが期待できます。
鍼によって身体の自然治癒力を高め、ツボ(経穴)を刺激することで、全身のバランスを整え、股関節にかかる負担を軽減することが可能です。特に、変形性股関節症の軽症から中等症の段階であれば、定期的な鍼灸治療を行うことで、症状の進行を遅らせる効果が見込めます。
変形性股関節症の痛みと筋肉のコリに有効なツボ
次に、変形性股関節症による痛みやコリに有効なツボをご紹介します。
環跳(かんちょう)
環跳は、股関節痛の緩和に効果的なツボです。お尻の外側に位置し、股関節周囲の筋肉の緊張をほぐす効果があります。特に、痛みが強くなる夕方や夜間に環跳を押すことで、痛みが和らぐことが期待できます。
殷門(いんもん)
殷門は、太ももの後ろ側にあるツボで、股関節周囲の血流を良くする効果があります。鍼灸治療では、このツボを刺激することで、こわばった筋肉をリラックスさせ、痛みの軽減に繋げます。
陽陵泉(ようりょうせん)
陽陵泉は、膝の外側に位置するツボで、股関節だけでなく膝関節の可動域改善にも効果があります。歩行時の痛みや、股関節の違和感を軽減するのに役立ちます。
そのほか臀部や太ももなどの筋肉のコリを見つけてはりをすることで股関節を動きやすくします。
自宅でできる動作痛緩和のツボとその方法
変形性股関節症による動作痛を自宅で和らげるための、簡単にできるツボ押しをご紹介します。毎日のセルフケアに取り入れることで、症状の進行を防ぐことができます。
環跳のセルフケア
立っている状態で、片方の脚を少し曲げ、環跳のツボを指で押します。押す際には、深呼吸をしながら痛気持ちいい程度の強さで5秒間押し、ゆっくり離します。これを5回ほど繰り返すことで、筋肉の緊張がほぐれ、動作痛が和らぎます。
殷門のセルフケア
座った状態で、太ももの裏側にある殷門を手で押します。椅子に座って行うと安定して押せます。片側5秒間押して、左右交互に繰り返します。痛みを感じたときや、長時間座っている際に行うと効果的です。
テニスボールを使ったセルフケア
仰向けに寝てお尻の下にテニスボールを入れて体重をかけます。イタ気持ちいい感じで30秒静止します。そのあとテニスボールを少しずらして別の位置でイタ気持ちいい状態で30秒保持します。これを数回繰り返します。
詳しいツボのとり方やテニスボールの当て方ややり方については鍼灸師にお尋ねください。
自宅でできる股関節の動きが悪いときに効果的なストレッチ
股関節の可動域制限を緩和するためのストレッチは、日常的に行うことで、股関節周囲の柔軟性を高め、動作の改善に繋がります。ここでは、簡単にできる2つのストレッチをご紹介します。
大腿四頭筋と大殿筋のストレッチは、股関節や膝の動きを改善し、筋肉の柔軟性を高めるのに効果的です。以下、それぞれのストレッチ方法をご紹介します。
1. 大腿四頭筋のストレッチ
大腿四頭筋は太ももの前側に位置する筋肉群で、股関節や膝の動きに重要な役割を果たします。この筋肉が硬くなると、膝や股関節に負担がかかることがあります。
やり方:
1. 立った状態で壁や椅子に手を置いてバランスを取ります。
2. ストレッチする側の足を後ろに曲げ、同じ側の手で足首をつかみます。 (バランスが取りづらい場合は、反対側の手で壁や椅子に軽く触れてください)
3. 足首をお尻に近づけるように引き寄せ、大腿前面の筋肉が伸びているのを感じましょう。
4. 背筋を伸ばし、股関節を前に軽く押し出すようにしてさらにストレッチを深めます。
5. この姿勢を15〜30秒間キープし、反対側も同様に行います。
注意点:
背中を反らさないように注意し、股関節を前に押し出す動きで太ももの前側をしっかり伸ばすようにします。
2. 大殿筋のストレッチ
大殿筋はお尻の筋肉で、股関節の動きや姿勢の安定に重要です。この筋肉が硬くなると、腰や股関節に負担がかかりやすくなります。
やり方1:座った状態でのストレッチ
1. 床や椅子に座り、片足を反対側の膝にかけます。 (例えば、右足の足首を左膝の上に乗せる)
2. 上半身をゆっくりと前に倒し、かけた足の膝を手で軽く押し下げます。
3. お尻の筋肉が心地よく伸びるのを感じながら、15〜30秒間キープします。
4. 反対側も同様に行います。
やり方2:仰向けでのストレッチ
1. 仰向けに寝て、両膝を曲げます。
2. 片膝を反対側の胸に引き寄せ、もう片方の足首を引き寄せた膝の上にかけます。
3. 手を使って膝を胸に引き寄せ、お尻の筋肉をしっかりと伸ばします。
4. この姿勢を15〜30秒間キープし、反対側も同様に行います。
注意点:
動作中は息を止めず、リラックスしながら行うことで、筋肉がより効果的に伸びます。痛みを感じたら無理せず強度を調整しましょう。
この2つのストレッチを日常的に取り入れることで、股関節や膝周りの柔軟性が向上し、動作がスムーズになります。
症例:70歳女性、主婦 – 変形性股関節症の初期に対する鍼灸
患者情報:
年齢:70歳
性別:女性
職業:主婦
主訴:右鼠径部(そけいぶ)と臀部に動作時痛があり、股関節のこ
病歴:
この患者様は、1年前から右鼠径部と臀部に痛みを感じ始め、特に長時間歩行や階段昇降の際に強い痛みを訴えていました。また、朝起きた際に股関節がこわばることが多く、股関節の動きが悪くなっていると感じるようになりました。整形外科でMRI検査を受けた結果、変形性股関節症の初期段階と診断され、医師からは手術の選択肢も提示されましたが、患者様は手術を望まず、他の治療法を模索していました。友人の紹介で鍼灸治療を知り、当院を訪れました。
初診時の評価:
疼痛の部位:右鼠径部から臀部にかけての動作時痛
痛みの程度:動作時に10段階中6~7程度の痛み(特に階段昇降や長時間の歩行)
可動域:股関節の屈曲や外旋で制限があり、可動域が狭い
日常生活動作(ADL):家事や買い物時に痛みが出現し、旅行や長時間の外出が難しい状態
整形外科的診断:変形性股関節症の初期
治療への希望:手術を避けたいが、痛みの緩和と日常生活をもっと快適に過ごせるようになりたい。
鍼灸治療の実施:
治療の方針として、鍼灸により股関節周囲の血流を改善し、炎症を抑え、筋肉の緊張をほぐすことを目指しました。主に以下のツボを使用して治療を行いました。
環跳(かんちょう):股関節痛を緩和するための主要なツボ。股関節周囲の筋肉のこわばりを取り除き、動作痛を軽減するために刺鍼。
殷門(いんもん):太ももの裏側のツボで、股関節周囲の筋肉の緊張をほぐし、血流を改善。動作時の痛みを減少させることを目的としました。
また、鍼とともに、低周波鍼通電療法や温灸も併用し、さらに筋肉の緊張を緩め、炎症を鎮める効果を高めました。
治療経過:
1回目の治療後:股関節のこわばりが少し改善し、動作時の痛みが軽減。特に朝起きた際の股関節の固さが和らいだと報告。
5回目の治療後:階段の昇降や買い物中の痛みが大幅に減少し、日常生活が楽になった。右股関節の可動域も増加し、長時間歩行も少しずつできるようになる。
10回目の治療後:股関節の可動域は明らかに改善され、右脚の動きがスムーズになりました。動作時の痛みも10段階中3~4に減少し、日常生活での動作がさらに楽になり、ADLの制限がほぼ解消。
最終評価:
鍼灸治療を継続した結果、股関節の可動域が顕著に改善し、鼠径部や臀部の動作時痛も大幅に軽減しました。家事や買い物など日常生活に支障をきたすことがなくなり、長年諦めていた旅行にも行けるようになったとのことです。患者様は、手術を避けた上でこのような結果を得られたことに非常に満足され、定期的なメンテナンス治療を希望されています。
結論:
変形性股関節症の初期段階では、鍼灸治療が有効な選択肢となり得ることが示されました。特に環跳や殷門などのツボに対する刺鍼によって、痛みや可動域の制限が改善され、患者様のADL向上が確認されました。この症例は、手術を拒否する患者様にとって、鍼灸が安全かつ効果的な治療法であることを示唆しています。
まとめ
変形性股関節症の軽症から中等症では、早期の治療とセルフケアが非常に重要です。鍼灸治療による症状の緩和や、日常生活での痛みの軽減、可動域の改善が期待できます。ご紹介したツボ押しやストレッチを日々のケアに取り入れていただくことで、少しでも楽に生活を送ることができるでしょう。
安静にしていても痛みが続く場合は、これらのセルフケアは行ってはいけません。医療機関を受診するか、担当の鍼灸師にご相談ください。