高齢者に寄り添う鍼灸治療:痛みの軽減と日常生活のサポート
12月22日(金)と23日(土)、けっこうつもりましたね。暖冬ということで積雪に驚いた方もいると思いますが、暖冬だと日本海の海水温が高くなったいます。そこに北からの寒波がくると大量の雪となります。昨年もクリスマスのころに結構な積雪があり、クリスマス寒波といわれてました。除雪作業で運動不足解消なんて言ってられません。あちこち痛くなります。
さて、今回は雪かきで全身筋肉痛の患者さんのお話です。過去にも雪かきでおきた筋肉痛のお話をこのコラムにアップしましたが、今回は実際の患者さんのお話です。
42歳、女性。主訴は「全身が痛い」と来院された方です。
原因は雪かきです。雪かきする前にはなかった症状です。痛む場所は肩関節、くび、背中、腰、お尻、手も足も。
雪かきに加えて車がワダチにはまり動けなくなりました。タイヤは空転、ハンドルを切っても車は微動だにしません。どうやら車体の底が圧雪面について亀のようになっています。急遽、スコップで車体の下の雪を掘りました。
北陸の皆さんは今回の雪で一度ならずご経験したことでしょう。動けなくなって困っている人を助けた方もいるでしょう。
掘っている最中からからだの痛みを自覚していたとのこと。年末、仕事の疲労が溜まっている上に膝をついて、場合によってはうつ伏せになって車体下の雪を崩さないと車は動きません。やらないと後ろがつかえて渋滞してしまいます。ガンバってクルマを動くようにしました。全身の痛みはそのせいです。
翌朝、痛みがひどく会社を休みたいのですが休めず、外はまたもや雪が積もっています。とりあえず車を出せるように除雪をし会社へ到着。気を張って仕事をしましたが痛みは悪くなるばかり。
そんな状態で、夕方当院に訪れました。
筋肉痛、つまり遅発性筋痛症。筋肉の酷使により疲労物質がたまり、痛みが遅れて出てくることをいいます。早く痛くなる方が若くて、遅く出てくるのは年取った証拠なんてよく言われますが、真偽の程はわかりません。とにかくなんとかしてあげないと、この痛みしばらく続くはずです。
痛む場所の可動域はすべて問題ありませんでした。動かしたら痛い。安静に寝ていれば痛くない。寝返りは痛みます。筋肉に炎症はありません。筋疲労による痛みとして鍼治療を行うことにしました。
遅発性筋痛症の治療で大事なことは、一つの筋肉が痛みを出しているのか、複数の筋肉が痛みを出しているのかを、問診や触診で判断することです。
一つ二つの筋肉ならば、その筋肉を押してみて一番痛みの強いところに鍼をすればたちどころに楽になります。同様に数か所治療します。今回の患者さんのように、全身が痛いという方には違う方法でアプローチします。
まず、全身の緊張を取る治療をします。全身というのはカラダだけでなく、気持ちも含みます。つまり、リラックスさせます。同時に、一番痛む場所を聞いておいてどの筋肉が一番硬くなっているかを探しておきます。全部痛いと言っても最悪なところが必ずあります。
うつぶせになり擦過鍼を使います。擦過鍼とはへら状の金属の板でできています。軽く皮ふをこすることで広範囲に皮膚を刺激して交感神経の緊張を軽減するのに役立ちます。
そのあとにこりを探して浅く鍼を刺して15分間静かに休んでもらいます。時間が来たところで鍼を抜いて筋肉の緊張を確認すると、硬かったものが柔らかくなっています。
続いて、仰向けになってもらいます。めっちゃ早く寝返りしました!。
「あれ?痛くない!!」
「寝返りできた!!」
患者さんはびっくりしています。交感神経の緊張を取り、要所要所の筋肉の緊張を取っただけでこのとおりです。あとは、雪かきで酷使する体の前面と手足の筋肉に同じように鍼をして終了です。
治療が終わった後は痛みがなくなりスッキリしました。帰られたら必ずお風呂で温まること、今日は早めに就寝してもらうことなどをお伝えして治療を終了しました。
急な筋疲労で痛みが起こった場合、筋違いや肉離れなどの損傷や炎症がなければ、はりは速攻で効果があります。筋疲労を起こす前に不摂生をしていたり体調不良があったりした場合はよくなるまでに少し時間がかかるかもしれません。
状況を判断し適切に対処してできるだけ早く楽になるよう努めることが大事です。