寝違えはほうっておくとこじれることも!そんな時はこのツボ!
鍼してはいけない!レッド・フラグ
非特異的腰痛のお話を続けますが、その前に。鍼灸師が抱え込んではいけない腰痛があります。いわゆるレッド・フラグ。危険信号を発している状態があれば専門医に紹介します。高齢者に多いのは転倒などの後に痛み出した腰痛。日常生活に支障が出ます。これは脊椎の圧迫骨折を疑います。次に危険なのは腰部脊柱管狭窄症の膀胱直腸障害と筋力低下。軽症の腰部脊柱管狭窄症については今後鍼灸治療のお話をしますが重症の場合、肛門や性器の周辺が熱くなる、しびれる、尿が出にくい、尿漏れなどの症状、または足に力が入らなくなり歩けなくなる場合は、精密検査と治療を専門医にお願いします。早急に対処しないといけません。鍼灸師は疑うことしかできません。診断は医師の仕事です。疑わしい場合は医師に紹介します。こういったレッド・フラグを見分けた上で鍼灸治療しても大丈夫な腰痛、つまり非特異的腰痛に対応していきます。
年を取って、腰が曲がって・・・
74歳の男性は自営業で生計を立てています。立ち仕事が多くやや中腰で作業を続けます。1年前に腹部の手術をしてから腰がよけいに痛くなりました。手術で腹筋が弱くなって腰の負担が増えたんでしょう。年齢的に筋力低下が起こる年頃にも関わらず、中腰での仕事を続けているわけで、筋疲労も相当なものと推測されました。
立ってもらい姿勢を見ると膝と腰がまがり下腹が前に突き出ています。そしてアゴも上がって前に出ています。つまりおじいちゃんの格好になっています。この姿勢が一番楽な格好だと言います。あえてキヲツケの姿勢を取るとしばらくで腰とおしりが痛くなります。
うつぶせで腰を見せてもらうと腰方形筋に大きなコリがありました。腰方形筋は第12肋骨と腰椎の肋骨突起に付着しているのでこの部位を探るとコリと圧痛を見つけることができます。
はりしたら腰が伸びた!?
そのコリにゆっくりと鍼を刺入し置鍼します。鍼を刺入し雀啄(じゃくたく)という手技を行ないました。雀啄(じゃくたく)とは、一定の深さまで刺入してから、雀(すずめ)がエサを啄む(ついばむ)ように鍼を進めたり戻したりする方法です。
コリの表面を鍼でこするようにすると患者さんはいつもの痛いところに響いて大変気持ちが良いと言います。
その後置鍼しました。寝ていたようです。
終了後に体を動かしてもらうと痛みが軽くなり腰が伸びて楽に体が動かせます。慢性腰痛ですので今は楽になっても、仕事を再開すると痛みがもどることは目に見えています。
姿勢に腰痛を悪化させる要因があり、体の使い方にも問題ありです。つまり腰以外にも問題があるのが高齢者です。
通院をしてもらうことになりました。
後日、お電話にて治療後久しぶりに洗車をし草むしりもした。すごく楽にいろいろできて嬉しかったとのことでした。家の人にやりすぎだと叱られたと言ってました。
高齢者の慢性腰痛
高齢者の慢性腰痛は治りはしませんが楽に生活できるようになります。大変素晴らしいことです。腰痛を起こす筋肉は腰方形筋以外にもいろいろあります。2つ以上の筋肉の場合もあります。悪いところをよく見極めることが大切です。
また、社会的、習慣的な要素も見逃せません。特に慢性の場合は、特定の筋肉の障害と同じぐらい社会的背景や習慣が問題となり、なかなか改善しない場合があります。
そんな場合は気長にあきらめず必ず良くなると信じて治療や運動などを続けていくことと、気持ちを切り替え習慣を見直し、痛みの悪循環を断ち切ることが大事です。
痛いこと悪いことばかり目を向けず、良くなったこと楽になったことに目を向け、カラダに感謝といたわりの気持ちを持つことが大事です。
一人でも多くの腰痛患者さんが楽になるよう鍼灸という手段で貢献したいと思います。
慢性腰痛にはこのツボに効け!
「京門(けいもん)」
脇腹から少し腰によったところに第12肋骨の先端が触れます。このとんがりの下にこのツボはあります。腰方形筋が第12肋骨に付着している場所です。肋骨をやさしく探して先端を見つけその下をグッと押して10秒保持。それを5~10回繰り返してください。けっしてほね(肋骨)を押さないように。気を付けてください。
「京」は都、人の集まる場所。または高い場所。京門は気が集まるところです。肋骨を高台に見立てたともいわれています。
おわりに
3回にわたり腰にある腰方形筋という大切な筋肉の一つに起こった腰痛を紹介してきました。慢性で痛みが続く場合は筋肉のこりだけでなく筋力低下や生活習慣にかかわる姿勢、食習慣、仕事、休息の取り方などいろん要因があります。一つ一つを見直して痛みのない生活をおくれるようにしてください。鍼灸がお役に立てる部分も多いと思います。
しつこい慢性腰痛には、「京門」を押せ!