■ GNSSは“特別な機械”ではなくなりました
不動産売買の現場において、土地家屋調査士に求められる役割は、単に図面を作成することではありません。高度な測量技術と公的資料の解析によって、土地・建物の物理的状況を適正に公示し、「不動産の表示に関する登記」の真正性を担保することにあります。
私たちは、公的な資料と現地の物的状況を高い精度で照合し、隣接地所有者様との**「境界立ち会いによる確認」を技術的な側面からお手伝いする**立場にあります。現場の環境に合わせた最適な測量手法を選び、不動産登記法が定める許容誤差の範囲内において、適正な測量成果を作成します。
1. 現場環境に応じたGNSS測量手法の適正な選択
境界の確認において、観測データの信頼性を確保するためには、現場条件に応じた適切な手法の選定が不可欠です。
スタティック観測・短縮スタティック観測: 高精度な基準点設置が必要な場面や、長距離の基線解析が求められる現場では、複数の衛星から長時間の信号を受信するスタティック観測を選びます。既知点との整合性を厳密に検証し、公共基準点に基づいた信頼性の高い座標値を算出します。
ネットワーク型RTK(VRS)直接法: 電子基準点からの補正情報を活用する直接法においても、上空視界やマルチパスの影響を的確に判断し、常に観測精度を確認しながら安定した測量値を算出します。
現場ごとに最適な観測手法を的確に選ぶことで、立ち会いの前提となる精度の安定を図ります。
2. 3D測量による「現況の可視化」と多角的な分析
二次元の図面情報だけでは把握しきれない複雑な地形や構造物の配置を整理するため、3D測量技術を活用します。
三次元点群データによる現況把握: 広範囲の地形や構造物を点群データとして取得することで、平面図では判別が困難な越境の予兆や、擁壁の全体形状を立体的に捉えます。
技術的資料による検討のサポート: 取得した3Dモデル上に、公図や地積測量図から導き出したラインを投影します。数値的な根拠と現地の立体的な現況を重ね合わせて解析することで、立ち会い時において、関係者の皆様が客観的な状況を把握するための判断材料を整えます。
3. 技術的誠実さと不動産登記の真正性
不動産登記の真正性を担保するためには、資料の不整合や現地の矛盾を曖昧にしたまま手続きを進めることはできません。
私たちは、測量データと資料との乖離を技術的に精査することを最優先します。調査士が独自に境界を決定することはありませんが、法と技術の原則に立ち返り、客観的事実に基づいた資料を提示することで、適正な立ち会いと確認のプロセスを支援します。この技術的妥協を排するスタンスこそが、安全な取引を支える基盤となります。
結び:正確な「データ」が、不動産の信頼を創る
土地家屋調査士が提供する価値の本質は、**「不動産の物理的状況を正しく公示し、取引の安全を技術面から担保すること」**に尽きます。
現場環境に即した観測手法の選択と、3Dデータによる多角的な可視化。これらによって、初めて安心できる不動産取引の土台が整います。



