世界測地系公共座標と現地で位置を読む
年末年始になると、帰省した家族から
「実家の土地はどうなっているのか」
「相続のとき境界は大丈夫なのか」
といった相談が増えてきます。
土地の境界や面積を扱う仕事をしていると、
「位置が正しい」ということがどれほど大切なのか、日々実感しています。
しかし一般の方にとっては、座標や基準点といった言葉は少し遠い世界に感じられるかもしれません。
そこで今回は、日本の測位を支える「みちびき(準天頂衛星システム)」を入り口に、
世界の測量がどんな考え方で成り立っているのか、
そして“任意座標”とはまったく違うということを、できるだけシンプルにお伝えしたいと思います。
■ みちびきは、なぜ作られたのか
みちびきは、
「日本で安定して高精度な位置情報を得るため」
に整備された衛星システムです。
目的は明確です。
• 都市部や山間部でも安定した測位を可能にする
• 数センチレベルの高精度測位を実現する
• 災害時に位置情報を確実に共有する
• 国土の管理やインフラ維持に役立てる
つまり、みちびきは
“公共座標をより正確に、より安定して使うための仕組み”
なのです。
そして、
“道を導く”という名前の通り、日本の測量を正しい方向へ“みちびく”ための衛星でもあります。
実は私は水戸一高の出身で、地元では“至誠一貫・堅忍力行”の象徴のような学校です。
高校の同級生には東大を経てJAXAに進んだ者もいて、
卒業後に話す機会はありませんが、
宇宙で位置を決める仕事と、地上で位置を決める仕事が、
まったく別の世界のようでいて同じ思想の上に成り立っていることを感じます。
■ 世界の測量は「公共座標」という思想で動いています
アメリカのGPS、ヨーロッパのGalileo、中国のBeiDou、ロシアのGLONASS。
世界中の測位システムは、すべて
「地球規模で統一された座標系」
を前提にしています。
理由はとてもシンプルです。
• 国境を越えても地図がつながる
• インフラが整合する
• 災害情報を共有できる
• 将来にわたって再現できる
測量は“世界共通の言語”であり、
その文法が 公共座標 です。
■ 任意座標は、この思想とは真逆です
任意座標は、
「その場だけで通じればいい」
というローカルな考え方です。
もちろん、現場の仮設計や簡易作業では便利な場面もあります。
しかし、公共座標とは次の点で根本的に異なります。
• 再現性がない
• 第三者が追試できない
• 時間が経つと整合しない
• 社会インフラとつながらない
つまり、
任意座標は“個人の都合”、公共座標は“社会の基盤”
という違いがあります。
みちびきが目指している方向性は、明らかに後者です。
■ 公共座標がしっかりしていると、境界も安心です
公共座標が整っていることで、
• 地積測量図が合う
• 隣地との整合が取れる
• 将来の復元ができる
• 相続や売買のトラブルを防げる
こうした“当たり前”が守られています。
特にお正月は、
「実家の土地をどうするか」
「相続の準備を始めたい」
という相談が増える時期です。
公共座標は、そうした家族の話し合いにも静かに役立っています。
■ 最後に
土地家屋調査士の仕事は派手ではありませんが、
「位置を正しく扱う」という地味な作業の積み重ねが、社会の安心を支えています。
みちびきが目指しているもの、
世界の測量が大切にしているもの、
そして公共座標の必要性。
これらはすべて、
「任意座標が正しい」という考え方とはまったく別の次元にあります。
今回のコラムが、測量の世界の“本当の意味”を知るきっかけになれば嬉しく思います。



