BIM時代の現況3D測量 ― スタティック・アレス・ジェノバ・SLAM100を使い分ける新しい実務基準

疋田敬之

疋田敬之

テーマ:土地 建物 測量 相続

建築確認や施工計画がBIM中心へ移行する中で、建築士・工務店・ゼネコンが求めるのは、**「正確な現況3Dデータ」**です。
しかし実務では、敷地の高低差・既存構造物・道路形状が図面と異なることが多く、平面図だけではBIMモデルと現地の整合が取れません。

当事務所では、
スタティックGNSS・ネットワーク型RTK(アレス/ジェノバ)・LiDAR SLAM100 を現場に合わせて組み合わせ、BIM用に直接使える3Dデータを作成しています。

本コラムでは、BIM時代に通用する「本当に精度の出る現況3D測量」について解説します。

1.建築確認のBIM化で“現況3D測量”が必須になる理由

国土交通省は2025年以降、建築確認を電子化・立体化する方針を明確にしています。
配置計画、離隔チェック、法規制判断は、平面図ではなく3Dモデルで行う時代になりました。

そのため設計段階で必要なのは、

正確な敷地の高低差

道路中心線・法面形状

既存擁壁・排水構造物の3D情報

樹木・地盤段差の位置

境界点との整合の取れた座標値

これらが揃わないと、
BIMモデルの配置検討が成立せず、再設計が頻発します。

2.施工計画の「施工BIM」でも現況3Dが基礎データになる

ゼネコンはすでに、

仮設計画

重機配置

干渉チェック

搬入経路

土量計算
をBIMで行っています。

施工BIMに欠かせないのは、
“現況の3D形状”を正しく表した点群データです。

特に盛土・切土検討では、誤差5〜10cmの違いが土量の過大見積りにつながります。
SLAMやGNSSによる高密度データは、施工精度の基礎となります。

3.スタティックGNSS観測は「成立しない現場」がある

スタティック観測は高精度な基準点確立手法ですが、万能ではありません。

■成立しない・させてはいけない条件

樹木が密集した山林

コンクリート構造物の密集地

マルチパスが強い環境

高層建物のキャニオン

電子基準点までの距離が大きい地域

衛星配置(DOP値)が悪い時間帯

こうした現場では、
無理にスタティックを使うと、見かけ上RMSが良くても実際の位置が大きく狂う。

調査士として一番大切なのは、
「成立する手法のみを選択する判断」です。

4.アレス(ALES)/ジェノバ(JENOBA)によるRTK観測の強み

現地条件が厳しい場所では、ネットワーク型RTK観測が非常に有効です。

■アレス(ALES)

Fix率が高く山林・農地に強い

逆打ち・広域探索に最適

衛星数が多く、短時間で安定解へ

広大敷地の境界探索に向いている

■ジェノバ(JENOBA)

茨城県北〜県央で補正情報が安定

地域最適化され、当地では精度が高い

造成・太陽光業者の標準方式

Drogger機器との相性が良い

■RTKの役割

“基準点を作る”用途ではなく、

現況点・既存杭・境界推定位置の座標取得に最適な手法

5.LiDAR SLAM100 による形状補完

GNSSが届かない場所(家屋周り・林地・崖下)は、SLAM100 が威力を発揮します。

地形の連続性を正しく取得

起伏・段差・構造物を立体的に記録

BIMモデルへの直接取り込みが可能

Trend-Point で座標化し、GNSS基準点と結合

RTK+SLAMの併用により、
平面と立体の両方で“現実の敷地”を正確に再現できます。

6.「境界 × BIM × 3D測量」という調査士ならではの価値

他業者が作る点群は“現況の形状”にすぎません。
しかし調査士が作る点群は、
**境界との整合が取れた“法務的に裏付けされたデータ”**です。

法務局図面との整合確認

既存杭の検証

ヘルマート変換・アフィン変換による座標補正

境界確定との整合性確認

これらを含めて現況3Dデータを提供できるのは、
土地家屋調査士のみです。

7.まとめ:BIM時代の現況3D測量は“組み合わせ”が鍵

BIM時代に求められる現況3D測量は、特定の手法だけでは成立しません。

スタティックGNSS

アレス(ALES)

ジェノバ(JENOBA)

LiDAR SLAM100

これらを現場条件で適切に使い分け、
最も正確に境界と地形を再現することが、BIM設計・施工BIMの基礎になります。

当事務所では、この4手法を組み合わせ、
建築確認・施工計画・造成計画にそのまま利用できる3Dデータを提供しています。

【お問い合わせ】

疋田土地家屋調査士事務所
所在地:水戸市堀町1125番地の30
電話:029-253-0365
携帯:090-6500-7763

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

疋田敬之
専門家

疋田敬之(土地家屋調査士)

土地家屋調査士 疋田敬之事務所

衛星及び電子基準点を使用したネットワーク型RTK-GNSS測量で引照点観測をした世界座標による地積測量図を作成することにより何世代を経過しても安心して境界杭を維持管理できるデータを提供します

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

境界確定測量・土地分筆登記・建物表題登記の専門家

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ茨城
  3. 茨城の法律関連
  4. 茨城の不動産・登記
  5. 疋田敬之
  6. コラム一覧
  7. BIM時代の現況3D測量 ― スタティック・アレス・ジェノバ・SLAM100を使い分ける新しい実務基準

疋田敬之プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼