設計の出発点を“見える化”する:現況3D測量の力
1.スタティック観測は最も高精度ですが、環境によっては精度が出ない場合があります
スタティック観測は GNSS 測量の中でも最も高精度の結果が得られる方法です。
しかし、現場の状況によっては、理論どおりの精度が得られない場合があります。
主な要因は次のとおりです。
・樹木・建物・斜面などによる衛星遮蔽
・反射電波(マルチパス)の多い環境
・観測時間が十分に確保できない場合
・電子基準点との距離により衛星配置が悪化する場合
そのため、「スタティック観測だから必ず高精度である」とは限らず、
現地環境によって誤差が残ることもあります。
2.環境が悪い場合はネットワーク型GNSS観測直接法を併用します
スタティック観測で十分な精度が得られない場合には、
ネットワーク型 GNSS(RTK方式)による観測直接法を併用します。
・複数の電子基準点から補正情報を受信
・GPS / GLONASS / Galileo / QZSS などマルチGNSS対応
・GENOVA、APOS、ALES 方式など地域に応じた補正情報の活用
遮蔽の多い地域でも FIX 解が得られやすい利点がありますが、
地域性や観測時間帯などの要因により、FIX が安定しない場合もあります。
3.それでも観測が成立しない場合は、登記多角点で整合性を確認して図面を作成します
スタティック観測やネットワーク型 RTK でも十分な結果が得られない場合には、
最終的に「登記多角点」による整合性確認を行います。
・法務局備付の近傍多角点座標を利用
・近傍点との相対誤差の確認
・登記申請図面として必要な整合性を満たす形で補正
これはあくまで「整合性の確認」であり、
高精度測位を行うものではない点に注意が必要です。
4.最終的には現地境界標の観測と、変換による整合性評価で復元を確認します
最終的には、どの観測方法を用いた場合であっても、
現地に存在する境界標を一定範囲で観測し、既存図面(地籍図、公図、旧測量図)との整合性を確認します。
この際、
ヘルマート変換やアフィン変換を用いて観測値と図面座標の差異を評価し、現地復元性の高い位置関係を確定します。
境界復元はあくまで「現地の境界標を基準」とし、図面情報との整合性を数値的に検証しながら判断する作業です。
5.現場環境に応じて最適な観測方法を選択することが専門家の責務です
衛星測量には非常に高い精度を期待できますが、環境要因による制約もあります。
そのため、スタティック観測・ネットワーク型 GNSS・登記多角点を適切に組み合わせ、
現場環境に応じて「その環境で得られる最大の精度」を確保することが重要です。
境界に関する誤差は後から修正ができません。
今後も現地環境を十分に確認し、合理的で確実な方法を選択することで、
適切な境界確定に資する測量を提供してまいります。
なお、大阪工業大学大学院 工学研究科様の実証実験などにもあるように
ネットワーク型RTK単点観測法による基準点測量の精度検証が進んでいて
得られた値そのものには現実的には再現性があると認められると思います。
現地と物理的に紐づけされていないという点に注意は必要ですが
それは、現地において境界標を相当程度観測し現地のデータを取得することにより
現地との調和は図れると思います。
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