GNSS観測方式のちがい ― スタティック観測とネットワーク型RTK観測直接法

GNSS観測方式のちがい ― スタティック観測とネットワーク型RTK観測直接法
土地分筆や境界確認などの登記測量では、どの観測方式を採用するかによって成果の信頼性が大きく変わります。当事務所では、国土地理院の測地基準に準じたスタティック観測とネットワーク型RTK観測直接法を、現場環境に合わせて使い分け、再現性と精度の両立を実現しています。
スタティック観測 ― 「時間」で精度を収束させる手法
スタティック観測は、基準点と新点を長時間（通常1〜2時間）同時に観測する方法です。時間をかけて衛星信号を受信することで、電離層遅延・多重経路・大気誤差などのランダム成分を時間平均で打ち消し、真値に収束させていきます。
観測後は、複数の観測ベクトルを組み合わせて3次元厳密網平均計算（最小二乗法）を行い、各観測データ間の整合性や環閉合を統計的に評価します。この処理により、誤差の分散（σ²）を最小化した最確値（most probable value）が求められ、地理的な基準点との位置整合を高精度に確立できます。
この方式は時間を要しますが、筆界確認や登記測量のように精度と復元性が求められる業務では欠かせない手法です。
ネットワーク型RTK観測直接法 ― 「空間」で誤差を平衡化する手法
ネットワーク型RTK観測直接法は、基準点を固定し、複数の仮想基準点（電子基準点群）から補正情報を受信してリアルタイムに位置を求める観測方式です。
この手法では、時間ではなく空間的な冗長性を利用して誤差を抑制します。複数方向からの補正ベクトルを解析し、環閉合計算によって誤差を分散・平衡化させることで、短時間でも高精度な座標を取得できます。現地基準点との整合性を保っており現地復元性も担保されます。
登記多角点との違い ― 「整合性の確認」と「再現性の確保」の差
登記申請で使用される「登記多角点」は、5km以内の近傍基準点を単点で観測し、そのズレが許容値内かどうかを確認するだけにとどまります。この方式では、複数基準点を結んだ観測網の環閉合や誤差分散の解析は行われず、現地で新たに設置した基準点（物理杭）との関連性も統計的に担保されていません。
言い換えれば、登記多角点の「整合性」は差の数値確認だけの形式的なものであり、誤差を解析・平衡化する技術的裏づけを持たないというのが実情です。
当事務所の取り組み ― 「現地で再現できる測量」へのこだわり
当事務所では、観測環境や現場条件に応じて最適な基準点の設置計画を行い、スタティック観測・ネットワーク型RTK観測を組み合わせて現地復元性を重視した測量を実施しています。
必要に応じて3次元厳密網平均計算を行い、観測全体の整合性・残差・分散を解析。その結果、後日同一地点を再観測しても、座標差数mm以内の再現性を維持できる体制を整えています。
これは、単なる「登記上の整合」ではなく、現地で杭を再現できる“実測としての信頼性”を意味します。
まとめ
・スタティック観測：時間的冗長性で誤差を平均化し、真値に収束させる
・ネットワーク型RTK観測直接法：空間的冗長性で誤差を平衡化し、短時間で整合を得る
・登記多角点：単点観測による形式的整合にとどまり、現地復元性は保証されない
・当事務所：3次元厳密網平均計算により、現地復元性を重視した再現性のある測量を提供
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土地家屋調査士　疋田敬之事務所
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主な業務：登記測量・筆界確認・土地分筆・地目変更・3D点群測量・GNSS観測
国土地理院基準に準じた測量と、現地復元性を重視した高精度測量技術を提供しています。
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