地目変更登記にみる制度の壁と専門職の責任―農地から非農地への現況変更と、登記実務の実情
GNSS測量の普及により、現場でリアルタイムに座標が得られる**NW型RTK測量(ネットワーク型RTK測量)**が一般的になってきました。
電子基準点(ジェノバやアレス)から補正情報を受けて高精度な位置を求められるため、現場の効率化に大きく貢献しています。
しかし、現場での作業が速くなった一方で、「後処理」や「検証計算」を省いてしまうケースも見受けられます。
NW型RTKの直接法は、実はそうした“現場即決の測量”とは一線を画す手法です。
■ 「直接法」とは
NW型RTK測量の直接法とは、
現地で複数の既知点および新点をRTK観測し、その観測データをもとに後処理で厳密網平均計算を行い、点検計算で整合性を確認する方法です。
つまり、
現場では即時座標を取得しながらも、
後で数理的に網平均処理を行い、
基準点系と整合するかを定量的に検証する
この手順を経て初めて「直接法による測量成果」として成立します。
リアルタイム測位だけで終わらせるのではなく、観測精度を検証して確定する工程を含むのが本質です。
■ スタティック法との違い
スタティック法は、一定時間(通常1〜2時間)観測して位相データを後処理し、高精度な位置を求めます。
これに対してNW型RTKの直接法は、観測時間こそ短いものの、複数点の網構成と厳密平均処理によって同等レベルの整合精度を確保します。
つまり、
「スタティックほど時間はかけないが、精度は軽視しない」
というのが、直接法の立ち位置です。
■ 現地基準点がある場合の実務的運用
現地に既知の基準点がある場合、まずそれをNW型RTKで観測します。
→ 電子基準点系とのズレを把握し、観測網に取り込みます。
新点を複数設置し、既知点を含めた観測網を構成。
→ 新点同士も相互観測することで、閉合を取れる構成が理想です。
帰社後に厳密網平均計算を実施。
→ 各点の残差や標準偏差を確認し、異常値の有無を点検計算で検証。
整合確認後に成果点を確定。
→ ここで初めて「直接法による新点設置完了」となります。
■ 精度管理のポイント
観測時間は短くても、観測点数と網構成で信頼性を確保する。
点検計算を省略しない。 残差や閉合差の確認は成果の根拠となる。
基準点の座標系を統一する。 電子基準点と既知点の整合を明示する。
この一連の流れを怠ると、見かけ上は合っていても、ローカル基準点との位置ずれが後々問題になることがあります。
■ まとめ
NW型RTK測量の「直接法」は、
現場の迅速な観測と数理的な精度検証を組み合わせた、現代的で信頼性の高い測量手法です。
単なるリアルタイム測位ではなく、観測網を構成して厳密網平均と点検計算で整合を確認する。
このプロセスを踏むことで、境界測量や開発行為においても十分な精度を保証できます。
つまり「直接法」は、スピードを追うだけでなく、
測量の原則――“観測と検証”――を正しく両立させる方法なのです。



