地目変更登記という「仕上げ仕事」──転用後の土地に、法的な整合性を
はじめに:現況が宅地でも登記簿地目が「農地」のまま?
地方では、土地の利用状況がすでに宅地化しているにもかかわらず、登記簿地目が「田」「畑」などの農地のままになっている事例が多く見られます。固定資産税が宅地並みに課税されていることで、登記も宅地になっていると誤認されがちですが、登記簿地目は課税とは別制度であり、変更には正式な登記申請が必要です。
地目変更登記とは何か
地目変更登記は、土地の利用状況が変更された際に、登記簿上の地目を現況に合わせて変更する手続きです。登記簿地目が現況と一致していない場合、売買・相続・融資などの場面で、登記情報との整合性が求められることがあり、事前に整備しておくことで手続きが円滑になります。
実務的な整備の流れ:土地家屋調査士に依頼する場合(測量なし)
① 現況確認(QGIS・法第14条地図を活用)
測量は行わず、既存の法第14条地図・地積測量図・公図をベースに、QGIS等のGISツールで利用範囲を確認します。現地写真や利用状況(駐車場、資材置場など)を調査し、地目変更の根拠を整えます。
② 書類の整備と申請準備
登記申請書(土地家屋調査士が作成)、現況写真(利用状況の証拠)、委任状(所有者から調査士へ)などを準備します。
③ 登記申請と完了
土地家屋調査士が代理で法務局に地目変更登記を申請し、登記簿地目が変更されることで、現況と法的記録が一致します。
整備しておくことの意義
制度的整合性の確保:現況と登記情報が一致することで、行政・金融・契約の場面での確認がスムーズになります。
将来的な手続きの簡略化:売買・相続・融資などの際に、登記情報が整っていることで説明や確認が容易になります。
専門的な整備による信頼性:制度理解と現況把握に基づいた申請により、記録としての登記の質が保たれます。
法務局 地目変更申請
おわりに
地目変更登記は、土地の利用実態と法的記録を一致させるための基本的な整備行為です。現場の実務と制度の構造を熟知した専門家が、QGISや法第14条地図を活用して現況確認を行い、制度的整合性を丁寧に整えることは、地域の登記精度と市民理解の向上に大きく貢献します。



