「固定資産税を払っているから登記されている」は本当?

疋田敬之

疋田敬之

テーマ:土地 建物 測量 相続

未登記建物と附属建物だけが残るケースの対応
「固定資産税を払っているから、うちの建物は登記されているはず」——そう思っている方は少なくありません。ですが、これは制度上の誤解です。固定資産税は市町村が課税台帳に基づいて課税するものであり、登記簿とは別の記録です。未登記の建物であっても、現地調査や申告により課税対象とされることがあります。

つまり、課税されていることは登記されていることの証明にはなりません。登記簿に建物が記録されていなければ、売却や担保設定はもちろん、相続登記にも進めません。特に2024年4月に施行された相続登記の義務化(不動産登記法第76条の2)により、所有権を取得した方は3年以内に登記を申請しなければならないと定められています。違反した場合には、10万円以下の過料が科される可能性があります。

建物の登記にはまず「表題登記」が必要です。これは不動産登記法第47条により、建物の所有者が建築完了の日から1か月以内に申請しなければならないとされています。申請できるのは、所有権を有する方、またはその所有権を取得した方(転得者)です。不動産登記規則第60条では、申請時に所有権を証する情報の提供が求められています。
水戸市など地方では、先代・先々代の建物が未登記のまま残っているケースも多く見られます。中には、主たる建物が滅失し、附属建物だけが現地に残っているという事例もあります。登記簿上には主たる建物と附属建物が一体として記録されているため、現況と登記内容に不一致が生じている状態です。

このような場合には、主たる建物の滅失を表題部変更登記によって反映する必要があります。附属建物が建物としての要件(屋根・周壁・土地への定着・用途性)を満たしていれば、主たる建物として再構成することも可能です。満たしていない場合には、建物滅失登記の申請を検討することになります。

申請人は、登記簿上の建物全体の所有権者、またはその所有権を取得した方である必要があります。附属建物のみを根拠に所有権を主張することはできません。所有権証明書としては、建築確認通知書、固定資産税課税台帳、売買契約書、相続関係説明図などが用いられます。

未登記建物の表題登記義務や附属建物の登記漏れ、相続登記義務化への対応は、登記実務において見過ごされがちですが、放置すれば法的責任や資産価値の毀損につながります。土地家屋調査士として、現況と登記簿の整合を図ることは、地域の記録を守る大切な役割でもあります。

登記されていると思っていた建物が、実は未登記だった——そんな事態を防ぐためにも、今一度、登記簿と現況を照らし合わせて確認してみてはいかがでしょうか。
未登記建物の表題登記や附属建物の扱い、相続登記義務化への対応などでお困りの方は、土地家屋調査士疋田敬之事務所までお気軽にご相談ください。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

疋田敬之
専門家

疋田敬之(土地家屋調査士)

土地家屋調査士 疋田敬之事務所

衛星及び電子基準点を使用したネットワーク型RTK-GNSS測量で引照点観測をした世界座標による地積測量図を作成することにより何世代を経過しても安心して境界杭を維持管理できるデータを提供します

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

境界確定測量・土地分筆登記・建物表題登記の専門家

疋田敬之プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼