家族に残す“安心”――土地の境界確認という備え
私たち土地家屋調査士の業務は、現地での測量(外業)と、事務所での計算・図面作成・申請処理(内業)に大きく分かれています。これまで、外業と内業は時間と場所を隔てて進めるのが常識でした。しかし、近年のDX(デジタルトランスフォーメーション)技術の進展により、現場にいながら事務所PCの内業処理を確認・操作できる環境が整いつつあります。
Splashtopによる遠隔操作の実用性
私自身、現場での測量中に事務所PCへSplashtopを使って接続し、Trend-OneやTrend-Pointの計算処理や図面確認を行う機会が増えています。この方法は、単なる「便利なツール」ではなく、業務の質と効率を両立させる実務DXの一環として非常に有効です。
Splashtopは、接続先PCの画面と入力をそのまま転送する仕組みであり、アプリケーション側から「外部操作」として制限をかけることができません。つまり、計算処理や図面編集は、現地からでも通常通り行えるのです。
実務上の利点
• 現場での即時確認
測量中に座標計算や図面の整合性を確認できるため、誤測や再訪のリスクを大幅に低減できます。
• 作業の中断を最小化
事務所に戻ることなく、現場での判断と処理が一気通貫で行えるため、時間のロスが減ります。
• 関係者対応の柔軟化
境界立会中に図面や資料を提示・修正できることで、合意形成がスムーズになります。
• 情報の即時共有
クラウド連携により、事務所スタッフとのリアルタイムな情報共有が可能となり、チーム全体の連携力が向上します。
迅速化の利点と慎重な運用の必要性
ただし、すべてのケースで「迅速化=最適化」とは限りません。実務上、以下のような場面では慎重な対応が求められます。
• 境界立会など、関係者の合意形成が必要な場面
その場で図面修正が可能でも、関係者の理解や納得を得るには時間をかけた説明が不可欠です。
• 法的判断や登記に関わる処理
リモートでの確認は便利ですが、最終的な判断は現地の状況や書面との照合を経て慎重に行う必要があります。
• 通信環境が不安定な現場
リモート操作が可能でも、通信が途切れることで誤操作やデータ損失のリスクが生じる場合があります。
• 複雑な点群処理やBIM連携
高負荷な処理は現地での即時確認に向かないこともあり、事務所での安定した環境下での検証が望ましいケースもあります。
地域業務におけるDXの展望
私のように、地域に根ざした測量業務を行う者にとって、こうしたDX的な取り組みは「効率化」だけでなく「信頼性の強化」にも直結します。特に、境界明示や建物配置検討など、現場での判断が重要な場面では、リモート操作による内業確認が大きな武器となります。
今後は、点群データやBIMモデルの遠隔操作、AIによる自動解析、クラウド型業務管理との統合など、さらに高度なDXが進むことで、外業と内業の境界はますます曖昧になり、「どこでも業務が完結する」時代が到来するでしょう。
このような技術は、単なる効率化ではなく、地域に根ざした業務の信頼性と柔軟性を高める手段です。DXは都市部だけのものではなく、地方の現場にも確実に浸透しつつあります。私自身、今後もこうした技術を積極的に取り入れながら、地域に貢献できる測量業務のあり方を模索していきたいと考えています。



