建物が完成したら──表題登記という「義務の履行」

疋田敬之

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テーマ:土地 建物 測量 相続

建物が完成すると、「これで工事は終わった」と感じる方も多いかもしれません。しかし、建物の完成は、法的には「登記の始まり」を意味します。その第一歩が「建物表題登記」です。これは、建物の存在を公的に記録するための登記であり、所有者には不動産登記法に基づく申請義務が課されています。
登記義務の根拠と行政罰の規定
不動産登記法第47条では、建物の所有者に対して次のように定められています。

この義務に違反した場合、同法第164条第1項第1号により、次のように規定されています。

つまり、建物が完成したら、所有者は登記申請という法的義務を履行しなければならず、正当な理由なく、これを怠った場合には過料に処されることが法律上明示されています。

添付書類──登記の信頼性を支える資料
表題登記の申請には、建物の完成と構造を示すための資料が必要です。実務では、以下のような書類を整えるのが一般的です。
• 建築確認済証
建築計画が法令に適合していることを示す資料。確認申請が不要な建物では添付を省略することもあります。
• 検査済証
設計通りに施工されたことを示す完了検査の証明。未交付の場合は、他の資料で完成の状況を補足することがあります。
• 工事完了引渡証明書
建物が完成し、施主に引き渡されたことを記録する書類。実務では、完成の事実を示す資料として広く用いられています。
• 住民票(所有者)
登記申請者の本人確認資料として使用。マイナンバーの記載がないものを用意します。
• 建物図面・各階平面図
土地家屋調査士が作成する図面で、登記簿に記載される建物の形状や構造を示します。
• 委任状
代理申請を行う場合に必要となる書類。所有者からの委任を受けた土地家屋調査士が添付します。
これらの書類は、登記の形式を整えるだけでなく、建物の完成と所有者の意思を記録する根拠資料としての役割を担っています。

実務に根ざした配慮
登記申請においては、法令の要件を満たすことはもちろんですが、施主との信頼関係や登記官との円滑なやり取りを意識した書類整備が重要です。とくに地域密着型の業務では、書類の意味を丁寧に説明し、施主の不安を取り除くことが、登記実務の質を高めることにつながります。

まとめ──登記は「義務の履行」であり、信頼の土台
建物表題登記は、所有者に課された法的義務の履行であり、建物の存在を社会的に証明するための手続きです。その申請に必要な添付書類は、登記の信頼性を支える資料は、実務の現場規定されています。土地家屋調査士として、こうした登記の意味を正しく伝え、施主の安心につなげることが、大事であると考えています。

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疋田敬之(土地家屋調査士)

土地家屋調査士 疋田敬之事務所

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