NW型RTK測量における「直接法」 ― 現地観測と厳密網平均による信頼性確保 ―
――登記申請の出発点と、調査士としての責任
未登記建物の登記申請において、最初にして最も重要な確認事項は「原始取得者が誰か」という点です。
これは単なる形式的な確認ではなく、登記制度の根幹に関わる要件であり、申請の可否を左右する出発点です。
建物が未登記のまま長年放置され、数世代にわたって相続が繰り返されてきたケースでは、原始取得者の特定は容易ではありません。
書面による証拠はすでに散逸していることが多く、確認には過去の登記記録、相続関係書類、そして何より「丁寧な聞き取り」が不可欠となります。
依頼者の中には、「どうして、そんなにしつこく訊かれるのだろう」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、これは登記申請の正当性を担保するための重要な場面です。
原始取得者の特定が不確かである場合、申請代理人として登記を進めることはできません。
協力が得られず、説明に疑義が残るような場合には、代理申請を断念するしかありません。
また、たとえば地図と現地の境界の関係性に食い違いがあり、説明に合理性がないと判断される場合も、申請内容に疑義があるとみなされます。
登記官は実地調査の権限を有しており、必要に応じて現地確認を行います。
その結果、申請内容に合理性が欠けていると判断されれば、虚偽申請とみなされる可能性もあります。
過去には、こうした疑義のあるケースで「本人申請で出された」という話を耳にしたこともあります。
しかし、そのような申請は制度上きわめて危うく、登記官の判断によっては却下されるだけでなく、申請人自身が責任を問われることにもなりかねません。
私は、土地家屋調査士として、制度の正当性と依頼者の利益の両方を守る立場にあります。
だからこそ、原始取得者の特定に疑義がある場合には、代理申請を行わないという判断が必要です。
それは、依頼者を守るための判断であり、登記制度の信頼を守るための責任でもあります。
建物表題登記、建物表題変更登記など申請義務のある登記に、1ヶ月以内に登記申請義務が課されている事からも、証拠の劣化が起きるまえの速やかな登記が重要な事だと理解できます。



