未登記建物の原始取得者を特定するということ
はじめに
現地には何も建っていないのに、登記簿を確認すると「取り壊されたはずの建物がまだ登記されている」――そんな場面に出くわすことがあります。
これは、過去に解体された建物の滅失登記が未了のまま放置されていることによって起こる、比較的よくある事例です。
実際にあったケース:融資打ち合わせ中に登記の指摘
あるお客様が、住宅の新築計画を進めており、金融機関との融資相談も順調に進んでいました。
ところが、融資担当者との打ち合わせの中で、登記簿に「現地には存在しないはずの旧建物」が残っていることが判明。
金融機関から「滅失登記を済ませていただきたい」と指摘され、施主様は驚かれました。
実際には数年前に解体済みだった建物ですが、滅失登記が未申請のままだったため、登記簿上では“存在している”状態のまま。
金融機関としては、担保評価の前提として登記内容の整合性が必要であり、滅失登記の完了は融資条件として当然であると考えられます。
滅失登記は法的義務です
不動産登記法では、建物が滅失した場合、1か月以内に滅失登記を申請する義務があります。
この手続きが未了のままでは、登記簿上に「存在しない建物」が残り続けることになり、将来的な売却・相続・融資などの場面で、登記内容の整理を求められることがあります。
滅失登記の申請に向けた一般的な流れ
滅失登記を行う際には、まず法務局で登記簿の記載内容を確認し、現地の状況と照合します。
そのうえで、申請に必要な添付書面を整え、登記申請を行うという流れになります。
添付書面の内容は、建物の状況や申請者の立場によって異なるため、事前の確認が重要です。
補足:現況確認における3Dスキャナーの活用
現地の状況を客観的に把握するために、3Dスキャナーによる現地解析を活用することがあります。
現在の敷地の利用状況を点群データとして記録することで、登記簿に残る滅失建物との関係を整理しやすくなります。
とくに、現況写真だけでは判断が難しい場合や、関係者への説明が必要な場面で、技術的な裏付けとして有効です。
おわりに
建物が滅失した後も、登記簿にはその記録が残ります。
その記録を法的に整えることは、単なる事務手続きではなく、国民に課された義務の履行であり、制度の信頼性を支える重要な行為です。
現況と登記の整合性に関して不明な点がある場合や、金融機関・関係者から説明を求められた際には、制度の解釈や対応方法についてのご相談も承っております。どうぞお気軽にご相談ください。



