点字用紙で作るブックカバー 文字の温かみ

髙橋空晃

髙橋空晃

テーマ:日常において

ペン字を始めたばかりの初心者や初級者の方から、「練習で間違えた紙を捨てるのがもったいない」「なんだか上手く書けなくて心が折れそう」というお声をよく伺います。実は、そうして書き損じたり役目を終えたりした紙を、古くから「反古紙(ほごし)」と呼びます。



今回は、役割を終えた「点字用紙」を美しいブックカバーへ生まれ変わらせる活動と、そこから学ぶ美文字の上達のヒントをお伝えします。

「書き損じ」はあなたが前に進んだ大切なあしあと


ペン字の練習を始めたばかりの頃は、お手本通りに書けなくて「また間違えてしまった」と、書いた紙をすぐに丸めて捨てたくなってしまうかもしれません。しかし、その目の前にある書き損じた紙こそが、あなたが「もっときれいな字を書きたい」「大切な人に想いを届けたい」と願い、指先を丁寧に動かした時間そのものです。

江戸の昔、現代よりも紙がずっと貴重で高価だった時代には、こうした「反古紙」は決してそのまま捨てられることはありませんでした。文字がびっしり書かれた紙を水で洗って墨を落とし、再生紙として何度も使ったり、襖(ふすま)や屏風(びょうぶ)の下張り(見えない内側の補強)として再利用したりしていたのです。古い家具を修理するときに、中から当時の人々の手書きの手紙が出てくることもあり、歴史のタイムカプセルのようだと話題になることもあります。先人たちは、文字が書かれた紙を最後まで愛おしみ、大切に使い切る豊かな知恵を持っていました。

現代の私たちは、つい不要になった物をすぐに「ゴミ」として扱ってしまいがちですが、紙や文字、資源を大切にする心を持ち続けたいものです。

役割を終えた点字用紙に、筆ペンと顔料で新しい命を吹き込む


私は、この「反古紙の再利用」という先人の智慧を一歩進めて、役割を終えた「点字用紙」を活用した【ブックカバー制作】にチャレンジしています。

点字用紙は、視覚障害者の方が指先で触れて読むために、非常に厚みがあり、上質で破れにくい頑丈な紙が使われています。役目を終えた点字用紙の表面には、ポコポコとした独特の凹凸が残っており、手に持つと不思議と心が落ち着く優しい温かみがあります。本当に不思議な安らぎを感じることができます。そのまま捨てられてしまうのはあまりにももったいない、この素晴らしい素材に筆を用いて新しい命を吹き込みたいと考えたのがきっかけです。

このブックカバーのデザイン面では、「筆ペン」「墨」「顔料」「消しゴムハンコ」を使って文字や意匠を施しています。

一般的なボールペンや万年筆では、点字の凹凸に引っかかってしまい、きれいに墨がのりません。しかし、穂先が柔らかい筆ペンや、発色が良く定着性の高い顔料を使用することで、点字用紙のポコポコとした立体的な質感と、手書き文字のなめらかな曲線が見事に調和します。

顔料が乾いたあとの色の深みと、点字の凹凸の陰影が織りなすデザインは、世界にふたつとない唯一無二の風合いに仕上がります。現在は私ひとりで一枚ずつ手作りしていますが、ゆくゆくは教室に通ってくださる生徒の皆さんとも一緒に制作に取り組んでいきたいと考えています。

自分がきれいに書いた文字や描いたデザインが、日常生活で使える素敵なブックカバーという作品になる喜びは、ペン字の練習を続ける上での大きなモチベーションになるはずです。文字を愛するペン字教室だからこそ、役目を終えた紙にもう一度命を吹き込み、本を愛する方へ届ける。
そんなサステナブルで温かい循環を、この手作りのブックカバーを通して、生徒の皆さんと共に優しく広げていけたら嬉しく思っています。

道具選びと「点」を意識することが美文字への第一歩


点字用紙が持つ「ポコポコとした点」の並びを見つめていると、実はペン字の上達に欠欠かせない、ある重要な共通点に気づかされます。それは、文字をきれいに書くためには「点や線の打ち始め、打ち終わり」をいかに意識するか、ということです。

ペン字を始めたばかりの初級者の方に多い書き癖として、ペンの先を紙に滑らせるように、サラサラと急いで書いてしまうことが挙げられます。これでは、文字の輪郭がぼやけてしまい、どこか締まりのない印象になってしまいます。

美文字に近づくための第一歩は、一画一画の「始筆(しひつ:書き始め)」と「終筆(しゅうひつ:書き終わり)」で、ペン先を紙に優しく「トントン」と置くように意識することです。
• ひらがなの「点」:「あ」や「う」にある点は、ただ丸く打つのではなく、斜め45度に小さく斜線を引くようにペンを止めます。
• 漢字の「接筆」:「口」や「国」などの四角いパーツを書くときは、線と線が交わる角(かど)をあえて少し突き出すようにきっちり止めると、文字全体がキリッと引き締まります。
点字が一つひとつ正確な位置に打ち込まれているからこそ意味を成すように、私たちが普段書く文字も、小さな点や線の「とめ・はね」が正確に配置されることで、初めて美しいバランスが生まれます。

また、先ほどブックカバーの制作で筆ペンを使っているとお話ししましたが、ペン字初心者の方にも、日常の練習に筆ペンを取り入れることをおすすめしています。ボールペンに比べて、筆ペンは指先の微妙な力加減(筆圧)がダイレクトに紙に伝わります。「ここは優しく力を抜く」「ここはグッと止める」というメリハリを体感することで、普通のボールペンを持ったときにも、驚くほど文字の線に強弱がつき、大人っぽいこなれた美文字が書けるようになります。

少人数制の対面レッスンで「書のある暮らし」を始めませんか


手書きの文字には、書いた人の人柄や、その時の心の状態がそのまま表れます。だからこそ、上手く書けない日があっても焦る必要はありません。その日のあなたの呼吸や、指先の丁寧な動きがすべて練習用紙(反古紙)に刻まれており、それ自体が愛おしい成長のステップなのです。

当教室では、一人ひとりの書き癖や目標にじっくり寄り添えるよう、各レッスンの定員を3名までとした徹底的な少人数制を取り入れています。ただお手本をなぞるだけの練習ではなく、「なぜこの形になると美しいのか」という理由を、論理的なルールとコツを交えてわかりやすくお伝えしています。
• 「相応の年齢になったので、のし袋や芳名帳に自分の名前をきれいに書きたい」
• 「子どもの連絡帳や、仕事でのちょっとしたメモ書きを美しく仕上げたい」
• 「デジタルな時代だからこそ、手書きの時間を作って心を整えたい」
そんな初心者の方のご要望に合わせた、オーダーメイドのレッスンが可能です。

また、今回ご紹介した点字用紙のブックカバーのように、文字をただきれいに書くだけでなく、完成した作品を日常のライフスタイルに取り入れて彩りを楽しむ方法もご提案しています。



芦屋教室(JR芦屋駅から徒歩約5分)と、神戸市東灘区の本山教室(阪神青木駅から徒歩約10分)にて、個別のお悩みにお答えする「1回完結のお手軽体験レッスン」を随時開催しています。まずはご自身の名前をきれいに書くコツから、一緒に体験してみませんか。

レッスンの詳細や日々の活動については、ぜひ神戸うはらペン字教室の公式ホームページ、インスタをご覧ください。役目を終えた紙を大切にするように、あなた自身の手から生まれる文字を、もっと愛せるようになる第一歩を応援しています。どうぞお気軽にご相談ください

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髙橋空晃
専門家

髙橋空晃(ペン字講師)

神戸うはらペン字教室

少人数制のレッスンでわかりやすく指導。美文字のコツはコラムで紹介。単に字を整えるだけでなく、字を書く楽しみを知っていただき、日常生活に作品を取り入れた彩りある生活を提案しています。

髙橋空晃プロは神戸新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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