②【丸投げマンションの末路…これ、ホンマにある話】

「うちのマンション、今のままで大丈夫なんやろか…。」最近、こういうお声を聞く機会が増えてきました。きっかけはほぼ決まっていて、区分所有法の改正です。
2026年4月1日から改正区分所有法が施行され、マンションの総会の決め方そのものが変わりました。お住まいの方にとっては、決して他人事ではありません。
それでも、私のところにいらっしゃる管理組合の理事さんの多くが「正直、何がどう変わったのか、よう分からん」とおっしゃいます。総会の案内に難しい文言が並んでいても、つい後回しにしてしまう。気持ちはよく分かります。しかしここを知らずに放っておくと、いざというときに「決めたいことが決められへん」という事態になりかねません。
私は西宮市でマンション管理士事務所を営み、長期修繕計画づくりや総会での合意形成をお手伝いしています。今日はこの法改正について、専門用語をできるだけかみ砕いて、住人の皆さんが「で、結局うちは何をしたらええの?」が分かるようにお話ししたいと思います。
何が変わった? 総会の決め方が大きく見直し
今回の改正で一番大きいのは「総会での決議の数え方」が変わったことです。
これまで、管理規約の変更や大規模修繕といった重要な決定(特別決議といいます)は、所在不明の方も含めた全区分所有者の5分の4以上の賛成が必要でした(出典:国土交通省「区分所有法制の改正に関する要綱案」)。
ところが改正後は、決議の母数が「総会に出席した区分所有者」に変わります。つまり、委任状も出さずに総会を欠席した方は、そもそも数える対象から外れることになるんです。
特別決議とは、管理規約の変更や共用部分の大きな変更など、マンションの重要事項を決めるための、特に賛成が多く必要な決議のことです。これまで「無関心な住人が多くて、何を決めるにも票が足りひん」と悩んでいた管理組合にとっては、合意形成がしやすくなる方向の改正といえます。
建て替えについても、これまでは全員の5分の4以上という非常に高いハードルでしたが、耐震性が不足している場合など一定の条件を満たせば4分の3に緩和されました(出典:国土交通省「改正区分所有法の概要」、2026年4月施行)。
所在が分からない所有者を、裁判所の認定を経て決議の母数から除外できる仕組みも新しく設けられています。
住人にとっての本当の影響とは?
「決めやすくなったなら、ええことやん」と思われるかもしれません。たしかにその通りです。ただ、私が現場でお伝えしているのは、もう一つの側面です。
決議の母数が出席者になるということは、裏を返せば「総会に出ない人は、自分の住まいの将来に意見を反映できなくなる」ということでもあります。私のところにご相談にいらっしゃる方の中にも、「役員は持ち回りやし、総会も委任状で済ませてきた」という方が少なくありません。
これまではそれでも全体の合意が必要やったので歯止めがありましたが、これからは出席した人たちだけで物事が進んでいきます。
もう一点、見落とされがちなのが管理規約との関係です。法律は2026年4月1日から全マンションに自動で適用されますが、各マンションの管理規約は、総会で決議して改正しないと中身が古いままなんです(出典:国土交通省、2025年10月17日「マンション標準管理規約」改正公表)。
法律と規約がちぐはぐな状態だと、いざ総会を開いても進行が混乱しかねません。
直近の総会で対応すべきこと
ではうちのマンションは具体的に何をすればいいのか?答えはシンプルで、直近の総会で「管理規約の見直し」を議題に上げることです。
ここで一つ、時期によって手続きが変わる点に注意が必要です。2026年3月31日までに総会の招集手続きを始める場合は、これまでの規約に基づいて決議し「2026年4月1日から効力を生じる」旨をあわせて決めておく方法がとられます。
一方、4月1日以降に招集手続きを始める場合は、改正後の新しい決議要件で決めていくことになります(出典:国土交通省「標準管理規約改正を踏まえた手続の留意点」、2025年)。
つまり今まさに、全国のマンションで管理規約の見直しが一斉に進んでいる時期なんです。総会は年に一度というマンションが多いですから、「次の総会まで様子を見よう」と先送りすると、対応が一年遅れてしまうこともあります。だからこそ、直近の総会での議題化が大切になります。
よくある失敗は「知らずに放置」
正直に申し上げると、いちばん多い失敗は「知らないまま、何もしないこと」です。
法改正の通知は届いていても、内容が難しいので理事会で深く議論されず、そのまま次の代の役員に引き継がれていく。気づいたときには規約が改正法と食い違っていて、総会の決議が無効になってしまう、といったリスクが現実にあります。
実際、2026年4月1日以降は、改正法に抵触する規約は効力を失うと指摘されています(出典:ダイヤモンド・オンライン、2026年)。
私が長期修繕計画づくりでいつもお伝えしているのは、「マンションは、家計簿を他人任せにしたらあかん」ということです。これは規約の見直しでもまったく同じです。管理会社から渡された案をそのまま通すのではなく、住人と理事が中身を理解したうえで判断する。その姿勢があるかどうかが、十年後・二十年後のマンションの価値を左右すると私は思っています。
難しそうに見える法改正ですが、要点を押さえれば、対応そのものは決して複雑ではありません。まずは「うちの規約は改正法に合っているか」を確認するところからで十分です。
まとめ
区分所有法の改正は、正しく理解して直近の総会で一歩を踏み出せば、決して恐れる必要はないと私は思っています。住まいの未来を自分たちの手で決める、その良い機会と捉えていただきたいです。
・改正区分所有法に管理規約が合っているか確認したい管理組合の方
・直近の総会で規約見直しをどう議題化すればよいか分からない理事の方
・総会での説明や合意形成を専門家に支えてほしい方
このような方には、中立の立場で現地調査から総会でのご説明までお手伝いします。宇野俊明マンション管理士事務所では、長期修繕計画づくりと合わせたご相談も承っています。まずはお気軽にご相談ください。


