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歩けるとは

坂部智子

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テーマ:仕事のはなし

素朴な疑問。
「歩ける」とは、いったいどのような状態をいうのだろうか。
何を考えることもなく、人や自転車や車をよけながら、
すたすたずんずん、あるいは小走りぐらいでも足を運べる状態・・・
だけでなく、加齢や様々な要因で、上述と比べると足元がおぼつかないようでも、「歩ける」とは、言う。

何を言いたいか、というと、
「車いす」を利用する理由というのは、まあ基本的には、「歩けない」から。
しかしこの「歩けない」というのも、同じぐらいにレベルは様々なのだ。

福祉用具を利用する目的で大切なのは、出来ないことを出来るように・・・だけでなく、
その人の、日常生活の“質”を向上させる・・・・ということ。
“生活の質”などというと、また小難しい話のようだけれど、
要は、その人にとって大切な日常のあれこれが、きちんと優先されている暮らし・・・とでも言おうか。

具体的な例として、
下肢筋力の低下で、一歩で進める距離が10センチの人がいる。
この人が10m先に行きたい場合。
パターンAは、何が何でも自分で歩きたい。「歩くこと」が優先事項なら、どれだけ時間がかかっても、自分で歩いてもらうだろう。転倒のリスクを減らすコトを多少は配慮しつつ。

しかし、パターンBは、10m先の着いたトコに何か目的がある場合。
この10mは、どうやって移動してもかまわない。車いすであろうが、なんでも。
着いた時にくたびれ果てていて、もう何をする気力も残っていないなら、意味がないから。

Aなのか、Bなのかは、人によって違うし、同じ人でも時と場合によって変わる。
変わって当たり前。

なのになんで福祉用具の導入目的とかいうとき、「歩く」と言えばずっと「歩くんでしょ!」やし、「歩かなかったら、歩けなくなる」とか(例のリハビリの罠…というやつ)、話が一面的になるのだろうか…

いろいろあるのだ。
正解はない。
だから、何より、人とは比べない。

ご本人も、関わる周りの人達も、いろいろあっていいと受け止める、そんな「介護」だったらなあ

必要なのは、素直な、正直な対話。
シンプル。
だからこそ、なかなか辿り着けないのだともわかる。
わかりすぎている。
でも、誰にも変わってはもらえないコト。当事者が向き合うコトでしか、辿り着けないトコロ。

相談を聴いて、聴いて、聴く中で、
正直な、素直な想いがポロっとでも出てきたらいいなあ…
いつも そう思ってる。



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