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家内に言葉を

坂部智子

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テーマ:エピソード集

本日訪問のAさん(86歳、男性、要介護4)
起き上がり、立ち上がりが困難ということで、
電動ベッドをレンタルされており、定期モニタリングに伺った。
お身体が不自由になっているのは、頸椎かららしく、2度手術を行ったとのこと。
その時のお話。

手術を終えて部屋に戻り、手足もスムーズに動くようになり、
すっかり喜んでいたその日の夜中。
首から下に違和感を覚え、あれっという間に、全く動かなくなった。
助けを呼ぼうにもナースコールを押すことができない。
口は動くので、叫んだけど、とても届かない。
同じ部屋の人を起こそうとしても、夜中で誰も起きない・・・

少しずつ意識も遠のきかけて、
ああもう、このまま死ぬのか・・・と、思ったという。
したいこともしてきた。
どちらかというと、やりたい放題やってきたというところ。
このまま死んでも仕方ないなあ・・・と一瞬あきらめたけれど、
家内にせめて「長いことすまなんだなぁ」ぐらいの言葉を残したいと強く思ったという。
精一杯の声で、必死で部屋の人に呼び掛けて、
ようやく目覚めてくれた人がナースコールを押してくれ、
駆け付けた看護師さんが、大慌てで医師を呼び、すぐに手術~となって、
なんとか一命を取り留めた・・・という。

お話を聴いてすっかり感動している私に、
奥さんは、「まあホンマ 昔っから口は元気やから~」と
しれっと笑ってはる・・・

しかし、たとえ、多少の誇張やら演出が入っているとしても、
遠のく意識の中で、奥さんのコトを想ったというのは、事実だろう。
今も、なるべく迷惑をかけないようにと、
手作りの「青竹踏み」やら一生懸命体を動かすことに取り組んではる。

なんか、いいなぁ~

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