隣が火事
Aさん(86歳女性、要介護1、一人暮らし)の親類の方より、
住宅改修工事の依頼があった。
階段に手すりをつけてほしいそう。
大邸宅といっていいようなお家。
お姑さんとご主人をご自宅で看取ったらしく、
バリアフリー仕様になっており、ホームエレベーターもついている。
夏に庭で転倒し、大腿骨を骨折したAさんは、
今は、ご主人が使用していた電動ベッドを1階に下し、そこで生活されている。
秋に退院し、自宅での生活にも慣れてきたこの頃、
親類の方が訪ねると、Aさんは二階から階段で降りてきたそう。
2階に元々の自分の部屋があるので、しょっちゅう二階へ上がり下りしているとのこと。
「なんでエレベーターを使わへんのっ???!!!」
びっくりやら、心配やらで きくと、
「一人やのに、なんやわざわざエレベーター使うのは、たいそうやし、もったいない・・・」
と、Aさんはケロっと答えたそう。
手すりのついていない階段を、一段一段、ゆっくり壁をつたって上がり下りしている。
このまま階段を使って、またこけたらえらいことや・・・と、
見かねた親類の方から、階段手すり(左右両方)の依頼・・・となったのだ。
せっかくエレベーターがあるのに・・・と、何度もぼやいてはった・・・・
「便利」や「楽」、「安全」が、必ずしも“使いよい”ことにはならないし
その人の“暮らし”に、添うものになっている・・・とは限らない。
もしも、予算や住宅事情が適ってホームエレベーターをつけられるものなら、つけたい!!
・・・と切実に望んではるお家がたくさんあるのは現実。
しかし、Aさんには、よろめきながらでも、自分で上がり下りする階段が
今は何より必要なものなのだ。