防火地域に家を建てる
昔の戸建て住宅というと平屋の家というのも結構あったように思いますが、近年平屋の住宅はめっきり減ったと思います。
しかし、ネットなどをみていると「手軽な家」として、平屋をすすめているサイトも結構目に付きます。
今回は、最近少し再注目されている平屋について、「本当にお手軽な住宅なのか」「そもそも安く建てられるのか」について書いていきます。
平屋は安いのか
「簡単な平屋で安い家を建てたい」という人がたまにいますが、平屋は本当に安いのでしょうか?
平屋は安いのか、今回同じような床面積の2軒で比較していきます。
サンプル住宅を考えます
サンプル住宅として、標準的な戸建て住宅のサイズを想定します。
戸建て住宅の平均的な床面積ですが、住宅支援機構『2020年フラット35利用者調査』では、注文住宅における床面積の全国平均は124.4㎡、つまり約38坪だそうです。
今回は比較対象として、図の2つの家を考えていきます。
床面積は、どちらも「注文住宅の全国平均」とほぼ同じ38坪程度。
2階建ての方が少し広いのは、階段部分が必要だから。その分を少し増やしています。
平屋が少し横長なのは、真四角の平屋にするとまったく陽があたらない部屋が多数出来るのを防ぐためです。
この2軒であれば、使える部屋の広さで考えても、どちらも全国平均程度になると思います。
工事費:基礎工事
この2軒の基礎工事面積を比較すると、当然ながら基礎の面積は約半分となります。
基礎工事の単価は、木造住宅の場合1平方メートルあたり2万円程度と考えると、平屋と2階建てでは100万円くらい工事費が違うと考えられます。
工事費:足場
平屋でも足場は必要です。
足場が必要な面積を比較すると、これは2階建の方が少し多いですね。
足場工事は2階建の方が少し高いでしょう。
工事費:躯体工事
この項目は構造計算に依るので一概にはいえませんが、合理的な設計を行った場合でも2階建の方が少し高くなると思われます。
2階を支える柱や壁が必要ですので、当然ですね。
工事費:外部に接する部分の断熱
断熱が必要なのは外部に面する部分、つまりすべての壁と床、天井です。
この面積を比較すると、2階建の方が少し安くなりそうです。
工事費:屋根工事
屋根については、屋根の勾配をよくある4寸勾配、軒先を家の周囲すべてに50cm出すという想定で計算しました。
この想定で屋根を比較すると、2階建は平屋の約半分になります。
当然、屋根の工事費は2階建ての方がかなり安くなると思います。
平屋が安いわけではない
今までの比較を読んで貰えるとわかりますが、この計算だと同じ面積なら平屋より2階建ての方が安そうですね。
・・・ここまで計算しておいていうのもなんですが、一般的に
建築業界では平屋は高くつくというのは、ほぼ常識的に言われています。
いくつもの家を手がけていると「平屋は安くない」ことは、積算してみなくても経験上わかっているのです。
安くなくても平屋がオススメできる場合
「平屋は安くならない」ことは上記でわかっていただけたかと思いますが、かといって平屋の家を建てるのが駄目という訳ではありません。
平屋が向いているという家づくりも、もちろんあります。
たとえば以下のような場合です。
ものすごく土地が広い
土地が非常に広く、陽当たりや隣地からの視線も気にならないような場所であれば、平屋の家も良いかもしれません。
構造的に無理をしなければ間取りや天井高などが比較的自由にとれますので、開放感のある家が建てられると思います。
ただ、大きな平屋の家を建てた場合、室内面積にくらべて外部に接する面積(外皮面積)が大きくなりますので、省エネ的には不利になります。
その点は御了解ください。
規模の小さい家
家の床面積の小さな家であれば平屋も良いかもしれません。
延べ床面積が30坪以下くらいで広い土地があれば、バランスの良い家が出来そうです。
間取りとしては2LDK程度、2人くらいの家族で住む家でしょうか。
2階が不要
高齢者、介護などで2階が必要ない家というのもありますね。
終の棲家のような使い方であれば、コンパクトでシンプルな平屋住宅も良いですね。
今まで書いてきたとおり平屋の戸建て住宅を否定するわけではありませんが「平屋は安いわけではない(むしろ割高である)」ということは覚えておいてほしいと思います。
施工価格が高いか安いかの問題ではなく「2階建、3階建は必要ない」という人が建てる家が、今の平屋住宅だと思います。