LED照明で変わったこと
近年、室内の換気が健康面で重要になってきています。
今回は換気、つまり室内の「空気の入れ換え」について書いていきます。
換気については建築の法律により様々な規定が定められています。
まず、すべての基本となる【建築基準法】による窓の規定について。
建築基準法 第28条では、
「居室には原則として、換気のための窓を設け、その換気に有効な部分は、居室の床面積の1/20以上としなければならない」
と書かれています。
つまり、人がいる空間においては、この「窓による換気」が基本となります。
その必要な窓のサイズは床面積の1/20以上。
たとえば、8畳くらいの部屋に引き違い窓を設置するのであれば(1畳=約1.65㎡とします)、
1.65×8÷20=0.66㎡
この面積、0.66㎡以上の開口部分=窓が必要です。
これは通常の引き違い窓であれば、少なくとも、高さ90cm幅150cmくらいのサイズの窓が必要となります。
(窓全体の面積は0.9×1.5=1.35㎡。引き違い窓は半分しか開けられないので、1.35÷2=0.675㎡の開口部となる)
次に【シックハウス対策に係る法令】による換気量の規定「換気設備の設置義務」があります。
これは、人が使う部屋に関して、
・住宅の居室の換気回数:1時間あたり0.5回以上
・住宅以外の居室の換気回数:1時間あたり0.3回以上
この性能を持つ換気設備を設置しなかればならないという法律です。
住宅の換気回数が「1時間あたり0.5回以上」・・・これは住宅の居室であれば、2時間以内に室内の空気がすべて入れ替わるべきという考えです。
※Panasonicの常時換気用パイプファン
このように、現在の住宅、オフィスでは法律的な根拠により基本的な換気環境は整えられていると考えてもらって構いません。
しかし、健康のことを考えると、上記のような基準を越える、さらに「健康的な部屋」を求めている人もいるでしょう。
そこで「健康のために上手く空気を入れ換える部屋をつくりたい」人に、おすすめの設計手法を挙げていきます。
◇窓は2面に設置すること
空気を入れ換える基本は窓です。
換気扇の能力も大切ですが、一気に空気を入れ換えるのでしたら、やはり窓を効果的に使うのが良いでしょう。
最低限の窓面積については法律で規定されていますが、効率的な換気を行いたいのであれば、窓の配置にも気を配る必要があります。
一気に部屋を換気する空気の流れを作るのであれば、窓は部屋の直角方向あるいは対面方向に2面以上設置するのが良いと思います。
◇開き窓で風をキャッチする
引き違い窓に比べ、開き窓には「開口面積が全面となる」「外を流れる風を捕まえることが出来る」という特長があります。
上手く風の流れを捕まえたとき、部屋の空気を一気に入れ替えることが出来ます。
開き窓は、「山から海への風」など、定期的な季節風がある地域では非常に有効です。
※LIXILのカタログから。
日本の在来住宅ではあまり馴染みの無かった開き窓ですが、最近は種類も増えています。
また、従来より大型サイズのものもありますので、換気にはかなり使える窓になっています。
◇換気扇の能力アップ
「シックハウス法」によって設置が義務付けられている換気設備ですが、通常、特に設計リクエストを出さなければ「法律を満たす最も容量の小さな換気扇」が選ばれていることが多いと思います(コストが一番安いものを選ぶので)。
換気扇設置についての工事費は、本体価格よりも設置工事(取り付け、配管、電気工事など)の方にお金が掛かることが多いようです。
「換気能力の高い部屋」を作るのであれば、この換気扇本体を高容量のものに替えて貰うのが良いかもしれません。
換気扇を高性能なものに変更しても、工事費には大きな違いは出ませんので、費用対効果の高い「換気対策」になると思います。
最後に、部屋の換気についての「注意点」を挙げておきます。
◆「居室」以外の部屋に注意
マンションの間取り図をみると「サービスルーム」とか「納戸」のような表記の部屋が書いてあることがあります。
また、都市部の住宅の場合、主に採光の関係で法規上居室にならない部屋が設定されることがあります。
これらの部屋は、今まで書いてきた換気に関する建築法規が適用されませんので、窓のサイズが小さくなったり、換気扇が省略されたりすることが殆どです。
戸建て住宅で「法規上は居室ではないが、通常の部屋としても使いたい」のであれば、通常居室並みの窓、換気設備などを設けるように、設計者に要望してみて下さい。
◆セントラル方式の換気設備に注意
機械換気設備を1箇所に纏めて、各部屋にはダクトで空気を送る「セントラル方式の換気システム」について。
この方式には、以下のような利点があります。
[集中換気方式のメリット]
・給気箇所が1箇所なので高性能フィルタの組み込みが可能
・給気箇所熱交換システムを組み込むことが可能
また欠点としては、
[集中換気方式のデメリット]
・配管スペースの分、天井が低くなることが多い
・設置コスト、運用コストが安くない
・将来的なメンテナンスが困難
私が特に気にしているのは、この3番目の「将来的なメンテナンス」です。
セントラル空調、集中換気方式は、機械が老朽化したときの取り替えが難しく、結果として「壊れたら使わなくなる」ことが多いようです。
換気設備は長く使うものなので、なるべく「シンプルで信頼性が高い」ものをお薦めします。
「健康のための換気計画」については、窓や換気設備の配置など、設計の初期から検討すべき事項が多く含まれています。
個人的にはあまり機械に頼らず「風の通る部屋、窓の配置」で設計するのが好きですが、このあたりは設計者によっても好みがあると思います。
出来れば設計の初期段階から、建築士に要望を出しておくのが良いと思います。
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