広告宣伝における費用対効果の捉え方
「ブランディング」という言葉はよく耳にします。広告宣伝との違いは何でしょう。ブランディングは他と区別すること、つまり自分たちが提供する商品やサービスを、ほかの同様のものと差別化を図る取り組みです。
ブランディングについて
ブランディングとは何かと言えば、簡単に言えば「あるブランドを構築するための取り組み」です。しかし、これだけでは、車とは何かと言えば「走る乗り物です」と答えるようなものです。まず、「ブランディング」という言葉から考えてみましょう。
ブランンディングのもとになる言葉は「ブランド(brand)」です。意味は「商標」や「銘柄」。
そして、このブランド(brand)の語源は、焼印を押すという意味の「Burned」と言われています。つまり、焼印を押して自分の牛と他の牛とを区別するということ、そこから転じて商標や銘柄をあらわすブランド(brand)という言葉ができたというわけです。
すると、ブランディングという言葉には「他と区別する」という要素があることになります。
しかし、「区別する」と言っても、単に自社製品に「商標」や「銘柄」をつければ他と区別されるとは言えません。まず製品そのものを認知してもらう必要がありますし、そのうえで他と区別されるだけのものがなければなりません。
また、英語の表現に「brand new day」という言い方があります。「新しい一日」という意味ですが、「new day」も直訳すれば同じく「新しい一日」です。しかし、意味は同じでもニュアンスに違いがあり、「brand new day」には「真新しい」とか「素晴らしい」とか「特別に新しい」という意味合いがあります。
ブランディングも、単に他から「区別する」というだけではなく、特別な意味合いや価値を持って他から「区別する」ことになります。その特別な意味合いや価値は何かと言えば、個々の製品(商品・サービス)によってさまざまですが、まず重要になるのは「一般消費者からの信頼・共感」と言えるでしょう。
つまり、ブランディングとは、「ある製品(商品・サービス)の認知度を高め、一般消費者の信頼・共感を獲得し、他と区別するための取り組み」ということになります。
ブランディングの成功例
ブランディングの成功例としてよく取り上げられるものに「今治タオル」があります。タオルは日用品であり、なくては困るけれども、しかし、どこのタオルでなければならないというものではありません。
しかし現在、「今治タオル」は一般のタオルにくらべ高価であるにもかかわらず人気があり、価値ある商品として一般消費者の信頼・共感を得ています。
「今治タオル」のブランディングは、2006年に「JAPAN ブランド育成支援事業」の支援を受けて開始されています。
2006年にブランドロゴの作成、新商品開発などによる差別化に取り組み、翌年には国内展示会への出展などによって知名度・認知度の向上を図り、ブランディング3年目、2008年には本格的に国内市場の醸成に取り組みました。そして、その翌年2009年には明確にブランドの確立をめざし、現在も品質管理体制の整備などを通しブランドを維持しています。
つまり、先にご紹介した「ブランディングとは」にあてはめれば、「今治タオル」という製品の認知度を高め、品質管理などの取り組みによって「今治タオル」に対する一般消費者の信頼・共感を獲得し、他との区別(差別化)に成功し、ブランドを確立したということになります。
また、今治タオルのブランディングは2006年から2009年まで、準備・創成→市場醸成→ブランド確立と時間をかけ、また産地の取り組みとして行われました。このことは、ブランディングには長期にわたる計画、組織だった取り組みが必要であることを示しています。
また、忘れてならないのは、ブランディング開始当初から常にメディアプロモーションを怠らなかった点です。
広告宣伝とブランディングの違い
ここで、広告宣伝とブランディングの違いを見てみましょう。
これまでお話ししたように、ブランディングは、「ある製品(商品・サービス)の認知度を高め、一般消費者の信頼・共感を獲得し、他と区別するための取り組み」ですが、今治タオルの例でも分かるように、そこには長期にわたる計画、組織だった取り組みがなければなりません。ブランディングは一朝一夕にできるものではないからです。
ブランディングも広告宣伝も対象とするのは一般消費者です。しかし、広告宣伝はその製品を求めているとおもわれる、ある程度顕在的な消費者に対し短期的に集中して製品(商品・サービス)情報を提供するのに対し、ブランディングは、将来的にその製品を欲しいとおもってもらえるであろう潜在的な消費者にも、長期的な戦略に基づいて情報を提供し働きかけます。この点に大きな違いがあります。
また、ブランディングは個々の製品(商品・サービス)だけではなく、企業自体のブランド化にも関ります。そしてそのためにはより長期的、かつ、より組織だった取り組みが必要になります。