広告宣伝と広報PRの違い
「広告宣伝」と「マーケティング」
「広告宣伝」について、私たちは日頃からテレビCM・ネット広告・雑誌等の広告を目にし耳にしているため、ある程度イメージを持っていると言えるでしょう。もちろん、「それらは広告宣伝するために制作されたものであって、広告宣伝の奥は深い」という意見もあるでしょう。
しかし、「マーケティング」にくらべれば感覚的にイメージを持ちやすいと言うことはできると思います。
それに対し「マーケティング」については、「なんとなく分かっている」、あるいは「なんとなく分かっているつもり」というのが一般的なところではないでしょうか。実際、「マーケティングとは何か」を調べると、多種多様な解説がされています。
たとえばウィキペディア(Wikipedia)に掲載されているアメリカ・マーケティング協会によるマーケティングの定義は、「マーケティングとは、顧客、依頼人、パートナー、社会全体にとって価値のある提供物を創造・伝達・配達・交換するための活動であり、一連の制度、そしてプロセス」です。また、人によって定義の仕方が違っており、一筋縄ではいきません。
そこで、ここではマーケティングを「売れる仕組み作り」と解釈して考えてみましょう。マーケティングという言葉がカバーする範囲は広く、そのため「マーケティング=売れる仕組み作り」とは言いきれない部分もありますが、こうすることで広告宣伝とマーケティングの違いを確認できのではないでしょうか。
売れる仕組み作り
さて「売れる仕組み作り」ですが、それはどのような作業になるでしょう。
図式的に言えば、まず「顧客のニーズを掴む」ということが大切になります。そして次に製品計画を立てることになります。
つまり、多くのユーザーがどんな製品を望んでいるかを掴み、その要望に応える製品を計画するということです。製品計画に際しては、同業他社製品との差別化なども検討することになるでしょう。同時に、自社製品にとって最も有利な販売経路を検討し、選択することも大切になります。
しかし、製品は多くの消費者に知ってもらわなければなりません。そのために必要になるのが、販売促進努力であり、それによる需要の喚起・増加、そして新たな市場開発ということになります。
もちろん「売れる仕組み作り」は、上に図式的に述べたことだけですむとは言えませんし、上にあげた項目の一つひとつにもさまざまな要件があります。
しかし、ここで項目を順に並べてみると、
「1.ニーズの把握」→「2.製品計画」→「3.販売経路の選択」→「4.販売促進努力」→「5.需要の喚起・増加」→「6.新たな市場開発」という流れになります。
では、この流れに「広告宣伝」が関わるのはどこからでしょう。一番目につくのは「4.販売促進努力」からの流れということができるでしょう。
つまり、マーケティングがニーズの把握から市場開発まで全体に関わるのに対し、広告宣伝はその後段から関わるということです。
広告宣伝とマーケティングの関係
広告宣伝とマーケティングの関係をもう少し具体的に考えてみましょう。
ある町に定食屋さんがあったとします。そのお店でお客さまに「どんな定食が食べたい?」と聞いたところ、「こんなのがあればいい」という声が集まりました。そこでお客さまの希望に沿った新しいメニューを考え、お出ししたところ好評です。手応えを感じたので、そのメニューを押し出したチラシを配布したところ、新しいお客さまが増えました。
さて、この例を先にお話しした「売れる仕組み作り」の流れにあてはめてみると、「どんな定食が食べたい?」というニーズの把握があり、「お客さまの希望に沿った新しいメニュー」という製品計画があり、次の販売経路の検討・選択はお店ですからあまり関係はありませんが、その後の販売促進努力、需要の喚起・増加については「チラシを配布する」という広告宣伝がものを言ったということができます。
その結果として、新しいお客さまを獲得したわけです。これを市場開発というと大げさかもしれませんが、新しい成果が得られたことには違いありません。つまり、マーケティングと広告宣伝がよく噛み合った事例ということができます。
この事例から分かることは、マーケティングと広告宣伝は同じものではなく、違ったものではあるものの、しかし、深く関係しているということです。
「自社製品の売れ行きがどうもおもわしくない、じゃあ一つ大きく宣伝してみよう」という考え方では、広告宣伝の効果が得られません。そこにはマーケティングというものが欠けているからです。
広告宣伝に力を入れようとする際には、マーケティングと広告宣伝の違い、また、マーケティングと広告宣伝の関係をよく考える必要があると言えるでしょう。