自利利他で生きてみると
過去に交通機関の現場で管理職をしていたことがあります。
今日はそのときのお話です。
■ある夏の日に部下がお客様を連れて事務所に入ってきました。
そのお客さまは部屋に入ってくるなり、大きな声で怒鳴り散らされて
いました。
私も一緒に同席して、応接セットでお話を伺いました。
そのお客様は、「車内の冷房が効いていない。」「何回も御社に忠告
しているが、一向に改善されない。」ということでたいそうご立腹の
様子でした。
私が同席するなり、そのことをおっしゃられました。
部下が「他のお客様もいらっしゃることなので、お客さまお一人の
ご意見だけを聞くことはできません。」
と説明するのですが、
火に油を注ぐ結果になり、そのお客さまはますますエスカレートして
冷房の他にもいたらぬ点を挙げて、大声でわめき散らされました。
■そのときの部下の言っていることは、正しいのですが、相手の感情を
害したようです。
そこで、
私たちは、ただひたすらお客様のおっしゃることを聞くことに徹しま
した。
時々、相槌をうちながら「そうですか。申し訳ございません。」
というだけで、一切何もいいませんでした。
お客さまはそれから1時間くらい一人で話し続けられましたが、話した
いことを全て話されたようで、だんだん、声も小さくなってきました。
■そして、ついに
「俺のいうことが分かってくれたんか、あんたらは会社員やから自分
一人の意見で、そう簡単には変えれんわな。」
「まあ、できるときでええからやってえな。」
と言って席を立たれました。
おまけに、部屋を出ていかれるときに
「ありがとう。」
といっていただきました。
■何か気にいらないことがあって、苦情をいってくる相手に対して、同じ
ように反論しても、まったく相手は聞き入れてくれません。
それどころか、もっと興奮します。
自分が興奮しているときのことを思い出してください。
これは、理屈ではなく、感情の問題だからです。
相手は、自分の思いが伝わらないことに、怒りを感じているのです。
ひょっとして、結果はどうでもいいかも知れないのです。
ですから、こんなときには、反論せずにただひたすら相手の言うことを
聞くことです。
決して、話の時間が長いとか、面倒くさいと思ってはなりません。
その心は、相手に伝わります。
ですから、真剣にそして素直に相手のいうことを聞くようにしてください。
■必ず、最初よりはいい結果がでます。
だって、相手は少なくとも自分を受け入れてもらったと感じることがで
きるのですから。