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AI時代の多文化共生

平山裕康

平山裕康

テーマ:多文化共生

近年、生成AIをはじめとする人工知能(AI)の進化は目覚ましく、私たちの働き方や生活を大きく変えつつあります。文章作成、翻訳、画像生成、情報検索など、これまで人が多くの時間と労力を費やしていた作業をAIが瞬時に処理できるようになりました。

こうした変化の中で、「AIがあれば外国人とのコミュニケーションも簡単になる」「翻訳機能が進化すれば日本語教育の必要性も薄れるのではないか」といった声を耳にすることがあります。確かに、AI翻訳の精度は年々向上しており、スマートフォン一つで異なる言語を話す人同士が意思疎通できる時代になりました。



しかし、私は日本語学校の現場で多くの留学生と接する中で、AIが発達すればするほど、人間同士のつながりの価値がより重要になると感じています。

外国人が日本で生活する上で直面する課題は、単なる言語の問題ではありません。ゴミ出しのルールが分からない、地域行事への参加方法が分からない、職場で何を期待されているのか理解できない、日本人との距離感がつかめない――こうした悩みは全国各地で見られます。

その背景には、言葉だけでは説明できない文化や習慣、価値観の違いがあります。AIは「何を言っているか」を翻訳することはできますが、「なぜそう考えるのか」「その行動にはどのような意味があるのか」といった文化的な背景まで十分に伝えることはまだ容易ではありません。

例えば、日本人がよく使う「空気を読む」という感覚や、「周囲に迷惑をかけないようにする」という価値観は、日本社会のさまざまな場面に影響しています。しかし、それらは単純な翻訳では伝わりません。地域の人との交流や職場での経験を通じて初めて理解できるものです。

多文化共生とは、異なる国籍の人が同じ場所に住むことではなく、互いの文化や価値観を理解しながら共に社会をつくっていくことです。そのためには、人と人との対話が欠かせません。

一方で、AIは多文化共生を支える非常に有効なツールでもあります。行政情報の多言語化、災害時の情報発信、日本語学習支援、外国人相談窓口での翻訳補助など、これまで人手不足のため十分な対応が難しかった分野で大きな力を発揮しています。

特に地方都市では、外国人住民や外国人労働者が増加する一方で、支援する人材や予算が限られています。AIを活用することで、より多くの人に必要な情報を届けることが可能になります。今後は行政や教育機関、企業においてもAIの活用が急速に進むでしょう。

しかし、AIはあくまで人を支援する道具です。外国人が地域社会に定着し、安心して暮らせる環境をつくるためには、地域住民や企業、学校などによる温かい受け入れが必要です。

日本では少子高齢化が進み、多くの産業で外国人材が欠かせない存在となっています。介護、建設、農業、製造業、宿泊業など、さまざまな分野で外国人材が地域経済を支えています。

だからこそ、外国人を単なる「労働力」として捉えるのではなく、「地域の仲間」として迎える視点が重要になります。地域の祭りに参加する、防災訓練に参加する、子どもたちとの交流活動に関わる。そうした日常的な関わりの中で、外国人も地域社会の一員としての役割を担うようになります。

AIが発達した時代だからこそ、人間同士の信頼関係や共感力の価値はむしろ高まります。効率化や自動化が進む一方で、人と人とのつながりは機械では代替できないからです。

また、「AI翻訳があるから日本語を学ぶ必要はない」という考え方もありますが、私はそうは思いません。日本語を学ぶことは単に会話ができるようになることではなく、日本社会を理解し、自らの考えを伝え、地域の一員として参加するための大切な手段だからです。

これからの日本語教育は、単なる言語教育ではなく、社会参加を支える教育としての役割をより強く求められるようになるでしょう。AIが翻訳を担う時代だからこそ、人間が互いを理解し合うための教育が一層重要になるのです。

AIの進化はこれからも続きます。しかし、多文化共生の本質は技術ではありません。そこにあるのは、人と人との理解と信頼です。AIはその橋渡しを助けることはできますが、信頼関係そのものを築くことはできません。

外国人も日本人も、共に学び、共に働き、共に地域を支える。そのような社会を実現するために、私たちはAIを活用しながらも、人間らしいつながりの価値を忘れてはならないと思います。AI時代の多文化共生とは、テクノロジーと人間性の両方を大切にする社会づくりなのではないでしょうか。

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