今、ネパールが熱い(2)
2023年11月30日に、政府の有識者会議は技能実習制度を廃止し、新たな制度として「育成就労制度」を創設する最終報告書をまとめました。
技能実習制度が廃止されることになった背景には、多くの問題点が存在していました。
この制度はもともと、外国人労働者に対して日本の技術や知識を教えるという名目で始まりました。
しかし、その実態は全く異なるものでした。
今回は、この制度に関する主要な問題点について掘り下げてみます。
1. 労働権の侵害
技能実習制度の最大の問題点は、実習生の労働権の侵害です。
実習生たちが適切な労働条件や賃金を保証されず、過酷な労働環境に置かれるケースもありました。
長時間労働や休日出勤が常態化し、適切な保護措置が講じられていない等の問題も数多く報告されています。
2. 人権問題
人権の観点からも、技能実習制度は多くの批判を受けてきました。
実習生たちはしばしば適切な住居を提供されず、また、パスポートの没収や私生活への干渉など、自由を著しく制限される事例が報告されています。
これらは国際的な人権規範に反する行為と見なされています。
3. 誤った目的と成果
技能実習制度は、本来外国人労働者に技術を教え、その後の母国でのキャリア構築を支援することを目的としていました。
しかし、実際には日本国内の労働力不足を補うための安価な労働力として利用される傾向が強く、教育的な目的は二の次になっていました。
4. 監督体制の不備
技能実習制度の監督体制にも問題がありました。
不適切な企業や団体に対する監督が不十分で、実習生の権利を守るための法的枠組みや監督体制が機能していないことが多々ありました。
この結果、悪質な企業による実習生の搾取も横行しました。
5. 共生できない社会の中での孤独
最近では多文化共生という言葉がいろいろな場で見られるようになりましたが、
これまで多くの技能実習生は日本社会に溶け込むための活動や機会があまりなく、文化的、言語的障壁により孤立するケースが多く見受けられました。
これにより、実習生たちは精神的なストレスを抱え、その健康や福祉が脅かされる状況に陥ることもありました。
技能実習制度の廃止は、これらの深刻な問題点を解決するための重要な一歩です。
労働権の侵害、人権問題、誤った目的と成果、監督体制の不備、社会的統合の欠如といった問題は、「現代の奴隷制度」として国際社会からも注目されていました。
今後、日本は外国人労働者を取り巻く環境を改善し、彼らが尊厳をもって働けるシステムの構築に取り組む必要があります。
技能実習制度の廃止は、このような新しい取り組みへの扉を開く契機となり得るでしょう。
実習生を支援し、国際的な労働基準に準拠した適正な労働環境を提供することは、日本の国際的な評判を守る上でも重要です。
日本経済における外国人労働者の役割は今後も増していくでしょうが、その過程で労働者の権利と尊厳が守られることが極めて重要です。
日本がより公正で持続可能な労働環境を目指す上での重要なステップとなる技能実習制度の廃止。
この機会を活かし、国内外の関係者が協力して、労働者の権利が尊重される新しい枠組みを構築していくことが求められています。