そうめん作りのプロ
安藤康典
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そうめん作りのプロ
安藤康典
#chapter1
全国にその名を知られる手延べそうめん「揖保乃糸」。揖保川の清流と良質の小麦、赤穂の塩を使った独特の製法がコシのある食感を生み出し、兵庫県西播磨地方は600年以上にわたりそうめん製造の産地として発展してきました。
その伝統的な手延べ製法を今に受け継ぐ製麺所が、たつの市新宮町にある株式会社安藤商店。社長の安藤康典さんは「コシの強さを引き出すには、めん生地を適度に熟成させるタイミングと費やす時間が大きく関係します」と語ります。「生地を、縒り(より)をかけながら丁寧に引き延ばし、ねかした後に再び引き延ばすという工程を数回繰り返し、直径1mm以下の細さのそうめんに仕上げます。揖保乃糸のおいしさは、この『ねかし(熟成)』と『延ばし』で丹念に作られていることにあります」
揖保乃糸は現在、揖保川一帯に点在する四百数十軒の製麺所で生産されています。全ての製麺所が兵庫県手延素麺協同組合に加盟し、伝統の製法を守り高品質を保っている。出来上がった製品は、組合検査員により製品検査を受けて揖保乃糸となります。
#chapter2
揖保乃糸は例年、10月から4月までの限られた時期に製造され、特に寒さが厳しい12月から2月に作られた揖保乃糸は、コシが強く舌触りが良いことで知られています。安藤商店では製麺作業を早朝4時に開始。1つ1つの工程に丹精を込め、36時間もかけて手延べそうめんのおいしさを引き出します。
特に小麦粉・食塩・水をこね合わせる生地作りは、全工程の基礎となるため細心の注意を払うと話す安藤さん。「生地は、毎日同じ硬さに仕上げることが重要。また工場内の衛生管理はもちろん、室温や水温、湿度が最適かどうか細やかに気配りをしています」
揖保乃糸は小麦粉のグレードや製造時期などによって数種類の等級があり、赤、黒、金などの帯で色分けされています。安藤商店は主力の「赤帯(上級)」のほか、協同組合から認定を受けた熟練工場だけが製造できる「黒帯(特級)」、国家資格である「手延製麺技能士」の有資格者だけが作れる「金帯(熟成麵)」などの高級そうめんも製造しています。
また製麺だけでなく揖保乃糸特約店として、全国の百貨店に贈答品用の「揖保乃糸ギフト」を販売しています。「そうめんを入れる木箱にはモミの木を採用。自社で木箱の組み立てまで行っています。モミの木は調湿効果に優れ香りが少ないので、そうめんに匂いが移りません」
自社販売する「揖保乃糸ギフト」の全量を自社で製造していることも安藤さんならではのこだわり。常連の顧客から「おいしいそうめんをありがとう」と言われるたびに、自分が作っていない商品が含まれていることにすっきりしないものを感じていたとのこと。10年前、従業員とも相談して全量を自社で製造する決断をしたと話します。
「自社製造分だけで商売するため、会社の売上高は減ったが気にしていない」と笑う安藤さん。「先様からの評判が非常に良い。毎年楽しみにしている」など、顧客から寄せられる喜びの声を支えにそうめん作りに励みます。「従業員さんの協力・頑張り・勤勉さがあるからできる」とスタッフへの感謝も忘れません。「今はお客さまの感謝の言葉にも『いつもありがとうございます』と胸を張って答えられます」
#chapter3
「製麺業を始めたのは曽祖父です。創業年月は記録に残っていないのですが、私で4代目となりますので、既に100年以上そうめん作りに携わっていることになりますね」とほほ笑む安藤さん。物心が付いた頃には、そうめん作りを手伝っていたと話します。
「父は腕の良いそうめん職人で、協同組合の検査指導員もしていました。そうめん作りにかける情熱は誰よりも強かったです。私は小学校から帰宅すると、掛巻機(かけばき)という機械で2本の管にめん生地を掛ける作業や、そうめんの切断作業を手伝っていました」。大学卒業後は3年半、大阪府北部中央卸売市場の乾物問屋で忙しい業務をこなし、知識を深め、帰郷。家族やスタッフとともに安藤商店を支えてきました。
より高品質な揖保乃糸を生産し、多くの顧客に届けたいと願う安藤さんは、厳寒期の11月~2月も休まず約150日間連続で淡々と製麺に打ち込みます。「毎日携わると、狂いがない同じ商品ができる。品質を保つ秘訣は毎日休まず仕事をすることですね。年末年始の1週間以外は休みません」。決して妥協を許さない先代の職人気質は、息子である安藤さんにもしっかりと受け継がれているようです。
(取材年月日:2016年9月)
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そうめん作りのプロ
安藤康典プロ
株式会社安藤商店
組合から認定を受けた熟練工場のみが製造できる黒帯の「特級」、手延製麺技能士の有資格者のみが製造する金帯の「熟成麵」など等級が高いそうめんを製造。室温や水温、湿度にも細やかに気配りする。
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