TOEICという悪夢

辻村豊

辻村豊

テーマ:研究開発のヒント


皆様方、お世話になっております。日々雑感を綴っております。

TOEICの点数で降格!

旧友がちょっとした会社で課長様をやっていたのですが、TOEICの点数が悪いという理由だけで、降格になり、今は平社員だそうです。所属していた部署どころか、会社全体で見ても、英語に接することはほとんどなかったみたいですが…
そう言えば、前職の会社でも退職直前に『TOEICの点数が一定に達していないと、海外出張できない制度』を検討していたようですので、今頃は既に実施されているでしょう。
もちろん、海外に行けば英語は必要ですから、何らかの評価も必要です。

英語を出汁に恐怖心を煽る

以前、このコラム欄で、『英語というものは、不安を煽るには格好の材料です。』と申し上げました。
(英語が不得意でも…)
https://mbp-japan.com/hyogo/banyohkagaku/column/5146322/
ただでさえ、英語を出汁にして不安を煽られるのに、そこへ点数という具体的な表現となればキツイものです。更には上記のように出世にも影響するとなれば、尚更です。

そもそも英語は万人に必要か?


さてイギリスの警察官は一部の必要なメンバーのみが拳銃を携帯していることは有名なお話です。これと同じで英語力も必要な人だけが身に付けておけば良く、『猫も杓子も英語英語!』ってことは全くないと考えます。
ちなみに私の場合ですが、例えばこのマイベストプロには『雑誌会の部屋』という欄を設けており、そこの元ネタは全て英語ですので、英語とは苦しみながらも付き合っております。
(雑誌会の部屋)
https://mbp-japan.com/hyogo/banyohkagaku/service1/
しからば、なぜ元ネタが英語なのか?と言えば、『世界初の研究発表!』をするには英語で発表せねばならないからです。かつてはイギリスが、その後はアメリカが台頭した結果、『最新情報=英語』が定着してしまった、それだけの理由です。言い換えれば、英語以外で発表したら、『世界初にはなれないリスクがある』ということです。その一方で、英語を母国語としない人たちからの発表も英語で統一され、便利とも言えます。特に欧米以外の地域からの研究例は発想も観点も違うことが多々あり、非常に興味深いものです。
ちなみに英語そのものが特別表現力に優れているか?と言えば、そうでもありません。サイエンティフィックな事象を語ろうとした時も、英語でないと説明できない事例とかありません。むしろビジュアル的に理解でき、コンパクトに収まる中国語の方がずっと便利な場合もあります。

英語とは無縁の人も多い


更にこれまで同業者とかによるセミナーとかを受講したところ、使った資料などの元ネタは(もちろん日本語の)新聞由来が圧倒的に多いようです。英語の文献もありましたが、タイトルを紹介するだけで、中身については説明がなく、本当に中身を十分理解した上でのことなのか?も怪しいものも多かったです。そしてこれは前職時代でしたか、とあるコンサルタントと称する人がやって来て、新聞記事の切り抜き一つで、まことしやかに長時間喋りまくっていました。後に同類の資料ファイルを見せてもらったことがあるのですが、新聞の切り抜きがぎっしり詰まっている一方で、英語らしきものは全く見当たりませんでした。
このように技術系、研究開発系においても、必ずしも英語は必要ではないと言えます。

英語力は点数化できるのか?

そもそも英語力を点数化する意味ってあるのでしょうか?これについて、有名な指揮者である佐渡裕さんの著作『僕はいかにして指揮者になったのか』の中のある『コンクール嫌いになった理由』の部分を思い出しました。
『もともと僕は、コンクールやオーディションなど、人が長い間してきたことに、短い時間で合否を出したり順位をつけたりするようなことが大嫌いであった。そこに秘めた演奏者の愛情や苦労をまるで無視し、結果だけが重要だとでも言うかのようなことは、特に音楽の分野では、まるで意味がないとしか思えないからだ。』

(コンクール嫌いになった理由)
https://smooooth9-site-one.ssl-link.jp/banyokagakukenkyusho230710/uploads/blog/27/669b99ec9ddc127.pdf

これと同じく、英語はあくまでも言葉であり、試験で点数化すること自体無理があるのでは?と強く思います。
随分前ですが、『日本人講師は全員TOEIC900点以上!』というが触れ込みの英会話学校がありました。見学にも行ったのですが、その日本人講師とやら、何が言いたいのか?良くわからない話ばかりをしていました。早い話がコミュニケーション能力は全くなく、単に『英語の試験が良くできました。』だけの人でした。
それと、かつて漫才師の横山やすしさんが語っていたことですが、何かのイベントで世界中から人が集まったそうです。英語を喋れる人なんてほんの一握りで、ほとんどは英語なんぞわからず、身振り手振りあの手この手で何とか伝え合おうとしていたそうです。ところがその中で、全く孤立しているグループがあり、それが日本人だったそうです。『あれではアカンわ!』でした。この話は随分前のことですが、今も状況はさほど変わっていないと思います。要は工夫しながらのコミュニケーションを取ろうとすることが必要且つ重要であり、ワールドワイドで見れば、英語が使えないことなんぞ大したことではなく、お互い様ってことのようです。

結局線引きをするためと不安を煽って追い立てる小道具に過ぎないのでは?

そんなこんなで会社というところがなぜ『TOIEC、TOEIC』というのか?というのでしょうか?おそらく単に線引きをして、振り落として、ランク付けをするための道具に過ぎないということでしょうか?整理する側としては楽ですし…そうなれば益々英語で不安を感じるの人々の心に付け込む英語ビジネス産業?が蔓延るだけです。実際、前職時代も大手英会話学校から会社に講師が派遣されていましたが、さほど効果がなかったです。もちろん、本人の努力が足りなかったことは十分あり得ますが、周囲を見ていても上達している人はあまりいなかったようです。その社内英語教室、唯一プラスと思えたことは、その社内英会話の教室で親しくなった後輩の社員同士が社内結婚したことぐらいだったでしょうか?

TOEIC至上主義は悪夢?

てなことでしたが、結局、部下の面倒見も良く、取引先との関係構築などに優れている人が降格し、単に英語の試験が良かったという理由だけでお目が高いと言われて上がって行く、こんなことを続けていては、会社にとっても、更には社会全体に対しても巨大な損失ではないか?と思えてなりません。

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辻村豊
専門家

辻村豊(技術コンサルタント)

合同会社 播羊化学研究所

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