住宅ローンが残ったままの離婚で注意すべきこと

武本尚

武本尚

テーマ:任意売却

離婚に際してはさまざまな問題を処理しなければなりませんが、住宅ローンが残っている家をどうするかも大きな問題です。

住宅ローンが残った状態で、名義を「旦那さんから奥さん」など、勝手に変えることはできません。
夫が住宅ローンを組んでいる場合は、離婚したあとも夫が返済することになります。

なお、妻が夫の住宅ローンの連帯保証人になっているときは、妻は夫の返済が滞った場合、ローの返済義務を負います。

離婚しても住宅ローンは名義人が払う

Aさん夫妻は結婚後10年で離婚することになりました。結婚2年目に現在の家を購入しましたが、住宅ローンが相当額残っています。

ここで考えなければならないのは、「住宅ローンの名義人は誰か」ということです。
なぜなら住宅ローンの名義人が誰かによって「債務者」が決まります。そして、借りたローンの返済義務があるのは「債務者」だからです。債務者が返済義務を負う、これが原則です。

住宅ローンの名義人が夫であるAさんであれば、離婚後も住宅ローンの返済義務はAさんが負うことになります。
同じ理由でもしAさんの奥さんが住宅ローンの名義人であれば、奥さんが債務者であり、残っているローンの返済義務はAさんの奥さんが負うことになります。

さて、Aさん夫婦は、ローンの名義人はAさん、そして、Aさんの奥さんが連帯保証人になっています。この場合はどうなるでしょう。

連帯保証は、契約に対する義務を共に負う、というものです。ローンの名義人であるAさんに返済義務があるのはもちろんですが、連帯保証人であるAさんの奥さんも、Aさんと同じく返済の義務を負っていることになります。

離婚後、もし名義人であるAさんがローンの返済義務を果たさないということになれば、連帯保証人であるAさんの奥さんが返済義務を果たさなければなりません。

連帯保証はシビアなものです。Aさん夫婦が「離婚後、ローンの残債は夫婦で半分ずつ出すことにしよう」
そんな約束をしていたとしても、住宅ローンの契約そのものには何の影響もありません。名義人であるAさんが返済しなければ、連帯保証人の奥さんに請求が行くだけです。Aさんの奥さんが、
「ローンの残債はお互いに半分ずつ出し合うということにしていました」
と言っても、通用しません。それはAさん夫婦の私的な約束であって、住宅ローンの契約とはまったく別のことだからです。

住宅を売りローンの残債を一括返済する方法がトラブルに回避につながる

住宅ローンが残ったまま離婚する際、後々起こるトラブルを回避するために一番良いのは、家を売却し、ローンの残債を一括返済することです。

Aさんのローンの残債が1500万円としましょう。家を1500万円で売り、それでローンを清算する。これが最も理想的なかたちです。
売却金が1500万円に届かないとしても、貯金などで補填できる範囲であれば、不足分を補って全額一括返済する。住宅ローンを清算してしまうのが、後々のトラブルを避ける方法として有効です。

しかしAさん夫婦は、現在Aさんが家を出て、家には奥さんと子どもが住む、ローンの返済はこれまで通り名義人であるAさんが続ける、という方向で話を進めているとします。

一見穏やかな方法に見えますが、実はトラブルの芽を残した考えです。

というのも、現在Aさんが勤めている会社は業績もよく、今後のローンの支払いに問題はないようにおもえます。しかし、それは「現在はそうおもえる」ということです。
Aさんの会社が今後も好調で、Aさんの収入も今後も変わりなくあるという保証はどこにもありません。また、Aさんが再婚するなど、Aさんの生活に大きな変化が生まれる可能性もあります。

もしAさんがローンの返済ができなくなった、あるいは返済をしなくなったら、銀行などの金融機関は、裁判所に競売を申し立てます。競売ということになれば、家は差し押さえられ、競売終了後、Aさんの奥さんは家を立ち退かなければなりません。

住宅ローンの返済は長期にわたるものですから、その間に状況が変化するものであることを十分に考える必要があるのです。

不動産名義と住宅ローンの取り扱いに関する注意点

ところで、住宅ローンには「ローンの名義人」と「所有名義人」の2つの名義があります。「所有名義人」とは、対象となる住まい(不動産)の登記簿に記載してある名義人のことです。
この取り扱いについては注意すべき点があります。

離婚に際しては「財産分与」が問題になるかと思いますが、これは、現在の資産を夫婦でどう分配するかということを話し合います。

たとえばAさんが、住宅ローンの名義人はAさんのままにし、財産分与によって所有名義を奥さんに変えて家を出たとします。すると、どうなるでしょう。

住宅ローンが残っている場合、夫婦であっても勝手に名義の変更はできません。これは住宅ローンの契約に「不動産の名義変更をする場合は事前に承諾を得なければいけない」という条項があるからです。

実際にはAさんが名義を変更したとしても、そのことを住宅ローンの契約を結んだ金融機関にすぐ知られるということはないでしょう。しかし、住宅ローンの滞納などで金融機関が知った場合、契約違反を理由に住宅ローンの残債を一括請求される可能性もあります。

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武本尚
専門家

武本尚(不動産コンサルタント)

株式会社アートランド

中古住宅を買い取り、新築のような快適な物件にリフォームして、近隣の家賃以下の低価格で販売。購入後5年間、不具合があった際に補修工事代を保険会社が負担する「既存住宅売買瑕疵保険」が付いているので安心。

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