住宅ローンが残った家でも売れる
「任意売却」をすることになった場合、だれに相談ですればいいのでしょう?
任意売却は、経験豊富な専門の不動産業者などが銀行などの金融機関と家を売る側(手放す側)のあいだ、すなわち債務者と債権者の間に入って調整を行い、債権者の合意を得て家を売却することです。
今回は、任意売却の流れなどについてお話ししたいとおもいます。
「任意売却」は誰に相談したらいい?
「任意売却」について誰に相談しようかと考え、まず、一般の不動産会社を思い浮かべる方は多いでしょう。
「任意売却」も一つの不動産の取引ですから、それも自然なことだとおもいます。
しかし「任意売却」は、住宅ローンが残っている家を売るわけですから、普通の住宅販売とは違いがあり、相談先を考える必要があります。
住宅ローンの契約を銀行など金融機関と結ぶ際には、「毎月これこれのお金を支払い、融資してもらったお金は何年で返済します」という契約条項に署名・捺印します。これでお金を貸してくれる銀行など金融機関と、お金を借りることにした人との契約が成立したことになります。言いえかえれば、「債権者」と「債務者」の関係が成立したということです。
お金を貸した銀行など金融機関が「債権者」、お金を借りた人が「債務者」です。
「任意売却」は、債権者と話し合い、同意を得たうえでなければ行うことができません。ですから、まず債権者との交渉が重要になります。
銀行などの金融機関とこういった任意売却の交渉をするのは、一般的な不動産売買や賃貸の仲介とは異なりますので、金融や法律の知識を持つ「任意売却」に強い不動産業者や、法律にあかるい弁護士や司法書士などに相談することになります。
個人で任意売却の手続きをすることも可能ですが、物件を購入する人との交渉や、売買契約書などさまざまな書類の作成、決済の手続きと不慣れな作業を行う必要がありとても大変です。
また、金融機関との交渉も専門的な知識が必要ですので、個人で行うよりは専門家の手を借りた方が良いでしょう。
任意売却が完了するまでの流れ
「任意売却」の一般的な流れを見てみましょう。
■任意売却の依頼先を選定
まず、任意売却の相談先を検討し、そのうえで業者を選定します。
■査定
選定した専門業者が家の査定を行い、任意売却に向けたスケジュールなどを説明します。
■専任媒介契約の締結
選定した専門業者と専任媒介契約を結びます。一般の不動産売却の場合も「家の売却については、あなたの会社に頼みます」という契約を結びます。これを媒介契約と言います。
ただし、一般の不動産売却であれば複数の会社と媒介契約を結ぶことができますが、任意売却の場合は、1社としか媒介契約を結ぶことができません。そのため、任意売却の契約形態は「専任媒介契約」のみということになります。
■債権者への報告と交渉
専任媒介契約は、代理人契約と言えます。債権者に対しては「今後、交渉の窓口は私たち(専 門業者)になります」という意味合いになりますので、債権者へその旨の報告を行います。この報告後、債権者との交渉は専門業者が行うことになります。
専門業者は、債権者に販売可能価格を提示し、同意を得られるよう交渉します。
■販売活動
債権者の同意が得られたら、専門業者が家の購入希望者を探します。
■任意売却の承諾
家の購入希望者が決まったら、専門業者が債権者に「返済配当契約書」を提出して、任意売却 の承諾を得るための交渉を行います。
「返済配当契約書」には、売買価格、仲介手数料、引越し費用などが記載されます。
■買主との売買契約
債権者の承諾を得たうえで、購入希望者と売買契約を締結します。
■決済
物件の所有権移転、抵当権抹消などの処理を行います。
決済場所は、買主が融資を受ける金融機関の最寄りの支店になります。
任意売却後のローンの残債がある場合
「任意売却」によって家を売却してもローンの残債がある、そうした場合でも債務者には残債返済の義務があります。
ただ、その際の月々の返済額は、住宅ローンの月々の返済額にくらべずっと安く設定してもらえます。一般的には月5000円~30000円程度です。また、残債そのものを減額してくれる場合もあります。
なぜ、こうした措置がとられるかを簡単にご説明しましょう。
通常、債権者である銀行など金融機関は、残債の債権を債権回収会社に移します。住宅ローンが払えなくなって、任意売却をした人から残債分の返済をしてもらうのは難しいと判断するからです。
債権回収会社もそのことは承知しています。そこで、債権回収会社は現実的に回収できる方法をとることになり、債務者の収入等を考え、月々の返済額を低くしてくれるわけです。
また「残債の返済がいつになるかわからない」という場合、やはり現実的に考えて回収できる分だけを回収する、というスタンスをとることになり、残債を減額するということになるのです。
しかしながら、こうした措置の決定権はあくまで債権回収会社にあります。債務者の都合でどうにかなるものではありませんので、注意が必要です。