シニア世代の資産取り崩し術
お客さまにお伝えしたいこと
- シニア世代の資金計画において、消費支出は思ったほどは下がらずに相応の負担となる。
- 案外と負担が大きい消費支出に備えるためには、年金などの社会保障給付や就業などによる収入に資産活用を組み合わせてバランス良く資金計画を組み立てるのが肝要
現役世代における資産運用は、給与収入から生活費を賄って余剰分を貯蓄や有価証券への投資などに充てる形で、「どのように使うか?(≒どのように貯めるか)」の視点で行われます。実際に総務省統計局の家計調査報告で勤労者世帯の2023年の家計収支の状況を見ても、可処分所得から様々な消費支出をした黒字分が資産運用の原資となっていることが分かります。
一方でシニア世代は、生活費を再雇用などの給与収入や年金収入、そして金融資産からの収入で賄う形で「どのように賄うか」の視点から行われます。実際に総務省統計局の 家計調査報告で夫婦高齢者無職世帯の2023年の家計収支の状況を見ても、可処分所得では様々な消費支出を賄いきれず、不足分が発生していることが分かります。
シニア世代の資金計画を項目ごとに見ていくと、実収入が現役世代の4割程度(*)になっているのに対して、消費支出に関しては8割程度(**)と相応の負担になっています。
それぞれの支出を見直していくことが通常考えられますが、単に切り詰めるだけでは、心身ともに豊かな生活は期待できません。そこで検討したいのが生活拠点を見直してみることです。総務省の2023年消費者物価地域差指数で見てみると、東京都区部を100とした場合、東京都区部・川崎市・横浜市を除く都道府県庁所在市及び政令指定都市の平均値は94.0と約6%少なく、地方を生活拠点にするだけでも消費支出をかなり抑えることが可能です。
次に消費支出をどのように賄うかの観点ですが、シニア世代の収入の柱となるのは年金などの社会保障給付です。
厚生労働省『令和5年国民生活基礎調査』によると公的年金・恩給を受給している高齢者世帯では実に約4割の世帯が総所得の100%を公的年金・恩給に依存しており、60%以上を占める世帯も全体の約7割以上となっています。
国民年金は、毎月定額の保険料(2024年度時点で16,980円)を支払い、20歳から60歳の40年間すべて保険料を納付していれば、65歳から月額6.8万円(2024年度)受給することができます。
厚生年金は、月ごとの給料に対して定率(2017年度以降は18.3%)の保険料を納付して働いていたときの給料と加入期間に応じて給付額が決められます。
厚生年金額=平均標準報酬額×給付乗率×加入期間(月数)
このように国民年金や厚生年金は事前に給付額が分かるため、資金計画上は固定収入として扱います。
年金の繰下げ受給は損益分岐点となる年齢より長生きすると年金受給額が多くなるので、推奨する意見もありますが、ここでお伝えしたいのは趣味や旅行などにも年金を有効活用して人生を謳歌するためには、税金や社会保険料の負担なども考慮しながら、元気なうちに年金受給を始めるのが賢明な選択になるということです。
年金の繰下げ受給をしても、受給前に亡くなったり既に寝たきりになった後では元も子もありません。
資金計画で医療や介護に備えるのであれば、年金の繰下げ受給では無く、保険で備えるべきでは無いかと思います。
就業に関して内閣府で令和5年11月に実施された「生活設計と年金に関する世論調査」によると、老後の生活設計で何歳まで仕事をしたいか、又はしたかという設問に対して、約5割が65歳までと回答しています。
また、61歳以上まで働くと答えた方に対してその理由を聞いたところ、約75%が生活の糧を得るためと答えています。
また、厚生年金を受け取る年齢になったときの働き方について聞いた設問では約7割弱が「働かない」「年金額が減らないように就業時間を調整しながら会社などで働く」と答えています。
すなわち、シニア世代での就業は収入の調整弁の役割となっています。また、シニア世代のライフプランニングはどのタイミングで現役を引退するかを決めることから始まると言われています。
このようにシニア世代の資金計画は、相応の負担となる消費支出を、社会保障給付をベースに就業した所得で賄いながら、それでも不足する部分をそれまで蓄積した金融資産などを活用して補うこととなります。
その際に金融資産の取り崩しを固定収入と見做すとリターンがどのタイミングで発生するかで意外なリスクが存在します。そのため、資産額に応じて一定割合を取り崩す方法が賢明です。取り崩し額は変動するのでそれぞれの収入項目を、全体のバランスをとって検討していく必要があります。
お客さまに合わせた資金計画を策定して実行していく上で私たちアドバイザーは様々な分野でお役に立つことが出来ると考えます。ご興味があればご遠慮無くご相談下さい。
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