複利と単利について
お客さまにお伝えしたいこと
- 市場の動きに惑わされずに長期継続保有することが有効であるが、適切なリバランスを行うことでその有効性を更に高めることが期待できる。
- リバランスの際は売買コストを考慮しないと、かえって運用効率が悪化する可能性がある。
資産運用では、将来の成長が期待できる資産に対して「継続して保有」することで時間を味方につけて、着実に資産を成長させることが可能です。
一般的に投資家のリターンは市場に大きく劣後することが知られています。これは市場変動に対して損失回避的な思考から「安く売って高く買う」行動をとってしまうためで、頻繁に売買することで発生するコストも足を引っ張る要因となります。
バイ・アンド・ホールド(Buy and Hold)は、長期保有を行うことを前提とした投資手法で、一度購入したら保有し続ける手法で、足元の市場の動きに惑わされずに確りと運用を継続出来る有効な方法となります。
一方でバイ・アンド・ホールドの場合、時価変動によって運用の中身が知らず知らずの内に変化していることに注意する必要があります。
以下の図はグローバル株式とグローバル債券を1989年末に50%ずつ組み入れてバイアンドホールドし続けた場合の ウエイト推移を示していますが、2023年11月末ではグローバル株式とグローバル債券の割合が73%と27%と大きく 変動していることが分かります。時価変動によって、意図せずに株式のリスクを大きく負ってしまうことになります。
米国の著名な投資家ジェレミー・シーゲルは著書で「長期にわたる配分にこだわること」を唱えており、定期的にリバランスを行い、定めた配分を維持することでお客さまの意図した運用を継続することの大切さを訴えています。
将来の資産リターンを予測することは困難です。
グローバル株式とグローバル債券のリターン推移を見ると、長期的にはグローバル株式が大きく上回りますが、1年毎のリターン比較で見ると、2000年のITバブル崩壊時や2008年のリーマンショック時などはグローバル株式は大幅に劣後しています。
そのため、時価変動で意図しないリスクを負って知らず知らずに大きな損失を被ることを防ぐために、定期的にリバランスを行うことで長期投資の有効性を更に高めることが期待出来ます。
そこでリバランスの有効性を示す一例として、組み入れる資産リターンが反転するような局面で、配分を一定に維持するポートフォリオがバイアンドホールドしたポートフォリオを上回ることを簡単な事例で示したいと思います。
スタート時に1,000万円を均等に500万ずつグローバル株式とグローバル債券に配分して、1年後に株式が+20%、債券が+1%上昇して、2年後には株式が▲20%下落して、債券が+1%上昇した場合、そのままでリバランスしない場合は株式の下落を大きく受けて約990万円と損失が残るのに対して、1年後に均等にリバランスした場合は1000万円と損失を防ぐことが出来ています。
また、リバランスに際して売買コストの影響を考慮することも重要です。
販売手数料がかかる投資信託で売買を繰り返すと、取引に伴う費用がお客さまの資産形成に大きな影響を もたらします。
さきほどのグローバル株式とグローバル債券を1989年末から100万円でスタートして、5年毎で次頁の様にリバランスした場合の運用残高の推移を見ると、2023年11月末時点で売買コストが無い場合で約1172万円になるのが、売買コストの影響で958万円に低下することが分かります。
資産運用では、将来の成長が期待できる資産に対して「継続して保有」することが大切です。
加えて、定期的にリバランスを行って売買コストを考慮しながら運用のリスクを適切に管理することが重要だと言えます。