インデックスファンドvsアクティブファンド
お客さまにお伝えしたいこと
- 金はインフレに強い資産との印象があるが、実際にはインフレ対策としては有効な資産ではない
- インフレ対策としては株式が有効、金は紛争や地政学リスクの高まり等で米国経済の信頼が低下した際の分散投資先として有効なので上手に使い分けて利用したい。
日本でもインフレに対する話題が取り上げられるようになっています。インフレで資産が目減りするのは、お客さまにも頭の痛い問題でもあり、資産運用でもインフレ対策が気になっているかもしれません。
インフレに強い資産としてお客さまが思いつくのは、金ではないでしょうか。実際にインフレ対策として金を取り上げる記事なども見かけます。
実際にはどうなのでしょうか? 2013年の論文では金のリターンがインフレによる影響を受けていないことが報告されており、次の頁の図表で縦軸に予期しないインフレ率(実際のインフレ率-予想インフレ率)、横軸に金の1年 リターンをプロットしたもので確認すると、1975年から2011年の間で1980年を除いて、インフレ対策として金は有効で無かったことが示されています。
資産としても、ある程度のインフレが見込まれる世界では、利息を生まない資産である金の投資対象としての魅力度は、著名な投資家であるウォーレン・バフェット氏が過去に「金には金利もつかず、配当もないため、投資する意味はない」とコメントしていた通り、株式・債券対比で劣後せざるを得なくなります。
実際に1973年から2023年までの米国において、消費者物価指数(CPI)の動きに対する金と株式の推移を比較すると、株式が大きく上回っており、インフレ対策の資産としては株式が有効であることが言えます。
また、日本において第2次世界大戦時のインフレに対して金が全く機能しなかったことも証左になるかと思います。
では、資産運用において金はどのような役割が期待できるのでしょうか?金はかつては通貨の価値基準として利用されていた通り、価値貯蔵機能があることが知られています。
先ほどの米国の事例で金が大きく上昇した局面を確認すると、以下の3つが挙げられます。
①1970年代後半から1980年にかけてイランイラク戦争やソ連アフガニスタン侵攻などの紛争激化で金が歴史的な高値となった局面
②2001年に起きたITバブル崩壊、世界同時多発テロ、2003年のイラク戦争といった地政学リスクの懸念等で上昇トレンドへ転換
③2020年コロナウイルス感染拡大で世界情勢の不安が蔓延したことで金が上昇
この3つの期間は何れも基軸通貨がである米ドル又は米国経済に対する信頼が低下した局面であり、実際に米ドル指数と金とのリターンをプロットした図を見比べるとマイナスの関係が確認できます。
このことから金は「有事の金」と呼ばれるように、米ドルの信頼が低下することへの対策には有効ではあるのですが、それ以外の期間について金価格の推移を見ると低減していることが確認できる通り、中長期的なインフレ対策との資産として金は不向きであることが分かります。
一般的に知られているように、金は株式や債券とは相関が低く、分散投資の対象としては有効な資産です。
但し、インフレ対策としては株式が有効な資産となりますので、上手に使い分けて運用して頂ければと思います。
【関連動画】インフレ対策としての金