ノートやチラシの裏も?メモ書きのような遺言書の法的有効性
自筆証書遺言は本人の自書による遺言書で、自分で作成し自分で保管できるという手軽さが人気です。しかし、時代の流れのなかで、遺言書をデジタル化しようという動きが出ています。ここでは、遺言書をデジタル化することによるメリットとデメリットについて説明していきます。
遺言書のデジタル化に向けた前進
政府は、2024年に遺言書のデジタル化に関する提言を行う予定で、実現すると、これまで自書が原則だった自筆証書遺言をインターネット上で作成できたりデジタル署名が可能になったりするといわれています。
遺言書のデジタル化に関する課題は次の通りで、これらを無事にクリアできれば、法的効力を持った遺言書をインターネット上で作成・保管できるようになるでしょう。
【デジタル化の課題】
※以下に関する対応が求められる。
- 本人確認
- 本人の意思確認
- 遺言書の形式の正しさの確認
- 電子文書による作成の可否
- ビデオ遺言の可否 など
デジタル遺言のメリットとデメリット
自書による作成が必須とされている自筆証書遺言ですが、デジタル化が現実となった場合、次に挙げるようなメリットとデメリットが生じるかもしれません。
デジタル遺言のメリット
遺言書がデジタル化された場合のメリットについてみていきましょう。
作成が容易になる
自筆証書遺言は自書で作成する必要があり、同時に、関連法に則った正しい形式を守らなければいけません。デジタル化が認められた場合、インターネット上にあらかじめ用意されたフォーマット(法律の定めに則った形式)を利用し、パソコンやスマートフォンで遺言書を作成できるようになることも考えられます。法律に定められたルールに沿った正しい自筆証書遺言の作成が可能になるので、遺言者の負担は軽減されるでしょう。
遺言書の保管場所に困らない
現行制度における自筆証書遺言書の保管は、自分自身で保管するか法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用するかの二択になります。
自分自身で保管する場合、死後に遺族が遺言書の存在を速やかに確認できるかが問題となってくるでしょう。法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用する場合は、法務局に出向いて手続きを行う面倒さもあります。
遺言書がデジタル化されれば、その保管場所は強力に保護されたインターネット上となることが考えられるので、紛失の恐れがなく、事前に家族にデジタル遺言書の存在を伝えていれば「遺言書が見つからない」というリスクも軽減されるでしょう。
改ざんリスクなどを回避できる
国として遺言書のデジタル化に取り組むことになれば、強力なプライバシー保護システムが構築されることが考えられます。これにより、第三者が不正に遺言書を書き換えるといったリスクを大きく抑制することが可能になるでしょう。
デジタル遺言のデメリット
遺言書がデジタル化された場合のデメリットについてみていきましょう。
パソコンやスマートフォンの使用が必須になる
インターネット上でデジタル遺言を作成・保管することになれば、手元のデバイスであるパソコンやスマートフォンを正しく使える必要があります。インターネットの概念を苦手としている人や高齢者などは、パソコンやスマートフォンを使用するうえで苦労を伴う可能性があります。
遺言者の遺言能力を判断する仕組みが必要である
自宅にいながらパソコンなどを使い1人で遺言書を作成できるようになった場合、デジタル遺言のシステムが遺言者の遺言能力をどこまで正しく判断できるかが、重要な議論テーマの1つになってくるでしょう。遺言者の意思能力や遺言内容の理解力、遺言により相続人にどのような変化が起こり得るかなど、本人の状態をオンラインで確認することの難しさを払拭しなければいけません。
まとめ
デジタル遺言のシステム構築が検討されている現在ですが、実現すれば遺言書作成に関わる負担が軽減され、改ざんリスクなどを回避でき、安全な状況下でしっかりと保管されることになります。ただし、理想的な仕組みを完成させるには相応の時間や試験利用も必要になるでしょう。
無事にデジタル遺言のシステムが構築されたあかつきには、遺言書を遺すという行為へのハードルが大きく下がるかもしれません。今後の動向に注目したいところです。