2世代先への財産承継を見据えた家族信託契約書のひな型例
昨今では独居高齢者が増えていることから、いわゆる「おひとりさま」として老後を過ごしている人が多くなっています。おひとりさまにとっての関心事項のひとつは、自分に何かあったとき誰が事後の処理をしてくれるのだろうかということでしょう。身寄りがなかったり身内と疎遠だったりする場合に備えて、どのような準備をしておくべきか説明していきます。
おひとりさまが老後に向けて考えるべきこと
おひとりさまは気楽に生活ができる分、高齢であることからさまざまなリスクも持つことになります。特に健康問題や生死にかかわる問題は深刻ですから、以下のことについて具体的に考えておく必要があるでしょう。
入院したり認知症などになったりした場合
病気やけがで入院・手術することになったときや、高齢や認知症などによって自分ひとりで生活することが難しくなったときのことを考えてみましょう。入院することになれば保証人が求められることになりますが、身寄りのない人の場合は保証人になってくれる人が見つからない可能性があります。
また、認知症などになった場合は一人暮らしすること自体が難しくなるため、高齢者施設に入所することも想定しておくべきでしょう。
自分が亡くなった場合
一般的な死後の手続きには、以下のようなものがあります。
- 死亡届など行政への届出
- 賃貸住宅や電話、水道光熱の解約と精算
- 遺品の処分
- 相続手続 など
これらの手続きには人の手を借りる必要がありますが、おひとりさまの場合、煩雑な作業を引き受けてくれる身内がいないことも考えられます。このような場合は、代替策を検討しておく必要が出てくるでしょう。
おひとりさまが終活で備えるべき3つのこと
では、おひとりさまは元気なうちにどのような準備をしておくべきなのでしょうか。ここでは3つのことについて説明していきます。
断捨離や身辺整理
終活を行う際、前提となるのは「自分が亡くなったときに備えて」という考え方です。このため、死後の作業をできるだけ簡素化する意味からも、元気なうちから断捨離をしたり整理をしたりすることが大切です。
葬儀に関する取り決め
おひとりさまの場合、生前から葬儀について自分の希望をきちんと記しておくことが大切です。万が一のことがあったときでも、疎遠だった身内や親類が希望に沿った葬儀をしてくれる可能性があるからです。
任意後見人制度の利用
自分の死後について積極的に準備を行うおひとりさまがいるなかで、つい忘れがちなのが「健全だが認知症などになった場合」であるということです。健全でありながら認知能力や判断能力が著しく低下してしまった場合に備えて、後見人に身の回りの手続きなどを行ってもらえるよう、あらかじめ後見人について取り決めておきましょう。
以上3つのことがらは、あくまでも生前のおひとりさまに関する対策になりますが、本当に大変なのは本人が亡くなったときの諸手続きです。身寄りがない人や身内と疎遠で協力が見込めない人などは、特に死後に関する対策を十分検討しておくことが必要になってきます。そこで注目されるのが死後事務委任契約なのです。
死後事務委任契約を結び死後に備える
人が亡くなると、さまざまな契約ごとの解消や未払い料金の精算などの手続きが多々発生します。そこで、ほかに身寄りがなかったり、身内と疎遠で面倒を見てくれる人がいなかったりする場合に備えて、これら事務手続きを第三者に依頼できる仕組みを死後事務委任契約といいます。
依頼する相手は、友人はもちろん行政書士などの法律の専門家でも問題ありません。通常は身内や親類が行うべき諸手続きですが、おひとりさまの場合は境遇が特殊であるため、できれば法律の専門家と死後事務委任契約を結ぶことで自分の死後対策をとっておくことがとても大切なのです。
これにより、種類が多く煩雑な死後の事務手続きを安心して任せることができるので、本人はもちろん疎遠な身内に対する負担も軽減できることになるでしょう。
まとめ
おひとりさまにとって、死後事務委任契約を結んでおくかどうかは心理面で大きな違いが出てきます。例えば自分の葬儀ひとつとっても、以下のような希望を実現してもらうことができるからです。
- 永代供養としてほしい
- 先祖代々の墓に入れてほしい
- 友人に残したいものがあるので渡してほしい
- メールアドレスの削除をしてほしい など
こういった各種の希望に対して、受任者はできる範囲で最大限の業務を遂行しますから、おひとりさまにとってどうしても叶えたい死後の希望を託すことが可能になるのです。
当事務所でも死後事務に関するお問い合わせを承っており、死後事務委任契約を結ぶ前には生前のおひとりさまからしっかりとご要望をヒアリングし、できることとできないことを明確にします。そのうえで、両者納得の形で契約を締結していく流れとなります。おひとりさまとして暮らしていて、ご自身の死後について不安なことがあれば、ぜひ当事務所までご相談いただけますと幸いです。