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破産事件プチ増加

今枝仁

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 毎年多かれ少なかれそういう傾向がありますが、年末を迎えるにあたって、破産の依頼や相談が増えてきました。もちろん数年前のピークには及びませんが、ここ数ヶ月に比べると確かに増えています。

 これまでなんとか一生懸命頑張ってきた個人さんや会社も、年の瀬を迎えて、「このまま年を越すのは、もう無理」と感じ、一大決意をするようです。

 しかし、最近は破産法も改正され、破産することのデメリットは、世間で思われているほど大きくはありません。
自宅に債権者が押しかけてきて、家財道具を差し押さえられるというようなことはありません。選挙権など公民権が無くなるということもありません。
 
 多くの一般的な個人の場合、7年間ブラックリストに載るので、その間本人(家族は別)が借り入れをしにくくなる程度です。それがほとんど唯一のデメリットと言っても過言ではありませんが、考えてみれば7年間借り入れがしにくいということは、再び多重債務に陥らないためにはメリットとも言えます。なお、ブラックリストは一つの情報に過ぎず、金融機関はそれを参考にするというだけで、載っていても経済状況によれば借りられる場合も多いというのは意外と知られていません。私自身、過去に過払い金返還請求をしたことがあるのでブラックリストに載っていますが、マイカーローンなどの審査は通りました。
 
 他にも細々、官報に名前が載るだの、市町村役場の破産者名簿(銀行や弁護士が見せろと言っても見せないほど管理が徹底している)に名前が載るだの、細かいことがありますが、事実上ほとんどデメリットにはならないものばかりです。

 ただし、不動産など財産があったり、事業を経営していた人の場合は、破産管財事件になって、一定期間、財産や郵便を破産管財人に管理されますが、大きな債務を免責されるメリットに比べれば小さなものでしょう。
 
 むしろ破産することで、個人の場合は債務がリセットされて、基本的には無くなりますから(悪質な浪費や偏波弁済などの行為があると、債務の1割前後払わされることがあります)、医療で言えば思い切って手術を受けるようなものだと思います。手術により一気に疾病が無くなるという効果は、身体が負うダメージをはるかに超える価値があります。手術が必要なほど悪化していなければ、薬物療法(債務整理や個人再生等)を選択すればよいのです。
 
 破産手続を終えた皆さん、「債務が免責されて、晴れやかな気分になった。頭のモヤモヤがとれた。思い切って破産にして良かった。もっと早く決断していればもっと楽だった」等言われます。破産して後悔している人は、見たことがありません。
 
 もっとも、自宅やマンションのローンも含めて破産免責を受ける場合や、中小企業で代表者や親族らが個人の土地建物などを、会社の債務の保証に充てている場合などは、基本的にはそれらを手放す覚悟は必要です。それでも、そのような場合に追っている莫大な借入債務や保証債務を免責されるメリットの方が、失うものよりも価値が大きい場合が多いでしょう。

 いずれにしても、弁護士に相談する等して、今後の道筋を見極めるべき時期の一つが、年末なのだろうと思います。
 
 昔は「破産」というと、いかにも暗くて後ろめたいイメージがあったかもしれませんが、新しい人生を切り開くための明るいステップになるかもしれません。

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今枝仁
専門家

今枝仁(弁護士)

今枝仁法律事務所

今枝仁は、東京地方裁判所刑事部事務官、東京地方検察庁検事、弁護士となってからも公益社団法人広島被害者支援センターの監事を務めており、いろいろな角度から数多くの事件や当事者を見てきました。

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