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中小企業経営者が陥りやすい「分散症候群」について、30年間のベテラン税理士としての経験から解説いたします。
分散症候群の本質
分散症候群は、経営者の「新しいことにチャレンジしたい」「事業を拡大したい」という本来は素晴らしい資質が災いして、皮肉にも経営を蝕む病となってしまう状態のことを言います。
主な症状
・商品・サービスの無秩序な拡大
・顧客層の制限のない拡大
・事業領域の際限のない拡張
・経営資源をかえりみない分散
・各商品・サービスの品質低下
なぜ危険か
最も危険なのは、経営者本人がこれを「積極的な経営努力」と誤認識していることです。 実際には以下のような弊害が生じています
・経営資源が分散され、本来の強みが薄まる
・商品・サービスの質が低下
・顧客満足度が下がる
・コスト増で収益性が悪化
・組織が複雑に変化、ミスや非効率が増加
治療法
1. 商品・サービスの集中と選択
ある製造業の顧問先は、取り扱う製品を従来の1/3に絞り込むことで、利益率を2倍に改善させました。
2. 顧客層の明確化
すべての顧客に対応しようとせず、自社の強みを最大限に活かせる顧客層に特化することが重要です。
3. 事業領域の集中
本業への経営資源の集中が競争力強化の基本です。新規事業は本業の競争力を落とさない範囲内で慎重に判断する必要があります。
予防のポイント
コアコンピタンの魅力
・自社の本当の強みの再確認
・競争優位性のある領域の特定
・顧客が評価してくれている点の理解
経営資源の最適配分
・人材・資金・時間の効率的な配分
・注目分野への優先的な資源投下
・不採算分野からの撤退
経営者への提言
30年の実務経験から、以下のことを強く信じています。
・新規事業は既存事業の競争力確立後に検討すべき
・経営資源は「点」に集中させ、圧倒的な強みを作る
・「あれもこれも」ではなく「これだけ」という姿勢を持つ
松下幸之助氏の言葉「商売は牛のよだれか」という言葉が示すように、一点に集中し、そこから徐々にと展開していくことが、持続的な成長への王道なのです。