横田印房の考える佳い印章
横田印房にははんこを彫る者が3人います。
社長の私・横田泰行、父・横田啓二(号:丹采)と職人・林田茂美の3人なんですが、今日は林田茂美さんについて紹介させて頂きます。
林田茂美さんは昭和5年熊本市生まれ、熊本で印章彫刻の道に進み、昭和42年に横田印房に入社、昭和46年には一級技能士の資格を取得、その時に受験者中最優秀と認められ、県知事を受賞しました。
我が社では、実印や銀行印などのほかゴム印なども手がけ、今年で勤続
45年目を迎えることになりました。
これまで、広島ホームテレビの「技の人」やNHKの「ふるさとの匠」等に出演して、その技を披露してきました。
私は職人としての林田さんを心から尊敬しています。
何が良いのか。どこがすごいのか。
まず、
・線の切れ味がすごい。(特にテン書などの時は感じます)
・文字の形に温かみを感じます。(古印体なんか本当にあったかい感じです)
・デザインが明るいんです。
(持つ人に明るい気持ちになってほしいと願いながらデザインを考えるんだそうです)
・押す時には、ピタッと紙に吸い付くようで、きれいな印影が押せます。
(普通は薄い冊子の上とか少し柔らかい捺印マットなどの上で押した方がきれいに押せるのですが、林田さんの彫った印は硬いガラスの上で押してもきれいな印影が押せるのです)
それから、印章彫刻一筋の生き方もかっこいいんです。
若いときは技術一本で全国行脚したいと思っていたそうです。
実際、ウチに来るまで、各地の印章店で彫っていたそうですが、ウチに来てからも、いつだったか、「車に道具を積んで、各地を旅しながら、皆さんの目の前ではんこを彫る、移動はんこ屋みたいな事をしたいなあ。」
なんて話も聞いたことがあります。
家族が増えて、仲間が出来て、何故か広島の空気がなじんでしまい、横田印房に居ついて、いつのまにか40年以上も経ってしまったと言われてました。
そんな林田さんがいつも言ってること。
「以前に自分が彫ったはんの印影を見ていると、へただなあと思うことがある。ということは、また少し自分は進歩したんかなあと思うんだ。だから、年をとればとるほど、自分は上達すると信じているよ。」
80歳にしてまだ進歩する。すごいなあと思います。
今日は林田さんが彫っているところを横で激写してしまいました。
素人写真ですが、少しでも手彫りの技術の臨場感を感じてもらえたらと思い、掲載させていただきます。