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第2回 住宅の耐震性 全2回

深澤一喜

深澤一喜

テーマ:同じ「耐震等級3」でも

同じ「耐震等級3」でも、中身は同じではありません|確かめ方の3つと、家を建てる前に確認したいこと

深健工舎の一級建築士大工のカズ こと 深澤一喜です。群馬県前橋市を中心に、伊勢崎市、玉村町、高崎市、渋川市、北群馬郡で、自然素材を使った高気密・高断熱・高耐震で居心地の良い快適な家を家を手掛る、設計事務所併設の大工工務店です。

前回は、建築基準法が「命を守るための最低限の基準」であること、その上に住宅性能表示制度と耐震等級があること、そして私が構造のルールにこだわる理由を書きました。今回はその続きです。同じ「等級3」でも中身が違うという話と、数字の裏にある設計の考え方、そして家を建てる前に確認してほしいことを書きます。

同じ「等級3」でも、確かめ方は3つあります

ここからが今回の本題です。木造2階建ての住宅で強さを確かめる方法は、大きく分けて3つあります。

ひとつ目は壁量計算(仕様規定)です。必要な壁の量が足りているか、バランスよく配置されているかを確認します。かんたんに言えば「必要な壁の量をざっくり数える」方法です。

ふたつ目は性能表示の計算です。壁量計算に、床や屋根の強さ、梁の大きさなどのチェックを加えたものです。「壁だけでなく、床・屋根・梁まで確認する」方法です。

みっつ目が許容応力度計算(構造計算)です。柱1本、梁1本、接合部ひとつひとつにかかる力と、それぞれが耐えられるかを確かめます。「家じゅうの部材に一本ずつ健康診断をする」方法です。

ただし、壁量計算や性能表示の計算が「いい加減」というわけではまったくありません。法律で定められた方法で、正しく行われれば意味のある確認です。違いは、確かめている中身の細かさと、見えている力の範囲です。

耐震等級3は、2つ目の方法でも3つ目の方法でも取ることができます。どちらも制度上は同じ「等級3」です。けれど、壁量計算が見ているのは主に「壁の量」、許容応力度計算は「部材一本ずつの力」まで見ています。同じ等級3でも、中身は同じではありません。

なぜ「許容応力度計算で等級3」にこだわるのか


当社が新築で許容応力度計算を基本にしている理由は、主に3つです。

① 「どこに、どれだけ力がかかるか」が見えるから。
許容応力度計算では、地震や風、建物と家具の重さ、雪などがかかったとき、どの部材にどれだけの力がかかるかを数字で確かめます。壁の量だけでは見えない、梁のたわみや柱の引き抜き、基礎への力まで確認できます。

② 間取りの自由と、強さを両立できるから。
大きな吹き抜け、広いLDK、大きな窓。暮らしやすい間取りほど、構造には負担がかかります。一本ずつ計算するからこそ、「ここは補強が必要」「ここは今のままで大丈夫」と、根拠を持って判断できます。結果的に無駄に大きい材料を減らして単価を抑えることにつながります。

③ 「住み続けられる家」を目指したいから。
2016年の熊本地震では、震度7が2回続けて起きました。国土交通省の「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」の報告では、対象となった耐震等級3の木造住宅16棟のうち、無被害が87.5%(14棟)で、大きな損傷は見られなかったとされています。ただし、16棟という限られた調査で、すべての住宅の被害を断定するものではありません。それでも、倒壊しないだけでなく、地震のあとも自宅で暮らし続けられること。それが、家族と暮らしを守ることだと考えています。

地震に限らず災害が起きた後のその地域の工事単価はかなり高額な工事代金なり、建て替えはもちろん、修繕すらできない事例があちこちの災害を経験した地域から聞こえてきています。

数字の裏にある「設計の考え方」


セミナーで一番心に残ったのは、計算式そのものより、その手前にある考え方でした。
普段、構造計算は専用のソフトを使って行います。けれどこの講座では、あえて基本的な部分を手計算で演習問題として解きました。電卓を叩きながら、力がどの部材からどの部材へ伝わるかを一つずつ追いかけていく。ソフトの中で何が起きているのかを、自分の手で確かめる時間でした。

計算ソフトに数字を入れれば、答えは出ます。けれど、力がどう流れていくか。屋根から柱、柱から基礎、基礎から地盤へと、力のつながりを頭で描けていなければ、本当に強い家にはなりません。計算は、良い設計を「確かめる」道具であって、設計そのものを代わりにしてくれるものではない。そのことを改めて教えられました。

そして、今回のセミナーで一番強く思ったのは、「許容応力度計算をしているから大丈夫」ではなく、「この建物なら大丈夫」と言える設計をしたい、ということです。許容応力度計算はたしかに強力な裏付けですが、計算さえ通ればどんな形でもよい、というわけではありません。まず力のかかり方、力の流れ方を意識して形をつくり、そのうえで計算で確かめる。計算は主役ではなく、最後の確認役です。

そしてもうひとつ。設計者と現場の大工が同じ認識を持つことの大切さです。図面どおりに金物が付いていなければ、どんなに精密な計算も意味がありません。設計と施工をつなぐ工務店として、ここは決して手を抜けないところです。

一級建築士大工の墨出し


墨出しは、現場で基準の線を引く作業です。最初の線がずれると、あとの仕事が全部ずれます。設計も同じで、「どう力を受けるか」という最初の線がずれていると、あとから計算でいくら整えても取り返しがつきません。

私は許容応力度計算をした建物の建て方(柱や梁などの構造材を組み立てる作業)に、何度も参加してきました。梁の上に上がると、建物の揺れ方がはっきり違うのがわかります。数値では見えない、体で感じる差です。計算書の一枚と、現場で体に伝わる感覚。その両方を持ちながら家をつくっていきたいと思っています。

これから家を建てる方に、確認してほしい3つのこと


家の強さは、完成すると壁の中に隠れて見えなくなります。だからこそ、建てる前に「どう確かめたか」を知っておくことが大切です。打ち合わせでそのまま使える質問を、3つ置いておきます。

1.耐震等級はいくつですか。
2.その等級は、どの方法で確かめていますか。(壁量計算か、許容応力度計算か)
3.評価書や計算書はもらえますか。


答えに迷う会社が悪い、というわけではありません。ただ、質問したときの反応は、その会社がどこまで構造を見ているかを知る、ひとつの手がかりになります。

「耐震等級は3です」という言葉だけで、安心しないでください。**その3が、どうやって確かめられた3なのか**まで聞いてみてください。それに答えられる会社は、家の強さを自分の言葉で説明できる会社です。家は完成したら壁の中に隠れてしまうから、建てる前に、遠慮なく聞いてみてください。

2回を通じて、お伝えしたかったこと


建築基準法は「倒壊しない」ための最低限の基準です。その上に住宅性能表示制度があり、耐震等級3は等級1の1.5倍の地震力に耐える水準として位置づけられています。

そして、同じ「等級3」でも確かめ方はひとつではありません。許容応力度計算は、柱や梁、接合部を一本ずつ確かめる方法です。当社は新築の基本仕様として、こちらを採用しています。

グレー本が改訂されても、変わらないのは「根拠を持って、安全な家をつくる」という基本です。学び続けることも仕事のうち。これからも、目に見えないところこそ丁寧に家づくりをしていきます。

こんなご相談からで大丈夫です


「耐震等級3にしたい。どこまで考えればいい?」
「吹き抜けや大きな窓と、耐震性は両立できますか?」
「うちの間取りで、構造的に無理がないか知りたい」
「評価書や計算書を見て、内容を説明してほしい」

最初のご相談では、図面がなくても構いません。「新築の耐震について相談したい」と、お気軽にご連絡ください。「この家で、これからも安心して暮らすには何が要るか」を、一緒に具体化していきましょう。

一級建築士大工のカズ こと 深澤一喜
深健工舎/大工工務店2代目・一級建築士
構造塾で木構造の耐震性を学ぶ
群馬県前橋市を中心に、伊勢崎市・玉村町・高崎市・渋川市・北群馬郡で対応しています。
根拠のある提案と、誠実な対応をお約束します。

参考資料
・国土交通省|新築住宅の性能表示制度 かんたんガイド(耐震等級)
 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001970909.pdf
・国土交通省|住宅・建築物の耐震化について
 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr_000043.html
・国土交通省|熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会 報告書
 https://www.mlit.go.jp/common/001155087.pdf
・公益財団法人 日本住宅・木材技術センター|木造軸組工法住宅の許容応力度設計(2025年版)
 https://www.howtec.or.jp/smarts/index/294/

※本コラムの参考情報は2026年10月時点の各公式サイトの記載に基づきます。法令・制度は改正されることがありますので、最新は国土交通省やお住まいの自治体の公式情報でご確認ください。

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専門家

深澤一喜(建設業)

深健工舎

「断熱性能」「気密性能」「耐震等級」に独自の基準を設け、省エネや耐震を考えた家を設計。できるだけ自然素材を用い、化学物質過敏症などに悩む方に寄り添った家づくりを提案しています。

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