第3回 大工が見ている災害の備え 全5回
台風の前日にできることは、あまりありません|勝負は晴れた日の一回り
深健工舎の一級建築士大工のカズ こと 深澤一喜です。群馬県前橋市を中心に、伊勢崎市、玉村町、高崎市、渋川市、北群馬郡で、自然素材を使った高気密・高断熱・高耐震の家を、新築・リノベーション・リフォーム工事で手掛けています。心地よい快適な家をつくる設計事務所を併設の大工工務店です。
今回から5回に分けて、自然災害への備えを建物を直す側の大工目線で書きます。第1回は台風、第2回は水害、第3回は地震、第4回は台風のあとに来る訪問業者、第5回はまとめです。備蓄リストや避難の心得は公的機関がしっかり出していますので、そこは出典をご紹介するにとどめ、大工が現場で見ているところに紙面を使います。
「明日来るんですが、何かしておいたほうがいいですか」
台風が近づくと、こういうお電話が増えます。正直にお答えします。
前日にできることは、あまりありません。
雨戸を閉める。庭の飛びそうなものをしまう。雨どいの詰まりを取る。停電に備えて充電しておく。これでほぼ終わりです。工事はできませんし、屋根に上がるのは危険です。
では何が効くのか。晴れている日に、一度家を一回りしておくことです。
台風の翌日に「雨漏りした」「屋根の板金がめくれた」とご連絡をいただき、うかがってみると、多くの場合その台風で突然壊れたわけではありません。前から傷んでいたところに強い風雨が当たって、表面化したのです。そういう箇所はたいてい、晴れた日に地上から見上げれば気づけます。浮いた板金、ずれた瓦、切れたシーリング。台風の備えでいちばん効くのは、養生でも土のうでもなく、平常時の一回りです。
台風の前日にやること(効く順)
1.庭とベランダを片づける。植木鉢、物干し竿、自転車、ゴミ箱、サンダル。自分の家の窓を割るのは、たいてい自分の家の物です。いちばん効いて、いちばん簡単です。
2.雨どいと排水口の詰まりを取る。落ち葉や土で詰まると、水があふれて外壁を伝い、内部に回ります。手の届く範囲だけで構いません。
3.雨戸・シャッターが最後まで閉まるか確かめる。いざという日に動かない、というのが本当にあります。渋ければレールのゴミを取ってください。
4.停電に備える。モバイルバッテリーを充電し、懐中電灯の電池を確認します。浴槽に水を張っておくと、断水したときのトイレの流し水になります(首相官邸の備えのページにも書かれている方法です)。
5.浄化槽・ますのふたが嵌まっているか見る。浮き上がりと逆流の入口になります。 屋根には、絶対に上がらないでください
台風前の慌ただしい時期に、屋根から落ちる事故が毎年起きています。ブルーシートをかけるのも同じです。見えないところは、足場と安全帯を使う施工者の仕事です。台風が接近している当日は、私たちも上がりません。
間に合わない備えは、あきらめるのが正解です。命のほうが先です。
通過後は、地上から見る
風が収まったら、次のところを見てください。すべて屋根に上がらずに見られる場所です。
地面のまわり――瓦の破片、板金の切れ端、留め具が落ちていれば、屋根のどこかが欠けています。
天井・壁のしみ――小さくてもご連絡を。乾くと見えなくなり、次の雨で広がります。
窓まわり・サッシの下――拭いて終わりにせず、水が入った経路を確かめます。
雨どい――継ぎ目のずれや外れは、次の雨で外壁を濡らし続けます。
外壁――傷そのものより、そこから水が入るかどうかです。
ドア・引戸の動き――急に閉まりにくくなったら、建物が動いたサインのことがあります。
屋根(見上げて)――瓦のずれ、板金の浮き、棟のゆがみ。見えた分だけで判断しないでください。
見つけたら、日付が残る形で写真を。引きと寄りの2枚あると、修理の相談でも保険の手続きでも役に立ちます。ただし、この一回りで「異常なし」でも、屋根の上と天井裏は見えていません。強い台風の後で気になることがあれば、施工者に見てもらうのが確実です。
そして、この記事を台風の前日に読まれた方へ。今回は雨戸と庭で十分です。台風が過ぎて晴れたら、そのときに一回りしてください。
次の台風のための備えは、次の晴れた日にしかできません。
次回は水害です。風と水では、備えの順番がまったく違います。
一級建築士大工のカズ こと 深澤一喜
深健工舎/大工工務店2代目・一級建築士
群馬県前橋市を中心に、伊勢崎市・玉村町・高崎市・渋川市・北群馬郡で対応しています。
根拠のある提案と、誠実な対応をお約束します。
参考資料
・首相官邸|災害が起きる前にできること
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/bousai/sonae.html
・首相官邸|災害の「備え」チェックリスト(PDF)
https://www.kantei.go.jp/jp/content/000182715.pdf
※本コラムの参考情報は2026年9月28日時点の各公式サイトの記載に基づきます。制度・目安・地図の内容は更新されますので、最新は各公式サイトでご確認ください。


