第3回 大工が見ている災害の備え 全5回
水害への備えは、建物より「いつ出るか」が先|ハザードマップの読み方
深健工舎の一級建築士大工のカズ こと 深澤一喜です。群馬県前橋市を中心に、伊勢崎市、玉村町、高崎市、渋川市、北群馬郡で、自然素材を使った高気密・高断熱・高耐震の家を、新築・リノベーション・リフォーム工事で手掛けています。設計事務所を併設した、心地よい快適な家をつくる大工工務店です。
自然災害への備え、第2回は水害です。水害は台風対策の一部のように語られがちですが、中身が違います。風は建物を壊し、水は建物の中に入ってくるからです。
まず、ご自宅が何に弱いかを知る
「防災」とひとまとめにすると、どれも中途半端になります。私は、予告があるかどうかと、と、何が家を壊すかで分けて考えています。台風は数日前から予告があり、屋根や外壁がめくれる。水害も多くは予告があり、建物の中に水が入る。地震は予告がなく、建物が変形し家具が倒れる。
とはいえ、きれいには分かれません。台風は水害を連れてきます。ですので先に、ご自宅がどの災害に弱いのかを調べる必要があります。
それを調べるのがハザードマップです。国土交通省・国土地理院の「ハザードマップポータルサイト」で、住所から確認できます。洪水・土砂災害などのリスクを重ねて見られる「重ねるハザードマップ」と、市町村が作成した地図を探せる「わがまちハザードマップ」の2つの入口があります。あわせて、お住まいの市町村と群馬県のハザードマップもご確認ください。
色がない=安全、ではありません
ハザードマップは「ここは危ない/安全」を断定する地図ではありません。想定した条件のもとでの予測です。想定を超える雨が降れば、色のついていない場所でも浸水します。
塗られている色は、備えの優先順位を決める材料。色がないから何もしなくていい、という読み方はしないでください。
群馬県は海に面していませんが、河川の氾濫と内水氾濫(雨水が排水しきれず、街の側から水があふれること)のリスクはあります。「うちは津波が来ないから大丈夫」ではありません。
考える順番は3つ
1.避難のタイミングを先に決める。水害でいちばん大事なのは、建物対策ではなく、いつ出るかです。自治体の避難情報のどの段階で動くか、どこへ行くか、誰と行くかを、平常時にご家族で決めておいてください。夜間や雨のピーク時の移動は危険です。早めに出るのが基本です。
2.水が入る前提で、置き場所を決める。**想定浸水深が床上に及ぶ地域なら、大事なものと備蓄は2階へ。車の避難先も決めておきます。
3.建物側の対策は、その後。止水板、土のう、玄関前の段差。効果はありますが、「間に合う範囲の水を止める」ための道具です。想定浸水深が1メートルを超える地域で、止水板を頼りに家に残る判断はしないでください。
備蓄は公的な目安どおりで。置き場所だけ気をつけて
備蓄は、首相官邸の「災害が起きる前にできること」の目安がそのまま使えます。飲料水は1人1日3リットルを3日分、非常食も3日分。トイレットペーパー、携帯トイレ・簡易トイレ、カセットコンロなどの生活必需品。大規模災害に備えるなら1週間分が望ましく、飲料水とは別に生活用水も必要です。
建物の側から付け加えるのは一点、置き場所です。浸水のおそれがある地域なら、床に近い場所の備蓄は使えなくなります。2階か、せめて腰より高い位置に。せっかく備えたものが取り出せない、というのがいちばんもったいない。
建てる前・直す前なら、もっと手前で効く
新築やリノベーションを計画する段階なら、設計で効く選択があります。基礎を高くする。分電盤、コンセント、給湯器や室外機を高い位置に設ける。1階に大事な設備を集めない。設計で決まってしまうことは、後から直すと高くつきます。
浸水想定のある土地に建てるなら、間取りより先に、この話をさせてください。
次回は地震です。予告がないぶん、平常時にやっておくことがそのまま備えになります。前橋市の無料の耐震診断もご紹介します。
一級建築士大工のカズ こと 深澤一喜
深健工舎/大工工務店2代目・一級建築士
構造塾で木構造の耐震性を学ぶ
群馬県前橋市を中心に、伊勢崎市・玉村町・高崎市・渋川市・北群馬郡で対応しています。
根拠のある提案と、誠実な対応をお約束します。
参考資料
・国土交通省・国土地理院|ハザードマップポータルサイト
https://disaportal.gsi.go.jp/
・首相官邸|災害が起きる前にできること
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/bousai/sonae.html
※本コラムの参考情報は2026年9月28日時点の各公式サイトの記載に基づきます。制度・目安・地図の内容は更新されますので、最新は各公式サイトでご確認ください。


