第2回 ヒートショック対策 全3回
[大見出し]第3回 ヒートショック対策 工事の話]
内窓という現実的な一手|浴室改修と補助制度の考え方
深健工舎の一級建築士大工のカズ こと 深澤一喜です。群馬県前橋市を中心に、伊勢崎市、玉村町、高崎市、北群馬郡で、自然素材を使った高気密・高断熱・高耐震の家を手掛けています。
第1回は危険の正体と0円でできる習慣、第2回は窓・浴室・脱衣所の3点セットと対策の3段階を書きました。最終回は段階3、です。
工事の手法を比較する
同じ「浴室の寒さを直す」でも、工事の範囲と得られる効果はまったく違います。名前だけで選ばないための整理として、それぞれ現地で何を確認するかを添えます。
内窓(二重窓)
既存の窓枠の形状、取り付ける奥行きがあるかを確認します。かんたんに言えば「窓と窓の間に空気の層をつくる」工事です。
ガラス交換
今のサッシにどの厚みのガラスが入るかを確認します。「ガラスだけ性能の高いものにする」工事です。
サッシごと交換(カバー工法)
既存枠を残せるか、外壁との取り合いを確認します。「枠まで新しくして、すきまも直す」工事です。
浴室暖房乾燥機
電源の容量、換気ダクトの経路、天井の点検口を確認します。「入る前に、浴室をスイッチで暖める」設備です。
ユニットバスへの入替
土台と柱の状態、寸法、給排水の位置を確認します。「箱ごと入れ替えて、底冷えを断つ」工事です。
ただし、手法が決まっても、その家でできるとは限りません。とくに内窓は、今の窓枠の形と、枠のまわりに取り付ける奥行きがあるかどうかで可否が変わります。ユニットバスへの入替も、在来浴室では土台や柱が湿気で傷んでいることがあり、開けてみて判断することがあります。「この家ならこれができる」は、現地で確認してからのご提案になります。
内窓という、現実的な一手
この中で、私が最初にお勧めすることが多いのは**内窓**です。理由は3つあります。
1.工事が軽い。既存の窓の内側に、もう1枚の窓を取り付けるだけです。多くの場合、1か所1時間程度で、壁を壊しません。
2.住みながらできる。浴室の入れ替えのように、お風呂に入れない日が続くことがありません。
3.効果が体感しやすい。脱衣所の底冷えと、窓ぎわの冷たい空気の流れ(コールドドラフト。冷えた窓で空気が冷やされ、床に向かって流れ落ちる現象です)が、はっきり減ります。結露も同時に減ります。
費用は窓の大きさや仕様で変わりますが、脱衣所と浴室の小窓2か所であれば、数万円台からの範囲に収まることが多い工事です。これも一つの目安であって、枠の形状によって下地づくりが必要になれば上がります。
よくいただく2つの質問
内窓はいくらかかりますか?
窓の大きさ、ガラスの仕様、下地の状態で変わります。小窓2か所なら数万円台からの範囲に収まることが多い、というのが目安です。補助制度を使える年度は実質の負担が下がりますが、金額は年度ごとに変わるため、現地を見たうえでその時点の条件でご提示します。
浴室暖房と内窓、どちらが先ですか?
私は 窓を先に とお答えすることが多いです。窓が冷えたままだと、暖房で作った熱がそこから逃げ続けます。ただし、すでに複層ガラスが入っている、窓が小さい、脱衣所に電源がない――そうした条件では、暖房を先にしたほうが効くこともあります。ここは現地を見ないと判断できません。
補助制度について、正直に書けること
内窓の設置を対象とした国の補助制度があります。2026年度は「先進的窓リノベ2026事業」が該当します。
ただし、このコラムに補助額は書きません。要件・補助額・受付状況は年度ごとに変わり、予算上限に達した時点で締め切られます。金額を書いた文章は、読まれた時点でもう古くなっていることがあるからです。必ず当年度の公式サイトで最新の条件をご確認ください。
もう一点、ご注意いただきたいことがあります。この制度は、当社のような登録事業者を通した申請が前提になります。お客さまがご自身で申請する仕組みではありません。ご検討の段階で、工事をお願いする会社が登録事業者かどうかを確認してください。
浴室そのものを替える場合
浴室を在来工法からユニットバスへ替えるのも有効です。底冷えの原因である床と壁を、断熱性のある箱ごと入れ替えます。
ただし費用も工期も一段上がります。お風呂に入れない日も出ます。そして在来浴室では、解体して初めて土台や柱の傷みがわかることがあります。
急ぐ順番としては、その前に窓です。まず内窓、様子を見て浴室本体
、という順番で十分効く現場が多い、というのが率直なところです。
3回を通じて、お伝えしたかったこと
ヒートショックは、寒さを我慢するかどうかの話ではありません。体が対応できる速さを超えた温度の急変が、家の中で起きているという話です。
だから対策は、窓・浴室・脱衣所の3点セットで考えます。既存住宅の断熱に義務はなく、冬に10度を下回る脱衣所はごくふつうに存在します。直すかどうかは、住まい手が決めるしかありません。
そして順番です。まず習慣、次に脱衣所の暖房機、そのうえで窓、そして浴室そのもの。入浴の20〜30分前に脱衣所を暖める、お湯はりの最後の5分をシャワーにする、湯温は41度以下で10分まで。ここまでは費用がかかりません。設備を売る前に、お金のかからない順番からご提案する。3回を通じて、これをお伝えしたかったのです。
深健工舎では、現地で浴室・脱衣所・窓の状態を確認し、まず費用のかからない対策をお伝えしたうえで、工事が必要な部分の優先順位、気密、自然素材、将来の維持管理まで含めて、ご家族ごとの計画を一緒に考えます。
最初のご相談では、図面がなくても構いません。どこが寒いか、いつ寒いか、誰が使うか。それだけで話が始まります。現地を見て、「まだ工事は要りませんね」とお伝えすることもあります。
冬は、必ず来ます。この冬を、家族が安全に過ごすには何が要るか。
一緒に具体化していきましょう。
なお、このコラムは医療の助言ではありません。持病のある方、血圧の薬を飲んでいる方は、必ずかかりつけの先生にご相談ください。私が書けるのは、建物側からできることだけです。
一級建築士大工のカズ こと 深澤一喜
深健工舎/大工工務店2代目・一級建築士
群馬県前橋市を中心に、伊勢崎市・玉村町・高崎市・渋川市・北群馬郡で対応しています。
根拠のある提案と、誠実な対応をお約束します。
参考資料
・滋賀県|ヒートショック対策について
https://www.pref.shiga.lg.jp/eg00/4000.html
・消費者庁|冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_013
・政府広報オンライン|交通事故死の約3倍?! 冬の入浴中の事故に要注意!
https://www.gov-online.go.jp/article/202111/entry-9952.html
・環境省|先進的窓リノベ2026事業
https://window-renovation2026.env.go.jp/
・国土交通省|省エネ基準引き上げへ。脱炭素化も。
https://www.mlit.go.jp/shoene-jutaku/


