小学生の起業家教育とは?世界の事例に学ぶ、お店づくりで育つ5つの力

ビジネスごっことは、お店屋さんごっこに「値段を決める」「お客さんに売る」「売り上げをふり返る」をくわえた、家でできる小さなお店の練習です。
お店屋さんごっこは、多くの子どもが一度は遊んだことがあると思います。品物をならべて、「いらっしゃいませ」と言い、おもちゃのお金をやりとりする。それだけでも楽しい遊びです。
でも、少しだけルールを足すと、遊びが「稼ぐ力」の練習に変わります。このコラムでは、親子で家でできるビジネスごっこの進め方を、5つのステップで紹介します。
お店屋さんごっことビジネスごっこのちがい
ちがいは、たった1つです。お店屋さんごっこは「売るまね」で終わります。ビジネスごっこは、売ったあとに「いくら残ったか」「次はどうするか」まで考えます。
会社の社長が毎日していることも、じつはこの2つです。売ること。そして、売ったあとにふり返ること。ごっこ遊びの中でこの流れを何度もくり返すと、子どもは自然と、お金が生まれる順番を覚えていきます。
親子で進める、ビジネスごっこの5つのステップ
最初は家族だけをお客さんにして始めます。慣れてきたら、少しずつ本物のお客さんへ広げていきましょう。
1. お店を決める:家にある物で、できるお店をえらぶ
まず、どんなお店を開くかを子どもに決めてもらいます。おにぎり屋さん、ジュース屋さん、マッサージ屋さん、折り紙屋さん。家にある材料でできるお店がおすすめです。
お店の名前と、かんばんも子どもがつくります。名前を考えるだけで、子どもは「社長」の顔になります。
お店のメニュー表もつくってみましょう。品物の名前と絵をかき、値段のところは空けておきます。値段は、次のステップで決めるからです。
2. 材料のお金を知る:仕入れの練習をする
ここが、ごっこ遊びとのいちばんのちがいです。お店を開く前に、材料をおうちの人から「買って」もらいます。
たとえば、おにぎり屋さんなら、お米とのりを1個ぶん30円で仕入れる、と決めます。お金はおもちゃのお金でも、家の中だけで使う紙のお金でもかまいません。材料にお金がかかることを、体で知るのが目的です。
3. 値段を決める:いくらなら買ってもらえる?
材料が30円なら、いくらで売れば、お金が残るでしょうか。50円なら20円残る。100円なら70円残るけれど、高くて買ってもらえないかもしれない。
親は答えを言わず、「お父さんなら、いくらなら買うと思う?」と聞いてみてください。お客さんの気持ちを想像して値段を決めることが、作戦の第一歩です。
4. 売る:お客さんに「うれしいこと」を伝える
いよいよ開店です。家族がお客さんになって、お店に来ます。
このとき、「いらっしゃいませ」のあとに、ひとこと足すように伝えます。「おなかがすいた人に、できたてのおにぎりです」。だれに、何がうれしいのかを伝えると、お店らしさがぐっと増します。
5. ふり返る:いくら売れて、いくら残った?
お店を閉めたら、売り上げを数えます。何個売れたか。材料のお金を引くと、いくら残ったか。ノートに書いて、一緒に計算します。
そして、「次はどうする?」と聞きます。値段を変える、品物をふやす、かんばんを目立たせる。次の作戦を考える時間が、ビジネスごっこでいちばん大切な時間です。
ごっこから「本物」へ広げるとき
家族相手に何回かくり返したら、本物のお客さんに売ってみる段階です。手づくりのカードやしおりを、親せきやご近所に売ってみる。地域のフリーマーケットに出してみる。そんな小さな一歩で十分です。
本物の売り上げは、ごっこ遊びの何倍も子どもの心に残ります。「自分のつくった物に、だれかがお金を払ってくれた」。この経験が、稼ぐ力の土台になります。
世界には、子どもが働いて給料をもらう「まち」があります
メキシコから世界へ:キッザニア
1999年、メキシコの首都メキシコシティに、子どものための小さな「まち」が生まれました。キッザニアです。
まちの中には、パン屋さんや消防署、銀行など、大人の仕事がならんでいます。子どもはそこで仕事を体験し、「キッゾ」という、まちだけで使えるお金をお給料として受け取ります。かせいだキッゾは、別のお店で使ったり、銀行にあずけたりできます。
今では世界の約30か所に広がり、1年に900万人をこえる人がおとずれるとされています。日本でも、2006年に東京にオープンしました。
キッザニアから学べること
キッザニアのしくみは、「働く、お金をもらう、使うかためるかを決める」の流れになっています。
家のビジネスごっこは、ここに「自分でお店をつくる」がくわわります。何を売るか、いくらにするかを自分で決める。だからこそ、社長の練習になります。
ビジネスごっこで、親が守りたいこと
1. 決めるのは子ども、親は質問する人:答えを先に言わず、「どうしてそう思う?」と聞きます
2. 本物のお金は家族の中から:外の人に売るときは、親がそばにいて、お金のやりとりを見守ります
3. SNSで紹介するなら親のアカウントで:多くのSNSは13歳以上でないとアカウントを作れません。顔・名前・学校・住所は出さず、写真は品物と手元だけにします
4. 食べ物は家族の中だけに:手づくりの食べ物を外の人に売るには、保健所の許可などが必要になることがあります。外に売るのは、カードや工作など食べ物以外の物にしましょう
マーケターとして伝えたいこと
私はふだん、コピーライター・マーケターとして、お店や会社の「売り方」や「伝え方」をお手伝いしています。
大人のお店でも、うまくいくお店は「売ったあと」を大切にしています。なぜ売れたのか、なぜ売れなかったのか。この問いを持てる人は、どんな仕事でも伸びていきます。ビジネスごっこのふり返りは、その最初の練習です。
親御さんが気になりやすい3つの疑問
何歳から楽しめますか?
お店屋さんごっこができる年なら始められます。低学年はお店づくりと売ること、高学年は材料のお金や、残ったお金の計算まで任せると、ちょうどよい難しさです。
本物のお金を使ったほうがいいですか?
最初は、おもちゃのお金や紙のお金で十分です。慣れてきたら、小さな金額の本物のお金を使うと、子どもの真剣さが変わります。
親がいそがしくて、時間がとれません
週末の30分で十分です。1回のごっこで1つだけ「次の作戦」を決めておけば、次の回が楽しみになります。
まとめ
ビジネスごっことは、お店屋さんごっこに、値段を決める、売る、ふり返るをくわえた、家でできるお店の練習です。親子で進めるステップは、お店を決める、材料のお金を知る、値段を決める、売る、ふり返る、の5つです。
世界では、子どもが働いてお給料をもらう「まち」が、30か所ほどに広がっています。家のリビングも、今日から小さなまちのお店になります。
「だれに、何がうれしいのか」を伝える力は、大人の仕事でもいちばん大切な力です。


